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インタビュー

【マクラーレン】ザク・ブラウン「勝てないと考えるメンバーはいない」

マクラーレンのエクゼクティブ・ディレクターであるザク・ブラウンに、F1新オーナー、アロンソのインディ挑戦、そしてホンダについて訊いた。

Fernando Alonso, Zak Brown press conference

写真:: Michael L. Levitt / Motorsport Images

 2017年、F1はバーニー・エクレストンの手から新しいオーナー、リバティ・メディアの手に渡った。この移行に伴ってF1はより開かれたスポーツへと変身する気配を見せ始めた。時期を同じくして新しくマクラーレンのエクゼクティブ・ディレクターに就任した ザク・ブラウン。ブラウンはアメリカ出身のマーケティング・グル。このF1の変化に敏感に反応して、マクラーレンをよりオープンなF1チームにすべく指揮を執り始めた。フェルナンド・アロンソのインディ500挑戦はその端緒だ。ココで成功すれば、マクラーレンは、そしてF1は大きく変わることになるだろう。

リバティはF1にとって最高の買い手だ 

Sean Bratches, Managing Director, Commercial Operations; Chase Carey, Chairman and CEO of Formula 1; Ross Brawn, Managing Director, Motor Sports

Photo by: Liberty Media

 ーーF1が大きく変わろうとしている。長い間F1を導いてきたバーニー・エクレストンが去り、リバティ・メディアが引き継いだ。彼らはF1をこれまでの閉じ込められた世界から世間に開こうとしている。F1は変わりますか?

「リバティ・メディアはF1の最高の買い手だと思う。彼らはメディアを知り、スポーツを知り、十分な投資が出来る体力がある。それも、短期間で物事を片付けようとしておらず、10年あるいはそれ以上の時間をかけて基盤を固めてビジネスをしようと考えている。このF1プロジェクトを率いるチェイス・キャリー、ショーン・ブラッチーズ、ロス・ブラウンの3人は完璧なコンビネーションだ。彼らのリーダーシップはF1を良い方向に導いてくれると思う。12カ月前、CVCがF1を売却しようとした時には誰がF1を買収するのかも分からなかった。F1株の移行がどうなるのかもね。12カ月前はリバティ・メディアのことは誰も何も知らず混乱のまっただ中だった。それが今はどうだ。移行が加速して今や誰もがリバティのことは知っており、F1の所有権の移行がスムーズに完了したことも非常に前向きな要素になった。リバティが見事な仕事をしたということで、チェイスを中心にしたチームが素晴らしいコミュニケーション能力を発揮して上手くいった。F1はこれまでと一転して素晴らしい未来を獲得したということだ」

ーーたった12カ月で移行が完了した。短い期間の偉業に驚いている。

「リバティはどうやれば良いかをよく分かっていたんだろうね。リバティのCEOジョン・マローンがそういう点には長けていて、チェイスがその中心で上手く動いたことが実現を加速した」

ーーチェイス・キャリーはリバティの人間ではない。雇われてF1のCEOになった。

「そう、その通り。しかし彼はディレクTVのCEOとしてリバティと仕事をしていたから彼らは旧知の仲だし、ディレクTVをAT&Tに売却したのも彼。とにかくリバティに対して多くのビジネスを展開してきた。だから、私は彼らが短期間でF1を買収したことに対して驚きはしなかった。私は彼らを以前からよく知っており、彼らの力でF1がより良い方向へ進むと信じている。まず大切にしないといけないのはファンで、F1をファンが満足するスポーツに育てなければいけない。ファンが増えるとスポンサーは喜び、チームはより多くのスポンサーを獲得出来る。理想的な循環だ」

Hot grid girls

Photo by: XPB Images

 ーーリバティ・メディアもあなたもアメリカ出身だ。そのアメリカでF1は主役になり切れていない。これを機会に変化は起こりそうか?

「確かにアメリカではF1はそれほど多くのファンを掴んではいないが、フォローしている人達の気持ちは非常に熱いものがある。今、ふたつ目のアメリカGP開催を視野に、マーケティング、プロモーションを展開している。それらは新しいテリトリーとして、世界一金持ちの北米には大きなチャンスが転がっている。問題はアメリカにはスポーツが多すぎることで、それらの中でF1をブレークスルーしてインパクトを与えるには今のように年1回ではなくて、もっと開催回数を増やさなければいけない。F1は素晴らしいレースだが、それを知らしめるには1回では駄目だ」

 ブラウンはF1のアメリカナイズが成功を収めるだろうと宣言するが、この意見がアメリカもF1も熟知している人間から発せられたことに意味がある。確かにエクレストンのF1は閉鎖的だった。しかし、閉鎖的だったからこそ現在のF1のステータスが出来上がったとも言える。そのステータスを保ったまま、F1は新しい道を歩み出す必要がある。

モータースポーツ活動は、”ビジネス的”な決断

 さて、ここからはブラウンのチーム、マクラーレンに話を移そう。F1全体を変えるには、まず足元から変えなければならないことを彼は知っており、これまで暗黙の了解のようにタブー視されてきたベールの中身に手を付けていかなければならない。まず、アロンソをインディ500に送り込むことで、その端緒を開いた。

