戦いはスタート前から始まっている! グリッド上で起きたハプニング集
F1では各車が所定のスターティンググリッドに付き、停止状態から発進するスタンディングスタートが採用されている。今回はそんなグリッド上で起きたハプニングをいくつか振り返っていく。



それを見た4番グリッドのパトリック・デュパイエ(リジェ)はビルヌーブに追い付き合図を送ったが、一部のマシンはレースがスタートしたと勘違いし、ジャック・ラフィー(リジェ)は他車に追突されマシンを降りるなど混乱が生じた。
結果的にスタートは仕切り直しに。ラフィーはスペアカーに乗り換えピットレーンからスタートすることができた。また、混乱の元凶となったビルヌーブはポールポジションから再スタートすることを許され、結果的にこのレースを完勝している。
写真:: LAT Images

当時のピットロードは狭く、速度制限もなく、多くのスタッフが横切るという危険な状態だった。数人のドライバーはピットロードの安全性向上を訴える抗議の一環として、決勝のスターティンググリッドにつかなかった。しかしながら、主催者側はフォーメーションラップをスタートさせた。
そんな混乱の中、フォーメーションラップの隊列もバラバラ。数台のマシンが一部のマシンの帰りをグリッド上で待つという状況となった。2番グリッドのネルソン・ピケ(ウイリアムズ)が停車しているマシンたちをかき分けながら、ようやく所定の位置に着こうとする頃、待ちかねていた4番グリッドのリカルド・パトレーゼ(アロウズ)はエンジンがオーバーヒートしてしまい、手を大きく振ってジェスチャーした。そこで彼のメカニックがエンジンを再始動させようとコースに入ったが、あろうことかそこでレースはスタートしてしまった。
何台かのマシンはパトレーゼ車の後部にいるメカニックを間一髪で避けたが、チームメイトであるジークフリート・ストールは避けきれず、パトレーゼ車の後部に突っ込んでしまった。メカニックは脚を骨折する重傷を負ったが、幸い命に別条はなかった。
この事故により、メカニックはレース開始の15秒前からグリッド上に入れなくなった。
写真:: LAT Images

デ・アンジェリスはすぐに間違いに気付き、リバースギヤに入れてバックしたが、後ろにいたチームメイトのナイジェル・マンセルと接触してしまった。マンセルはデ・アンジェリスがさらにバックしてくると思いギヤをリバースに入れたが、そこでスタートライトが青に変わってしまった。マンセルはレーススタートをバックで迎えるという、何とも不名誉な記録を残すこととなった。
写真:: LAT Images

ライトは赤から一瞬緑に変わり、また赤に変わった。多くのマシンはスタートを切ったが、奇数グリッドのエリオ・デ・アンジェリス(ロータス)、パトリック・タンベイ(ルノー)、テオ・ファビ(ブラバム)らはもたつき、混乱が生じた。結果的に赤旗が掲示され、スタートはやり直しに。再開後のレースではニキ・ラウダ(マクラーレン)が地元GPを勝利で飾った。
写真:: Sutton Images

3度目のスタートは当初の予定より2時間も遅れる形となったが、各チームはその間マシンを修復したり、スペアカーを用意するなどして対応した。クラッシュのきっかけを作ったマンセルは、再開後のレースでちゃっかり優勝。その後、表彰台に向かう途中に橋桁に頭をぶつけるという“天罰”が下ろうとは、本人は知るよしもなかった。
写真:: Sutton Images

3度目のスタートでは、2番グリッドのアイルトン・セナ(マクラーレン)がポールポジションのチームメイト、アラン・プロストの牽制を交わしてトップに立った。2周目のメインストレートではプロストが反撃に出るが、セナは激しく幅寄せして彼をピットウォールに追いやった。レースは最終的にプロストが勝利し、セナはトラブルにより6位に終わったが、両者の間に遺恨を残すレースとなった。
なお、トラブルを抱えたセナを交わして2位表彰台を獲得したのはマーチのイバン・カペリだったが、この年最強を誇ったマクラーレン・ホンダがコース上でパスされたのはこの第13戦ポルトガルGPが初めてのことだった。
写真:: Sutton Images

自身が優勝し、ハッキネンが3位以下ならチャンピオンのシューマッハー。しかしフォーメーションラップを終えスタートを待つ間に、エンジンをストールさせてしまった。これでスタートは仕切り直しとなり、2度目のフォーメーションラップで最後尾に回されるシューマッハー。この瞬間、彼のフェラーリでの初タイトルの野望は実質的に潰えてしまった。(シューマッハーはその後3番手まで追い上げるも、タイヤバーストによりリタイア)
写真:: LAT Images

写真:: LAT Images

F1がハイブリッド時代となったことで、ドライバーにはエンジン再始動のための多くのオプションが生まれた。2016年のマレーシアGPでは、カルロス・サインツJr.(トロロッソ)がMGU-Kのシステムを利用してエンジンを再始動させた。
このようにグリッド上で起きたハプニングをいくつか振り返ってきたが、これら9つの事例を年代順に見ていくことで、F1における技術力の進化と安全性の向上を垣間見ることができる。
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