FIA、ドライバーの政治的なメッセージ無許可発信を禁止に。近年はハミルトンやベッテルがTシャツでメッセージ

FIAは、F1レベルを含むすべてのドライバーに対し、中立的でない「政治的、宗教的、個人的」な発言やコメントを事前の許可なく行なうことを禁止する。

Lewis Hamilton, Mercedes-AMG F1, celebrates on the podium with Valtteri Bottas, Mercedes-AMG F1

 FIAは、国際競技規則を更新。2023年からFIAが統括するすべての公認モータースポーツ競技において、事前の許可なく政治的、宗教的、個人的なメッセージを発信することが違反となった。

 新しい第12.2.1.n条では、ドライバーが『国際競技会ではFIA、国内競技会ではASNの書面による事前承認がない限り、その規約の下でFIAが推進する中立性の一般原則に著しく違反する政治、宗教、個人の発言やコメントを一般的に作成、表示した場合、規則違反を犯したとみなされる』ことを明記している。

 この規約変更は、近年個人的な主張を行なうドライバーが注目されるようになったことを受けて行なわれたものだ。

 2020年のトスカーナGPでは、ルイス・ハミルトン(メルセデス)が表彰台で『ブリオナ・テイラーを殺した警官を逮捕しろ』と書かれたTシャツを着て表彰台に上がって波紋を広げた。背中には、テイラーの顔写真と『彼女の名前を言ってみろ』という文字が入っていた。

 テイラーへの銃撃事件は、2020年の3月13日に発生。テイラーはケンタッキー州ルイビルの黒人医療技師で、麻薬捜査中に自宅を無許可で捜索しようとした警察によって自宅で撃たれた。

 彼女のボーイフレンド、ケネス・ウォーカーは警察を侵入者とみなして銃を発砲し、警察も応戦した。テイラーは8発撃たれ、その傷がもとで死亡した。ウォーカーは最近、この件に関して当局と訴訟で和解している。

Lewis Hamilton, Mercedes-AMG F1, and Valtteri Bottas, Mercedes-AMG F1, on the grid

Lewis Hamilton, Mercedes-AMG F1, and Valtteri Bottas, Mercedes-AMG F1, on the grid

Photo by: Mark Sutton / Motorsport Images

 ハミルトンが表彰台でTシャツを着ていたことから、FIAは再発防止のため、同年のロシアGPからイベントノートを修正。ドライバーは表彰台とレース後のインタビューでドライビングスーツを首元まで着用するよう指示され、F1のスポーティングレギュレーションに明記されることになった。

 またセバスチャン・ベッテルも環境問題や政治問題への関心を高めるために、メッセージが書かれたTシャツを着用してきた。

 2021年のハンガリーGPでは、レース前の国歌斉唱時に”Same Love”のTシャツを脱がなかったとして彼は叱責を受けた。

 2021年のカナダGPでは『タールサンドの採掘を止めろ - カナダの気候犯罪』と書かれたTシャツを着用した。この文言は開幕戦のヘルメットにも描かれていたが、レースでは従来のカラーリングに戻したため、F1やチームから圧力があったのではないかと言われている。

Sebastian Vettel, Aston Martin, and Pierre Gasly, AlphaTauri AT02, on the grid

Sebastian Vettel, Aston Martin, and Pierre Gasly, AlphaTauri AT02, on the grid

Photo by: Jerry Andre / Motorsport Images

 FIAの今回の締め付けの理由は不明だが、FIAは過去にも政治的発言をしようとする人々に対して寛容でないことを示したことがある。しかし、そのほとんどは表彰台でのアピールに関するものだった。

 2006年のトルコGPでは、当時トルコ領キプロスの指導者メフメト・アリ・タラトが優勝トロフィーを授与し、トルコでしか認められていない”北キプロス・トルコ共和国大統領”と紹介されたため、トルコGP主催者は500万ドルの罰金を言い渡されることになった。

 スペインのヘレス・サーキットも、1997年のヨーロッパGPで地元市長が予定外に表彰台に登場したため、この年限りでカレンダーから外れている。

 FIAはまた、国際競技規則に、ドライバーは表彰台のプロトコルを厳密に守らなければならないことを追加した。

 その中で、次のようなことがあれば制裁を受ける可能性があるとしている。

『FIAチャンピオンシップにカウントされる競技会の公式セレモニーにおける人物の任命および参加に関するFIAの指示に従わない場合』

 FIAの広報担当者は、国際競技規則の更新は「国際オリンピック委員会(IOC)の倫理規定に明記されている、オリンピック・ムーブメントの普遍的な基本倫理原則としてのスポーツの政治的中立性と、第1条2項で定められた普遍性の原則との整合性を保つものである」と述べている。

 国際競技規則のもうひとつの変更点として、FIAはチームが運営組織から退任した上級代表を雇用することを認めないことを確認した。

 今後、FIA会長とFIA競技担当副会長は、退任後半年間はいかなる競技者のもとでも働くことが許されない。また、いかなる場合においても、そうした人物が任期中に得た情報から利益を得ることはできないとされている。

 
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