【F1】激動の2017年F1。各チームのキーパーソンは誰だ?
激動のシーズンになるであろう2017年のF1。各チームの運命を左右するキーパーソンを、motorsport.comのグローバル編集長が選定する。
写真:: Red Bull Content Pool
2017年シーズンのF1が始まった。2月のバルセロナでのシーズン前テストで走行が行われるまでは、真のスタートではないと考えている人もいるかもしれない。しかし、成功したシーズンを送るためにはそれまでの数カ月にわたって築かれた基礎が必要不可欠だ。もうすでに戦いは始まっている。
グリッドにマシンを並べられるかどうかわからないマノーを除けば、今シーズンのシートはすべて埋まり、やっと役者が揃ったと言える。
そこで、レギュレーションが大きく変わり複雑な状況となるであろう2017年シーズンを戦う上で、それぞれのチームで鍵となるピースは何なのかを検討した。
まずは、3年連続でドライバーとコンストラクターズのダブルタイトルを獲得したものの、チャンピオンとなったニコ・ロズベルグが引退し、テクニカルチーフのパディ・ロウが離脱したメルセデスから見てみよう。
メルセデス:バルテリ・ボッタス
状況から考えて、3度の世界チャンピオンのルイス・ハミルトンのチームメイトになるという夢を掴むのはバルテリ・ボッタス以外にありえなかったが、彼の起用がようやく正式発表された。
ロズベルグが抜けた穴を埋めるのは大変だろうが、プラスなのはボッタスが新人ではないということだ。彼はウイリアムズでの4シーズンで多くのポイントを獲得し、3度のフロントロウスタート、2度の2位フィニッシュを果たすなどの実績がある。
彼は27歳であり、彼のキャリアはピークに差し掛かっているだろう。彼はすでに、一時的にではあるものの、3レースでトップを走った経験がある。
1993年、ミカ・ハッキネンがマクラーレンでアイルトン・セナのチームメイトになった時のことが思い出される。ボッタスは、ハッキネンが(実戦復帰初戦でセナを上回った)エストリルの予選でやったように、早い段階でルイスに対して自身の力を示さなければならない。
もちろんセナはハッキネンから刺激を受けたことで、鈴鹿とアデレードで天才的な優勝を果たした。そしてそれが、メルセデスが望んでいることでもある。誰かがルイスを脅かさなければならず、コースの外では彼が安心できるようなドライバーが必要なのだ。
2017年にマシンが新しくなっても、メルセデスが過去3シーズンのようなパフォーマンスを維持していれば、ボッタスはチャンピオンシップを戦うチャンスがあるだろう。
一言:ボッタスは、ハミルトンと張り合えるように頑張らなければならない。
レッドブル:エイドリアン・ニューウェイ
ダニエル・リカルドはメディアが選出したドライバートップ10に入っており、マックス・フェルスタッペンはまだ若いにもかかわらず、驚愕の才能を見せつけた。レッドブルのドライバーが才能を証明する必要はほとんど無い。
その代わり、チームに本当にいなくてはならないのは、何度もその才能を証明してきた空力の天才的な技術者、エイドリアン・ニューウェイだ。
ルノー製のパワーユニットは、効果的なアップデートにより現在は妥当な性能に落ち着いているため、メルセデスを脅かすタイトル争いの候補になれるかどうかは、ニューウェイの頭脳にかかっている。
2009年に空力に関するレギュレーションがリセットされた際に、トヨタやブラウンGP、ウイリアムズがルールの抜け道を利用して搭載したダブルディフューザーを、彼が”見逃した”のは確か(ニューウェイはこれを違法だと考えていた)だが、彼が今回、他を圧倒するような新しい世代のシャーシを作りたくてうずうずしているのは確かだろう。
一言:ニューウェイはまだ隠居していない。彼のマシンを見るのが楽しみだ。
フェラーリ:空力開発部門
フェラーリの会長であるセルジオ・マルキオンネは、デイトナで行われたフェラーリのイベント、フェラーリ・ワールド・ファイナルの際にフェラーリの空力開発には”大きな穴が空いている”と評した。
彼は昨シーズンの中盤にチームに対して、作業の進め方について徹底的な見直しを命じた。特にマルキオンネが見直すべきだと考えているのは、空力開発部門のようだ。
実際に、シーズン終盤のフェラーリのパフォーマンスは大幅に改善されたように見えたが、反対に2017年マシンへの取り組みにどれだけ遅れが生じただろうか?
