F1は生き残れるか? マレーシアGP開催中止に見るF1グランプリの限界
今年限りでF1グランプリ開催終了を決断したマレーシア。その理由は何なのか? そして今回の件で、F1の”限界”を考察する。
写真:: Sutton Images
マレーシアがF1グランプリの将来に疑問を投げかけている。
マレーシアGPは今年で19年目。長い歴史を誇ってきたが、主催者は今年限りでF1グランプリの開催を中止すると発表した。19年前に始まった時から政府主導で開催支援が行われ、アジアでは日本に次いで長い歴史を誇った。現在もマレーシア政府が開催を支援、開催資金の多くは国営企業のペトロナス石油から出ている。つまり、国家事業といっても過言ではない。
国家事業は(無駄な支出を繰り返す我が国を見ればわかるが)プライベート企業に比べて採算に関して鷹揚だと見られがちだが、少なくともマレーシアはそうではなかった。マレーシア政府は、現在のF1グランプリが同国の経済にとって有益であると判断を下すことが出来なかった。マレーシアはここ数年経済が停滞、国家予算も大幅な緊縮を強いられている。収益の上げられない事業は次々と整理されており、F1グランプリもそのひとつに数えられたということだ。
F1グランプリが無駄な事業と判断されたかと言えば、単純にそう決めつけられたわけではない。主催者のひとつであるセパン国際サーキットのCEOラズラン・ラザリは慎重な分析の結果、マレーシアGPの継続を断念したという。
「ここ数年の急激な観客動員数の減少がグランプリ中止の直接原因です。今年は最終年ということもあり3日間で10万人を越える観客が入ったが、ここ数年は下降の一途を辿っていた。昨年は僅か4万7000人。2013年には8万8000人以上入ったが、2014年に1.6リッター・ターボ・ハイブリッドになって観客が激減した。音のせいかもしれない」
観客動員数が減少すれば、当然収益は減速する。
「シンガポールは世界中から観客が集まっている。我々のところはチケット料金を82%も割り引いたのに、観客の出だしは悪かった。今月末に行われるMotoGPのチケットはとっくに完売しているのだが……」
エンジンの形式が変わって音が静かになっただけで観客が減少する率は非常に少ないと考えられる。では、他に何が問題なのだろう? 経済が停滞して収入が減ると観客も減るが、チケットを82%も割り引いて観客を集めても、根本的な問題の解決にはならない。では、根本的な問題とは何か? ラザリは地元紙のインタビューに次のように答えている。
「これまでF1グランプリを開催する為にはバーニー・エクレストンに多額の開催料を支払わなければならなかった。しかし、その金額に見合ったショーを見せてくれたかといえば、私はそうは思わない。我々サーキットはどうやって観客を惹き付けるか考えるが、一番は素晴らしいショーを見せてあげることだ。しかし、今のF1はそれが出来ていない。私はテレビの前に座って最初から最後まで今のF1を見ていられるかといえば、その自信はない」
では、エクレストンから興行権を引き継いだリバティメディアに期待出来るだろうか? ラザリは、「何も変わっていない」という。開催料に関しても、それほど下がっていない。「リバティはそれほど一生懸命仕事をしているとは思わない。彼らが提示してきた金額は我々の気持ちを変えることが出来なかった」と言う。
しかし、マレーシアとてF1グランプリ開催の価値は十分に理解している。開催国の仲間に名を連ねることは、それだけ国力があることを他国に示すことだ。それは、まずもって経済力である。マレーシアGPの決勝当日に急遽行われた首相会見でも、そのことが語られた。会見でダタク・セリ・ナジブ・トゥン・ラザク首相は、「ここ数年の経済の先細りがF1グランプリ開催を見直し、中止を決定した理由だ。しかし、この決定は将来F1開催に関して再考する余地がないということではない。経済が再び活況を呈してきた時期に再考する可能性は十分にある」と語った。
「F1グランプリを開催したことで、マレーシアのイメージは上がり、ペトロナスのようなグローバル企業の存在とビジネスのやり方が世界の見本になったはずだ」
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