F1
アルファタウリ、“バナナの皮”にご用心。予算制限と新技術規定でF1開発競争は「スマートさ」が肝心に
F1第4戦エミリア・ロマーニャGPで今季初の大型アップデートを投入したアルファタウリ。テクニカルディレクターのジョディ・エギントンが、シーズン序盤でのマシン開発と予算制限との兼ね合いにより、これまで以上に「賢さ」が重要になるという。

Adam Cooper
公開日時: 2022/04/23 9:06
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アルファタウリでテクニカルディレクターを務めるジョディ・エギントンは、予算制限下での新テクニカルレギュレーション導入により、マシンの開発競争では「スマートさ」が求められると語る。
プレシーズンテストと開幕3戦の慌ただしいレース週末を経て、多くのF1チームは第4戦エミリア・ロマーニャGPで最初の大型アップデートをマシンに投入した。
シーズン序盤、チームはサーキットで得られたデータをファクトリーへ送り、風洞やCFD(数値流体力学)での数値と照らし合わせ、新しい2022年マシンについての学びを深めている段階だ。
その相関関係を掴む上で厄介になっているのが、ほとんどのチームに多かれ少なかれ発生しているポーパシングだ。高速域でマシンが上下に高速振動するこの現象を、ファクトリーで再現することは容易ではない。
さらに今年は予算制限の上限が引き下げられ、効率的にマシン開発を行なうことがこれまで以上に重要になる。間違った方向に開発を進めたり、成果の出ない研究開発プロジェクトにリソースを割いたりする余裕などないのだ。
昨シーズン、3番目から4番目に速いマシンを持っていたアルファタウリ。今年は、ハースF1やアルファロメオ、昨年ライバルであったアルピーヌがマシンの面で躍進を遂げたことで、熾烈な中団グループではやや後退気味である。しかしアルファタウリは、地元イモラ・サーキットで行なわれる第4戦に大型アップデートを持ち込み、巻き返しを狙った。
ただエミリア・ロマーニャGPの予選では、角田裕毅とピエール・ガスリーが揃ってQ1敗退と、アップデートをモノにすることはできなかった。
アルファタウリのエギントンTDは、今回のアップデートについて次のように語っている。
「今年最初のそれなりに大きなアップデートになる」
「このアップデートが上手く機能すれば、マシンパフォーマンスが一段と良くなると期待している」
「予定している主なアップデートはフロアと、フロントブレーキダクトだ。ただ今のところ、フロアが最重要で、多くのパフォーマンスがそこに秘められている。ここの部分が上手くいかないと、大量のバナナの皮を踏んだかのようになってしまう」
「だから、我々は正しい方向に進んでいるかどうかを確認しているのだ。これまでのレースでは、細かい変更をたくさん行ない、全てをまとめ上げた上で、フロアの大型アップデートをどう行なうべきかをより明確にしている」
Yuki Tsunoda, AlphaTauri AT03
Photo by: Erik Junius
アルファタウリが2022年シーズン序盤のマシン開発に対しどのように取り組んできたかを知ると、全てのチームが開発で直面する課題の一面が垣間見えてくる。実に興味深いケーススタディだ。
「他のチームと同様に、ファクトリーでアップデートの準備はしていた」とエギントンは言う。
「風洞で上手くいったモノもあったし、投入準備が整っているモノもあった。冬のテストでは、誰もがそうであるように、我々も多くを学んだ。そして開幕戦を迎えた」
「驚きはなかったが、フロアの挙動では従来のレギュレーションとは異なるサーキット特有のモノがある」
「冬のテストと開幕戦で学んだことを元に特定の“アップデートボタン”を押し、その他のモノは『実際、現時点で我々の望むやり方ではない』として待機させることにしたのだ」
「だから、最初のアップデートが第4戦まで遅れることになった。自分たちが正しいことをやれているか、正しい方向に進めているかどうかを確認するためにね。この数ヵ月は、学ぶことがとても多かった」
アルファタウリはここまでフェラーリと同様のマシン開発戦略を採ってきた。マシンには大きな変更を加えず、“オリジナル”のマシンについての学習を深めることに取り組んできたのだ。