マルキオンネはフェラーリが流れを変えるために、離脱したテクニカルディレクターのジェームス・アリソンの後任に大物を招く必要はないと断固主張している(一方でメルセデスは最近の成功の一因として、元フェラーリのテクニカルディレクター、アルド・コスタを賞賛している)。
フェラーリを離れたアリソンがメルセデスに加入することになったとしても、フェラーリに残った人々が力を合わせて、開発を正しく機能させることを祈っている。そうでなければ、大変なことになるだろう……
一言:プレッシャーはかかっている。それがいつフェラーリの役に立つだろうか?
フォースインディア:エステバン・オコン
2016年、フォースインディアが驚異的に躍進したのは間違いのないことだ。マシンのポテンシャルを最大限に発揮し、ウイリアムズを一騎打ちで打ち負かした。トップ5チームとしての確固たる地位を確立したフォースインディアは、高評価のオコンが移籍するには素晴らしい環境だ。
マノーでの9レースは、彼を正確に評価するためのサンプルにはならないだろうが、パフォーマンスは光るものがあった。そして彼は、プレシーズンテストまで残された時間がほとんどない現代F1で、それをカバーすることができる、まともなデータバンクを有するチームに移籍することができた。
下位チームから上位に近しいチームへ活動の場を移した彼がどのように飛躍していくかを見ていくのはかなり楽しみだ。そしてチームメイトのセルジオ・ペレスは、トップチームで戦うのにふさわしいドライバーであることを証明するために、オコンを完全に負かそうとしてくるだろう。
一言:もしオコンがペレスを負かすことができれば、輝かしい将来が開けるかもしれない。
ウイリアムズ:パディ・ロウ
ロズベルグのF1引退発表がなければ、パディ・ロウのウイリアムズ移籍がメルセデスにとって最も大きなトピックになっただろう。彼は技術者と開発者の観点からメルセデスを導いていた。今年はメルセデスのピットウォールからではなく、ウイリアムズで活躍することになるだろう。
ロウは約20年前ウイリアムズに加入し、アクティブ・サスペンションプログラムを完成させた天才と謳われていた。その後彼はマクラーレンに移籍し、今年1月までメルセデスでエグゼクティブディレクターを務めた。今回の移籍は彼にとって古巣に帰るようなものだ。
現在のところ、ウイリアムズでのロウの正確な役割は不明であるが、メルセデスでの経験を生かせば、ウイリアムズにとって大きな利益となることだろう。一方で、彼が機能することができる正しい役職を定義することは、とても興味深い。
私はチームの命運がここからどのように変わっていくのかによって、ロウの本当の実力がわかると考えている。
一言:ウイリアムズにとってロウの加入は大きな変化だが、ロウにとってはマッサ/ストロールのペアとハミルトン/ロズベルグのペアでは訳が違う。
マクラーレン:ホンダ
このパートナーシップが締結されて早3年目であるが、少しずつ時間をかけて開発していくというホンダのやり方は終わりを迎えるだろう。2015年マクラーレンがホンダのパワーユニットに切り替えた時には、F1がハイブリッドV6ターボに切り替わってちょうど1年経っていた。それから2年間、ホンダは約1年間のブランクを抱え続けてきたのだ。しかし新たなレギュレーションに変更されることで、それにも終止符を打つことができる。
トークンシステムが廃止されることで、これまでホンダが採用してきたパワーユニットのコンセプトである”サイズゼロ”を破棄し、レイアウトの大規模な変更を行うことが可能になる。
我々は皆、このパートナーシップが可能性を秘めていると信じている。それは過去に証明されてきた。しかし、その過去でもマクラーレンとホンダのどちらか一つだけでは、チームを成立することができず、誰にも勝つことができなかった。マクラーレンとホンダは結束する必要のある宿命にあり、今となってはもはや言い訳のできる段階ではなくなっている。
もしマクラーレンが今季の順位を大きく上げることができなかったら、我々は責任のなすり合いを目にするだろう。
一言:マクラーレンが新時代を迎える時は、ホンダも足並みを揃えていなければいけない。
トロロッソ:カルロス・サインツjr.