Fernando Alonso, Andretti Autosport Honda

Photo by: Michael L. Levitt LAT Photo USA

 ーーアロンソのインディでのテスト走行中継の視聴者数が200万人を超えました。

「信じられなかった。しかし彼は世界で最も有名なレースドライバーの一人だからね。テストの報道のされ方についてはとても嬉しいし、ファンの反応は、インディカーだけでなくNASCARやF1を含めたモータースポーツにとって、新しく革新的な方法でファンとの交流を深めるための余地がまだあることを示してくれた」

「個人的にはソーシャルメディアの力を見せつけられた。モータースポーツ、特にF1においてはその規模が大きいこともあり、今回の件はデジタルとソーシャルメディアを通してファンとどのように関わることができるかを示してくれた。そこから多くのことを学ぶことができたと思う。テストに対するフォローの規模には驚いたけれど、アロンソがインディ挑戦を終えて再びマクラーレンに復帰することも、世界規模で大きなニュースとなるはずだ。それにしてもウイークデーの水曜日の昼間に200万のフォロー……おそらくみんな病気で仕事に行けなかったのだろうね」

ーーあなたは同じ週末に行われるインディとモナコ、どちらに行きますか?

「どちらにも行く。土曜日にモナコでF1の予選を見た後、夜10時半のフライトでアメリカに出発する。アメリカにはレース当日の午前2時に着く。犠牲になるのは僕の睡眠時間だけだ」

ーーもしアロンソがインディで勝てば、アメリカでのF1人気に火が付く?

「レースではどんなことも起こりうるが、結果に関係なくマクラーレンとフェルナンドがインディアナポリスに行くのは、F1界にとっては良いことだ。なぜなら、誰もが北米最大のレースにおいて、F1チームとF1世界チャンピオンの走りを見ることを望んでいるからだ。だから、既に北米のF1市場にとって多くを成し遂げたと思うし、これを継続していきたい。レースで良い結果を出せればメディアの露出も更に増えるだろう。フェルナンドとマクラーレンがインディアナポリスに行くことで、全員が勝者になると思う」

Vintage racers: What a front row: 1983 PC-11, 1974 McLaren, 1981 Penske PC-9

Photo by: Kenneth Plotkin

 ーーマクラーレンは将来、F1以外、例えばインディの常連になるという可能性はあるのか?

「マクラーレンはモータースポーツの様々な分野で多くの歴史を刻んできた。その中でF1は最優先であると思うし、引き上げたりするようなことは無い。加えて、F1やNASCAR、インディには自社で開発したエレクトロニクス製品を提供しているし、フォーミュラEでもマクラーレン製のバッテリーを使っている。そして、かつてはル・マンでも勝利し、カンナムでも勝った。それに今回のインディ500挑戦だ。こうした活動は、以下の3つの基準で進めていく」

「ひとつは我々に競争力があるか? 次に、それは商業的に実行可能か? 三つ目は我々のブランドにフィットするか?」

「もちろん、我々が明確に関わらないモータースポーツの種目もある。だから、上記3つのチェックボックスを埋めるものであれば進めていくだろう。そして4つめの項目として、最優先の目標であるF1世界選手権を凌ぐ魅力のあるものがあれば、楽しんで実行するだろう」

ーー具体的に視野に入っているものは?

「インディ500はご存じのように既に活動を始めている。たまたま今年の環境がそうさせたんだが、どのようになるか、まずはインディ500の結果を見てみたいね。継続していくのは間違いない。フォーミュラEへの関与も続けたい。必ずしもレース・チームとして参戦する必要はない。我々のモータースポーツの捉え方として、独自のチームとドライバーでの参戦もできるけれど、技術パートナーとして他種目に関わることもできるからだ」 

#44 Team Lark McLaren McLaren F1 GTR BMW: Keiichi Tsuchiya, Gary Ayles, Akihiko Nakaya

Photo by: Patrick Martinoli

 ーール・マンについては?

「ル・マンとWECは素晴らしいカテゴリーだ。歴史もあり、突き詰めるとGTレーシングを管轄する自動車部門(マクラーレン・オートモティブ)の権限になるのだが、個人的にはル・マンのファンだ」

ーーレースよりビジネス的な決断になる?

「F1も含め、我々のモータースポーツ活動はビジネス的な決断によるものだ。全ての活動はビジネス的判断であるし、競争的かつ商業的で、さらにブランド価値に合うものであるということだ。ドラッグレースはリスペクトするけれど、我々の姿を見ることはないだろう。そこにはビジネス的な見地を見いだすことができない。残念だが」

ホンダとの提携については”満足”している

 ここから先はF1に関して話を聞く。F1が上手くいかないからフェルナンド・アロンソはインディ500へ逃げたような印象もあるが、実際にはどうだろう? 

Honda logo and nose detail of a McLaren MCL32

Photo by: LAT Images

ーーF1におけるホンダ・エンジンの信頼性は悪化しているように見える。マクラーレンもいささかお手上げ状態のように見えるが、ホンダ・エンジンに改善の兆しは見られるだろうか?

