分析

F1 オーストリアGP

【分析】マクラーレンF1新人が乗り出し4番手。そこから見えるレッドブルの課題……角田裕毅更迭は解決策ではない

レッドブルの角田裕毅はマックス・フェルスタッペン以上に苦戦を強いられているが、チーム内部ではドライバー入れ替えが解決策ではないというコンセンサスが取れているようだ。相談役のヘルムート・マルコは、いきなり好走を見せたマクラーレンの新人アレクサンダー・ダンを比較対象として挙げた。

Ronald Vording

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公開日時: 2025/07/04 3:04

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Yuki Tsunoda, Red Bull Racing Team

写真:: Zak Mauger / LAT Images via Getty Images

 2025年シーズンのF1第3戦日本GP以降、リアム・ローソンからレッドブルのセカンドシートを引き継いだ角田裕毅は現在9レースを戦った。

 これまでのところ、ドライバー交代の影響はごくわずか。チームメイトのマックス・フェルスタッペンが119ポイントを獲得しているのに対して、角田はわずか7ポイントしか獲得していない。最近の予選結果も芳しくなく、ペナルティを含めれば過去5戦は20番手、12番手、19番手、18番手、18番手というグリッドポジションだった。

 通常であれば、こうした結果はプレッシャーを高めるモノだが、今回はレッドブルの状況が違う。この半年で分かったことは、問題の核心はドライバーにはないということだ。

 セルジオ・ペレスは今になって、レッドブルが自身を放出したことを後悔していると主張しているが、成績不振で昨年チームを追われ、ローソンは与えられた時間で十分なインパクトを与えることができず。角田も今はその道を辿っている。

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 しかしレッドブルのモータースポーツアドバイザーであるヘルムート・マルコは、シーズン途中で角田をクビにすることはないと繰り返し主張している。その心は、この問題が構造的なモノだからだ。

 現在のF1では予算上限が設定されており、新時代が始まる2026年シーズンが迫る今、不用意な支出は開発予算に食い込む。そのため高額なクラッシュさえ避けさえすれば、角田のパフォーマンスなどほとんど関係ないと皮肉る人さえいるかもしれない。

 しかし大局的に見ると、レッドブルは誰がセカンドシートに座ろうとも、コンストラクターズランキング4位を目指すようだ。

 明らかな後任候補もいない。レーシンブルズのアイザック・ハジャーは1年目から好調なシーズンを送っているが、まだ昇格の準備が整っていないと本人も認めている。またレッドブルが再び若い才能の芽を早々に摘んでしまうのは賢明ではない。

 ローソンは既にチャンスを得ているし、FIA F2を戦うアービッド・リンドブラッドは長期的なプロジェクトであり、レーシングブルズを経るのが当然の流れだ。現実的にすぐさまレッドブルへ投入できるドライバーはいない。

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 そのためレッドブル首脳陣は、角田がオーストリアGP決勝で最下位フィニッシュとなった後でも、冷静な言葉で対応していた。

 このレースではレッドブルが1台、メルセデスが1台、そしてウイリアムズの2台がリタイアしたものの、角田はポイントを掴むことが出来なかった。レッドブルとしても77戦ぶりの無得点となったことは痛かったが、クリスチャン・ホーナー代表はレース後のメディアセッションで事実関係を説明するに留めた。

「ユウキは酷いレースだった。またしてもQ1から上手く行かなくなった。Q1での1走目は良かったが、2走目はターン1でミスを犯し、酷い予選順位となった。(決勝では)トラフィックから抜け出せず、オーバーテイクも出来ずにペナルティを受けた」

 またホーナー代表は、レッドブルのホスピタリティエリアで次のようにも語った。

「我々が彼をどうサポートできるか分析するが、2台のマシンには大きな開きがあり、もちろん内部的にはそうした疑問の全てを問うている」

「マシンは年々、特定の方向に向けて進化してきたが、シルバーストンではユウキを助け、自信を回復させることができるかどうかを見てみたい」

 これまでレッドブルやマルコが成績の上がらないドライバーに対して行なってきたプレッシャー工作とは異なる。ただ、角田の代わりがいないことを考えれば、理にかなっている。現状、自らドライバーのモチベーションを下げることは得策ではない。

