分析
F1 ベルギーGP
明るいアップデート投入計画。マクラーレンF1が持つ、他のチームにはない強み……ベルギーで実戦投入のフロアに、大外しはありえない!?
マクラーレンF1は今季これまで、数々のアップデートパーツを投入してきた。しかし、すぐ実戦投入することは少ない。このアプローチの背景には、何があるのか?

Ronald Vording
編集: 2025/07/23 3:15
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写真:: Steven Tee / LAT Images via Getty Images
シルバーストン・サーキットで開催されたF1イギリスGPに、マクラーレンは全く新しいフロアを投入した。チームはこのフロアを、フリー走行1回目で使ったが、チーム代表のアンドレア・ステラによれば、その後のセッションではこのフロアはマシンから取り外され、使われなかった。
マクラーレンは今季、シルバーストンのフロアのようにアップデートをすぐさま実戦投入することは少なかった。
「このフロアは、新仕様のフロアを事前に把握するためのテストフロアとして計画されていたものだ」
ステラ代表はそう語った。
2回目のフリー走行でマクラーレンは、2台のマシンのフロアを旧バージョンに戻した。このことはステラ代表の言う通り、新フロアが期待したようなパフォーマンスを発揮しなかったからではなく、当初からの計画の一環であった。
新フロアはスパ・フランコルシャンを舞台に開催されるベルギーGPの週末に改めて投入される予定で、今後は予選と決勝でも使われることになると見られる。
「次のレース(ベルギーGP)はスプリント・フォーマットなので、新しい仕様のパーツを投入して適切な比較を行なうのが、より難しくなる」
ステラ代表はイギリスGPの際に先行してフロアを試した理由について、そう説明した。
「シルバーストンのフリー走行で確認できたことには、非常に満足している。あらゆる兆候が、今後のレースでこの新しいフロアを投入すべきだと示しているようだ」
マクラーレンの優位性の証:レッドブルの異なる状況
マクラーレンがシルバーストンで新しいフロアを投入したアプローチは、彼らにとっては何も特異なケースではない。今季これまでにも、アップデート版のパッケージを持ち込みながら、すぐにレースで投入しないという事例があったのだ。
カナダGPでマクラーレンは、新しいフロントウイングをテストアイテムとして投入。しかし実戦で使ったのは、次のオーストリアGPでのことだった。またノリスはスペインGPでの投入を予定していたフロントウイングを、エミリア・ロマーニャGPの段階で既にテストしていた。このフロントウイングは、新しい技術指令に対応するため、フレキシブル性が削られたモノであった。
Foto door: Steven Tee / LAT Images via Getty Images
この2例の他にも、マクラーレンは同様に新パーツを投入しながら、すぐに実戦で使わなかったこともあった。
これらは全て、新パーツが期待外れだったわけではなく、綿密に練られた計画によるものだった。彼らはコース上を実際に走ることで、風洞実験やCFDで得られたデータとの相関関係を検証し、アップデートが期待通りの効果を発揮しているかを確認する時間を十分に確保することができたわけだ。
シミュレーションと実走行データの相関関係が取れないということには、近年多くのチームが悩まされてきた。しかしマクラーレンはこのようなアプローチをすることで、相関関係が取れず、悩まされるという事態を回避してきたのだ。フェラーリは昨年のスペインGPで新フロアを投入した時にこの問題に悩まされて失速、レッドブルは旧式の風洞と実走行のデータが合わず、足枷となっている。
マクラーレンのアップデートに対するアプローチは、賢明なモノと言える。しかしそれと同時に、彼らが現在享受している、ある意味”贅沢”とも言える立場も浮き彫りにしている。
新パーツを投入することにより、コンマ1秒でもペースアップできるのであれば、即座に活用しない理由はあまり見当たらない。しかしマクラーレンは現在、コース上でもポイントの面でも十分なリードを保っており、急いでアップデートパーツを投入するというリスクを回避できる”余裕”を手にしている。
一方でレッドブルは、シーズン開幕時の遅れを挽回するために、矢継ぎ早にマシンをアップデートし、すぐに実戦でも投入しなければならず、そのことでドツボにハマっていった。中団グループを争うチームはさらに熾烈な争いに巻き込まれており、新た強いパーツを投入する上で一刻も無駄にできない。
マクラーレンは、強力な基盤を手にしているため、僅かなペースアップのためにリスクを負う必要はない。しかも彼らは、FIAの技術指令への適応においても、巧妙な対応を見せてきた。
前述の通り、マクラーレンはフレキシブル性を抑えたフロントウイングを事前に実走テストすることで、パフォーマンスに悪影響を与えないことを確認した。これは、チームに十分な余裕がある時にのみ可能となる。ただそれだけではなく、ロブ・マーシャル率いるマクラーレンの技術チームが、賢明な計画を立てていることの証左とも言える。
ベルギーGPにはライバル勢も改良版を投入
シルバーストンで先行投入されたフロアのテストは、このアプローチそのものだ。マクラーレン・レーシングのザク・ブラウンCEOは前述のステラ代表と同様に、「フロアはうまく機能したので、両方のマシンに装着する」と断言し、さらに次のように続けた。
「当初は最初の週末にテストを行なうだけのつもりだったが、結果には満足しているので、今後さらなるモノが登場することになるだろう」
グリッド最強のマクラーレンMCL38がさらに強くなるのだろうか? ライバルたちがさらに懸念を抱えることになるのは当然だろう。
「前回と同じような展開になると思う」
ブラウンCEOは、ベルギーGPについて尋ねられた際にそう語った。
「今回は30秒差で勝てるということはないだろう。でも、接戦という点では、これまでと変わらない」
「これまでのレースはどれも素晴らしいモノだった。12戦中9勝という数字はあるが、どのレースもかなりストレスの溜まるものだった。テレビで観戦するぶんには、素晴らしいレースになるはずだ。残りの12戦でも9勝したいところだけど、エキサイティングなシーズンだ」
マクラーレンが実戦投入する新しいフロアは、その優位性をさらに加速させる要素になる可能性がある。しかしその一方で、ライバル勢も黙っているわけではない。彼らも、ベルギーGPに向けて様々なアップデートを計画している。
フェラーリは、新しいリヤサスペンションをベルギーGPに持ち込む予定だ。彼らはフィルミングデーを利用して、このリヤサスペンションを事前に試すという念の入れようである。
一方でレッドブルのモータースポーツ・アドバイザーであるヘルムート・マルコも、チームがベルギーGPにさらなるアップデートを持ち込む予定であると語っていた。これらのアップデートは以前から計画されているモノであるが、既に新レギュレーションが導入される2026年シーズンに向けた開発がファクトリーでの仕事の中心となっているため、今季中の最後の大きなアップデートということになるだろう。
ベルギーGPはスプリントフォーマットでの開催となるが、これらのことが、非常に興味深い変化をもたらすかもしれない。
ただ、ひとつだけ変わらないことがある。それは、マクラーレンが実戦投入するフロアは、既に実走データを採取済みであるということだ。つまり、大外しするこということはありえないということだろう。これは他のチームでは享受できない贅沢な立場であり、マクラーレンの現在の強みのひとつと言える。
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