サインツがF1トップ10ドライバー番付の中でも高く評価されていることを考えると、ここでわざわざ名前を挙げるのも不思議な話だ。
マックス・フェルスタッペンがサインツを差し置いてレッドブルに昇格したが、その後のサインツが奮闘する姿が印象的だった。彼は常に志を高く保っていた。
昨シーズン末にはハースとルノーからのオファーがあり、レッドブルを離れるという選択肢が浮上していたが、今となってはトップチームに加入するという彼の挑戦が世間の注目を集めていると思える。
トロロッソはパワー不足と考えられていたフェラーリの2015年型パワーユニットから、2017年よりルノーの最新式パワーユニットに変わる。それは今年いっぱいでトロロッソを卒業したいと考えるサインツにとって、どのような影響を及ぼすのだろうか。
一言:彼が3度のトップ6フィニッシュを果たした今年のような成績を残せるかどうかは、難しい質問だ。
ハース:ケビン・マグヌッセン
かつて同じF1ドライバーだった彼の父のように、マグヌッセンは素晴らしい才能を持っている。彼は驚くべき能力とまるでバイキングのような貪欲さを持ち合わせている。そんな彼が、スパでの大クラッシュを起こしたとしても、失望するような人はそう多くはなかった。
その一方で、彼の父と同じように、時に彼自身が最悪の敵になるのではないかと考えてしまう。普段彼はそのことを気にしないようにしているようだが、たまに自分自身と奮闘しているように見受けられる。
彼がハースに移籍したのは論理的であると言えるだろう。ハースには大きな可能性がある。特に情熱的な男、ロマン・グロージャンとどのような関係になるのかが気になるところだ。
おそらく彼の運命はどちらにでも転ぶことになるだろう……
一言:このチームが彼のキャリアの正念場になる。
ルノー:ニコ・ヒュルケンベルグ
トロロッソのサインツjr.に似通っている部分もあるが、もしヒュルケンベルグがフォースインディアに留まり続けていたら、彼はつまらないドライバーになってしまっていたかもしれない。彼はいくつか印象的なドライブを見せている。しかし、これまでの2年間は、フォースインディアで同僚だったセルジオ・ペレスが注目されていたため、彼の功績は影に隠れ、目立たないものになっていた。
彼はファクトリーチームでドライブすることを望んでいた。ルノーはマクラーレン・ホンダのようにF1のトップチームを目指せるだけの資金がある。しかし、ルノーの現状は過去の栄光の日々からあまりにもほど遠い。
しかもシーズンが始める前から、彼の才能を最も買っていたチーム代表のフレデリック・バスールがチームを離脱してしまった。それは全く想像できなかったシナリオであることには間違いないだろう。
一言:ルノーは賢明な選択をした。しかし、バスールの離脱は彼にとって大きな不安要素だ。
ザウバー:パスカル・ウェーレイン
F1界を震撼させたロズベルグの引退発表の後、この若いドライバーが経験したありとあらゆる感情は想像を絶するものだろう。突然転がり込んできた、世界トップのチームに移籍できるかもしれないというチャンスに胸を踊らせたが、状況が一転し結局1年間ザウバーと契約することになった。そうなれば、心の底から完全に納得することは難しいだろう。
そのほかにも、自分より(F1チームでの)経験の浅いエステバン・オコンがフォースインディアに加入したという出来事は、彼の心をえぐったに違いない。
一方プラス要因として、我々は昨年マノーで過ごした彼を見てきた上で、彼がF1で十分に戦っていくことができ、大きな可能性を秘めていると期待している。しかし強力なライバルを打ち破るためには、急所に大打撃を与えなければならない。そのために何度もトライし続けることが、彼が勝つことができる唯一の手だ。
一言:自分の運命は自分で切り拓くしかない。頑張れウェーレイン!
マノー:新たな投資家
新たな投資家以外に何があるだろうか。昨年は特にうまくいっていたので、マノーが再び財政難に陥っているニュースをとても残念に思う。マノーには良い人材が多く働いているが、それらを失うことになれば、本当に勿体ないことになるだろう。
一言:刻一刻を争う事態。彼らには救世主が必要だ。
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