マクラーレン新人のFP1セッションが新たな裏付けに

Alexander Dunne, McLaren

Alexander Dunne, McLaren

Photo by: Steven Tee / LAT Images via Getty Images

 レッドブルがここ数ヵ月で学んだことは、問題はドライバーではなくマシンにあるということだ。フェルスタッペンは数週間前、オランダメディアに対して「ユウキはパンケーキではない。そうだろう?」と語り、角田を擁護した。オランダ語でパンケーキ(pannenkoek)は、「絶望的」「全く無能な人物」を指すスラングだ。

「レーシングブルズにいた時、彼はハジャーと比べ常に良かったように見えた。この問題はずっと続いている。これもひとつのサインなのかもしれない」

 そう続けたフェルスタッペンに対して発言の意図を尋ねると、「その問いの答えは自分で導き出せるはずだ」と答えた。

 オーストリアGPでレッドブルは、もうひとつのサインを見つけた。FIA F2に参戦するアレクサンダー・ダンが、マクラーレンからルーキー枠でフリー走行1回目に参加し、トップタイムから0.2秒差の4番手タイムを記録したのだ。

 確かに、ダンの燃料搭載量やエンジンモードには疑問が残り、それが走行において有利に働いたかどうかも分からないが、それでもレッドブルは明確な結論を導き出した。

 motorsport.comがマルコにレッドブルのセカンドシートという頭痛のタネについて話を聞くと、ダンのオンボード映像を見たことを認めた。

「彼はあちこちで少し危うい瞬間を経験しているが、マクラーレンは小さなスライドがあってもマシンがほとんど勝手に修正してくれる」とマルコは言う。

「我々の場合は常に綱渡りだ。コースオフするか、かろうじてコース上にマシンを留めておくかのバランスを常に取っている」

 マルコが指摘したのは、オーストリアGPのフリー走行3回目でレッドブルの両ドライバーが経験したスピン。フェルスタッペンの場合は、わずかな乱れが360度スピンに繋がった。

 マルコ曰く、レッドブル首脳陣はフェルスタッペンだけがまだなんとかマシンを乗りこなしているものの、セカンドドライバーにとっては話がまったく異なるということを理解しているという。ダンのFP1での走りは、常に“ナイフエッジ”なレッドブルRB21に比べ、マクラーレンのMCL39が新人にとっていかに「飛び乗りOK」かをレッドブルに示した。

 さらにレーシングブルズからレッドブルへの乗り換えも非常に大きな壁だ。レーシングブルズのマシンはスイートスポットが広く、ドライビングにも寛容。ドライバーからすると、グリッド上で最も運転しやすいマシンのひとつであり、レッドブルはその対極にある。

Yuki Tsunoda, Red Bull Racing Team 

Yuki Tsunoda, Red Bull Racing Team 

Photo by: Red Bull Content Pool

 かつて両方のマシンを経験した現ウイリアムズのアレクサンダー・アルボンは、その差を次のように説明していた。

「難しいよ。僕の勝手な解釈かもしれないけど……RBはかなり寛容なマシンだ。バランスが良いし、とても安定している。あのマシンにはいつもルーキーが乗っているから、自然とそういうマシンになったんだと思う。だからチームの基盤は若いドライバーによって築かれている。そしてレッドブルはほぼ対極だ。最も寛容なマシンから最もトリッキーなマシンになる。だから全く異なる2台のマシンに適応しなければならない」

 そのレッドブルのマシンへの適応は、フェルスタッペンのようなチームメイトとの対戦と相まって、ダニエル・リカルドのチーム離脱以来、誰にとってもあまりに大きな壁あるかが証明されてきた。ピエール・ガスリー(現アルピーヌ)、アルボン、ペレス、ローソン、そして角田も苦戦している。レッドブルはこのリストにもうひとり名前を加えることもできるが、チーム首脳はそのようなことをしても無意味だと理解している。

 皮肉なことに、マクラーレンを駆ったダンの走りを含め、レッドブルのお膝元ではそうした事実がかつてないほど明確になった。

 また現在のレッドブルがいかにフェルスタッペン依存か、そしてフェルスタッペン離脱説が現実のモノとなった場合、事態がどれほど深刻になる可能性があるのかも明らかになった。オーストラリアGPで描かれたフェルスタッペンのいない“もしも”の世界線で、レッドブルは泥水を啜っていた……。

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