F1の新ルールって意味あった? FIA、ベッテルの懸念へのアンサーは「来年はもっと良いレースが生まれるはず」
FIAのシングルシーター・テクニカルディレクターのニコラス・トンバジスは、2022年のF1ルール変更は利益に見合っていないというセバスチャン・ベッテルの指摘を否定している。
2022年限りでF1を引退したセバスチャン・ベッテルは、2022年のレギュレーション変更によるマシンコンセプトの変化によってバトル能力を向上させようという試みは、そのための労力を正当化できるほどではないと主張している。しかしこのベッテルの意見についてFIAは、「来季はもっと良いレースになる」と反論する。
ベッテルは「僕たちはより近くで追従できるようになっているけど、空気抵抗が少なくなっているから、オーバーテイクするためにはもっと近くにいなければならない」と、2022年シーズンからの新しいマシンについて説明。そして次のように続ける。
「タイヤに関しても、よりバトルができるようにという大きな目標があったけど、これも大きな違いがあったとは言えないと思う」
「失敗したとは言いたくない。でも、間違いなく多くの努力がなされたが、その努力がすべて報われたわけではない、そう言っておこう」
しかし2022年のレギュレーション策定プロセスに携わったFIAシングルシーター・テクニカルディレクターであるニコラス・トンバジスは、終わったばかりのシーズンを分析した結果、クルマ同士がいかにうまくレースできるかという点で、顕著な改善が見られたと述べている。
ベッテルのコメントについてMotorsport.comが質問したところ、トンバジスは次のように答えた。
「私は、クルマがお互いに近い距離で走るという能力が改善されたと思う。タイヤと合わせて、それ(ルール変更)が役に立ったと思う」
「良いレースには、やはり接近戦が必要なのは明らかだ。今シーズンの後半は、それほど接近戦はなかった。明確なウイナーがいたからもちろんだ」
「でも、来年はもっともっと接近してくると思う。(戦闘力の)収束によって接近戦が可能になり、オーバーヒートさせないようにとタイヤでの戦いが増えて、とてもいいレースができるようになると思う」
「今年は、全体的にエキサイティングなレースが多かったと思う。恩恵は小さくないし、大きかったと思う。大変な努力が必要だったことは確かだ!」
Nikolas Tombazis, Head of Single Seater Technical Matters, FIA
Photo by: Mark Sutton / Motorsport Images
2022年シーズンは、マシンの後方で発生する乱気流の影響を減らすべく、レギュレーション変更が行なわれたが、実際にドライバーたちは前方のライバルに接近しやすくなったと感じているようだ。しかし一方で、前車から約1秒の位置では逆に空気の乱れが大きくなっていることに気づいたという。
この状況は完璧なシナリオではないものの、乱気流の影響を全く受けずにレースができることを期待するのは夢物語だとトンバジスは考えている。
「乱気流がないなんて、絶対にありえない」と彼は言う。
「それは60年代のような、ダウンフォースがほとんどないクルマの場合だけだろう。だから、後流の影響は常にあるんだ」
「近距離での損失も少なくなっており、ダウンフォースの損失は50%から25%程度になっているんだ。それでもかなりのロスだけど、そのころにはDRSが使えるようになっているから、部分的に補うことができるんだ」
ベッテルが言及したように感じる要因のひとつは、全体的に空気抵抗が減っているゆえに、スリップストリームの効果も大幅に減少していることだろう。そのため、マシンが接近して走ることができても、ストレートでの追い越しが難しくなってしまったのだ。
しかしトンバジスは、このルールが全体として利益をもたらすと信じている。
「2台のクルマが1秒離れて走っているとすると、ストレートでは1秒は約60メートル差、コーナーではスピードの関係で20メートルほどになる。だから、コーナーで得られる利益は、ストレートでの損失よりもずっと大きいのだ」
「この方法を疑問視する人の中には、『スリップストリームがなくなるんじゃないか』と言う人もいた」
「確かにスリップストリームは少し小さくなる。しかし、1秒遅れのクルマが前車にどれだけ接近できるかを実際にシミュレーションしてみると、やはりこの方が有利なんだ」
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