F1とル・マン24時間、両立の”苦労”。1992年に経験した片山右京に訊く
トヨタTS050をテストするなど、来季F1に参戦しながらル・マンへの出走も視野に入れているとみられるアロンソ。その苦労を片山右京に訊く。
トヨタTS010(片山右京)と日産R90CK(久保田克昭)
吉田知弘
11月18日(土)〜19日(日)にかけて行われた、「RICHARD MILLE SUZUKA Sound of ENGINE」。昨年に続き片山右京が登場し、今年はトヨタTS010を走らせた。
昨年のサウンド・オブ・エンジンでは自身のF1デビューマシンであるヴェンチュリLC92に乗る予定だった片山だが、ランボルギーニV12エンジンの不調により走行することは叶わなかった。片山曰く「2mmくらいしか(アクセルを)踏んでない」というが、前年の鬱憤を晴らすかのように、TS010の軽快なエンジン音を響かせ迫力ある走りを披露した。
19日の午後に行われたデモレースで片山とTS010は、久保田克昭が乗る日産R90CKとデッドヒートを披露。最終的にはエンジンが燃料を吸わないトラブルに見舞われ、2周を残してピットに戻ることになった。この結果に、片山は非常に悔しがったという。
このTS010は、片山が1992年のル・マン24時間レースで走らせたマシン。その印象を訊くと、片山は次のように答えた。
「このクルマは、僕とトヨタさんの関係が始まった最初と言ってもいいクルマです。そして今走っているTS050(HYBRID)とかいっぱいあるけど、その最初、スタート地点と言っても良いクルマですからね」
「ル・マンで優勝争いをした、アンドレ・デ・コルタンツがデザインしたTS020もすごかったけど、このトニー・サウスゲートさんのウイングカーっていうのも、すごいですよね。こんなに時代が経っても、クルマよりも先にドライバーがタレますもん」
当時の片山はF1デビューイヤーを過ごしていた。そしてカナダGPの翌週末に開催されたル・マン24時間にも出場することになった。
F1を戦いながらル・マン24時間にも挑戦する。まさに今、フェルナンド・アロンソもそれを目指していると伝えられているが、そこにはどんな苦労があるのだろうか?
「フェルナンドも、色々なレースに出たいという時期に入っているんだと思うし、それは良いことだと思う。枠を超えて、そのチャンスを与えるトヨタさんも懐が深いと思うし。すごく注目を浴びるから、みんなハッピーになれれば良いですよね」
アロンソがトヨタTS050HYBRIDをテストしたことに対して、片山はそう語った。
「でも、(ル・マンとF1を)両方乗るのはすごく大変でした」
「当時(1992年)のエンジンは、どちらも自然吸気(NA)エンジンでした。同じようなエンジンでも、100mのスプリント(=F1)とマラソン(=ル・マン24時間)をやるようなモノですから」
「だからル・マンでF1的な走り方を絶対にしちゃいけないんです。でも当時を反省してみると、僕はちょっとしちゃっていた。身体に(F1のドライビングスタイルが)染み込んじゃっているから」
「分かりにくい言い方かもしれないけど、マシンに溶けてね、身体と一体になって、手足にして、タイヤもギヤボックスもブレーキも、すべてのことを庇って気を遣って、その中で速く走らなきゃいけない。それがル・マンの特殊さなんです。F1は逆に突き抜けなきゃいけない。ル・マンとF1は、特殊な二極化した走り方が要求されるんです」
「当時は経験値もなかったから、そういう考えも足りなかったと思うし、今コクピットに乗るとそれを思い出します」
アロンソにその対応ができると思うかどうか尋ねると、片山は次のように語った。
「今はF1がパワーユニットになって、デプロイメントとかに気を遣わなきゃいけないところもあるから、ル・マンの走り方に似ているところはたくさんあると思います」
「アロンソなら、全然問題なく両方できると思う。ちょっと前だったらできなかったかもしれないけど、彼はたった1回の人生で、F1のモナコに加えインディ500とかル・マンとかに勝つことを夢みているわけだからね。そのためには抑えるところは抑えるだろうし、そういう年齢にはなってるはず。だから全然問題ないでしょう」
「ちょっと心配なのは、パフォーマンスが悪くて結果が出ない時に、クルマのせいにすることがある……そういうところですかね」
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