「信頼性についてはそもそもそれ程の信頼性があるわけではなかったので、悪化しているかどうかは分からない」

ーーホンダはエンジンの技術改善のためにメルセデスと話をしているというが、どういうことだろう?

「ホンダが自らの活動にコメントするのは自由だが、ホンダはマシンに更なるパワーと信頼性をもたらすようアプローチを続けることが重要だ。そして彼らが状況の改善に全力で当たっていると信じている」

ーーアロンソの将来について聞きたい。彼に対して勝つチャンスのあるチームからのオファーに関しては?

Fernando Alonso, Andretti Autosport Honda

Photo by: Michael L. Levitt LAT Photo USA

「分からない。記者会見の映像を見たが、彼の状況は十分に理解できる。彼は2度の世界チャンピオンで、さらに3度目を狙っている。そして、それは勝つことのできるクルマでのみ成し遂げられることだからだ」

「彼も言っていたように、彼はマクラーレンに残りたいと望んでいるし、我々も素晴らしい環境を与えてきた。彼はこのチームで満喫してくれていたし、あとは勝てるクルマを我々が用意するだけだ」

「我々は多くの優勝マシンを生産してきた。しかし、今シーズン他のエンジン・マニュファクチャーが多くの進歩を見せていることを考えると、我々の状況が好転するのがいつになるかを知るのは難しい。アロンソは来年以降のことを考えているようだが、我々が合意している通り夏休み明けまで待ってくれると思う。今、我々にできることは開発に集中して、来年には勝つことのできるポジションにいることを、彼が決断する前までに示すことだと思う」

ーーアロンソの将来について、何かコメントはありますか?

「彼の将来? どんなドライバーでも年末に契約が切れればどんな選択肢もある。我々が勝てる可能性のあるクルマを用意できれば、彼がマクラーレンに残ると言ってくれても驚かないし、嬉しいだろうね。我々が彼に期待できるのはそれだけだ。マクラーレンという環境を気に入ってくれているのは嬉しいよ。今は目の前の作業に集中して、マクラーレン・ホンダで勝つことができるという決断ができるクルマを用意できるよう頑張るだけだ。もう勝つ事ができないと考えているメンバーは一人もいないだろう」

Jenson Button

Photo by: Race of Champions

ーーそのアロンソはモナコを欠場してインディへ行きますが、代わりにジェンソン・バトンが乗ります。

「個人的にはジェンソンはモナコをとても楽しみにしていると思う。彼は先週ファクトリーにいてシミュレーターで時間を過ごしたのだが、我々は彼にオプションを提示した。彼はモナコを知っており、モナコで勝っている。F1を17年経験していて、実際に欠場したのは4レースだけだ。引退して3年経った誰かをカムバックさせるのとは話が異なるし、彼は状況を良く理解しており、彼自身が最高の準備だと感じることを我々はサポートした。彼自身が選択したオプションだ」

ーーもうひとりのドライバー、ストフェル・バンドーンに関して。新人ドライバーの彼をどう見ていますか?

「彼の態度は素晴らしい。厳しいシーズンの始まりだし、グリッドで並ぶ誰よりも厳しい状況だろう。彼は学んで改善するために集中し続けている。素晴らしい考え方で、良い仕事をしている。将来的に世界チャンピオンになれると思う。それがマクラーレン・ホンダで成し遂げられれば嬉しいことだ。まだ新人でこれからの存在だし、アロンソが残ってくれればそこから多くを学べるので、将来も明るくなるだろう。ストフェルには多くを期待している」

Marcus Ericsson, Sauber C36, Fernando Alonso, McLaren MCL32

Photo by: Andrew Hone / LAT Images

ーーホンダは来年ザウバーへのエンジン供給を開始しますが、2チーム供給に期待することはありますか?

「データが多いに越したことは無い。より多くのデータがあれば、より多く学ぶことができる。ザウバーがホンダと提携することは良いことだ。ホンダは利益を得られるだろうし、我々もそこから利益を得られるはずだ」

ーードライバー・プログラムのザウバーとの提携については?

「まだ話はしていないけれど、同じパワーユニットを共有する2チームとして協業していくのは、双方にメリットがあるだろうね。色々な方法があるだろうし、それはドライバープログラムに限らず、技術開発、スポンサー開拓など多岐に渡る。まだ話はしていないけれど、パワーユニットでは間違いなくパートナーになるのだから近い関係を築けると良いことだ」

ーーザウバーはさておき、マクラーレンとホンダの提携は価値あるという意見には賛成ですか?

「まだ成績はついてきていないが、マクラーレンの誰もがこの提携に満足はしている。この意見に反対はない」

 最後は楽観的な意見も聞かれたが、インタビュー時の言葉の端はしには緊張も感じられた。いずれにせよホンダのPUにマクラーレン・ホンダのこれからがかかっているわけで、マクラーレンもホンダもそれほど楽観的に構えているわけではない。アロンソの決断の前にホンダに変化の兆候があるのかどうか。鍵は夏休みまでだ。

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