「我々はベースとなるこの仕様のマシンに手を加えてきた」とエギントンはここまでのマシン開発を振り返る。
「通常のメカニカルなセットアップのアップデートはもちろん、とても小さな空力パーツ、フロア、フロアの強化など、小さなところでアップデートを行なってきた。それを上手く読み取って、CFDと空力モデルとの相関関係を取ろうとしている」
Pierre Gasly, AlphaTauri AT03, Yuki Tsunoda, AlphaTauri AT03
Photo by: Mark Sutton / Motorsport Images
「主に冬のテストと開幕戦での学習に基づいて、いくつかのアップデートボタンを押した。我々が進む道はそこだ。しかしこれまでは、データ収集と学習、そして小さなアップデートの繰り返しでとても忙しかった」
アルファタウリは、昨年ようやくレギュレーション上限となる60%スケールの風洞モデルを走らせることができるレッドブル所有の風洞施設へと移った。50%から60%と実寸サイズにより近い設備により、得られるデータの精度も向上……ポーパシング対策という課題は残るものの、大きな助けになっているという。
「このマシンは60%(の風洞モデル)で設計されている」とエギントンは言う。
「CFDと風洞、そしてサーキットとの相関関係はとても良好だ。ただ、サーキットでのデータを使用することが多く、まだ全ての答え合わせができていない……それはポーパシングだ。風洞で簡単に再現できるモノではない。風洞モデルをベルトに当てるようなことはしたくないのだ」
「フロアから得られるパフォーマンスは絶大だ。しかしポーパシングのことをちゃんと理解していなければ、ハイパフォーマンスなフロアを持っていても、そのせいでスイートスポットで走らせることはできないのだ。そうなると、ハイパフォーマンスなフロアだとは言えなくなる」
「我々がファクトリーで行なってきた作業は、大型アップデートを投入する前に、我々が進むべき道を見定めることだった」
他のチームと同様に、アルファタウリも空力パフォーマンスの向上と並行して、マシン重量を注視してきた。2022年シーズンはマシンの最低重量が前年度の752kgから795kgに引き上げられ、さらにFIAはシーズン開幕直前に798kgにまで引き上げた。しかしなお、多くのチームが最低重量にまでマシンを“ダイエット”させることに苦慮。中には塗装の一部を剥がすチームも出てきた。
「可能性として、我々(のマシン重量)は平均よりもわずかに軽いと思う」とエギントンは言う。
「他のチームがどれくらいなのかは、正確には分からない。望んでいるほど快適とは言えないが、それなりに大丈夫だろう」
「それ(重量)はまだ焦点のひとつだ。我々は楽観視していないし、関心事のひとつだからね」
「現状を改善していきたいし、このままではいけないと思っている。このことは、程度の差こそあれ、全チームが同じように考えていると思う。でも、今のところ我々が最重量ではないことは確かだ」
「確かに、最低重量はこの新しいレギュレーションにおいてチャレンジだ。シャシーの安全装備、標準パーツにホイール、タイヤなどでの重量過多がある。そしてレギュレーションそのものが、重量増が容易くなっている」
Sparks fly from Pierre Gasly, AlphaTauri AT03
Photo by: Steven Tee / Motorsport Images
「マシンが並べられた時、我々はマシンの主要な重量にとても注意深く目を配り、何が起きているかを確認している。常に評価対象となっているのだ。設計の段階から、このマシンの許容重量は少しずつ増えている」
「我々はそのことに集中してきた。今年は大きなレギュレーション変更の初年度で、チャレンジングだった。今はそれを少しずつ削っている」
「我々は全く楽観的ではない。誰もこれには楽な気持ちでいることはできないのだ。しかし、改善に向けて何をすべきかについては、十分な見通しが立っている」
「これはどのチームも同じで、アップデートや信頼性のトラブルシューティング、シーズン中のその他のことで“迷子”になるのはよくあることだ。誰にとっても大きな焦点だ。これは一年中続くと思う」
マシンの軽量化は常にコストがかかるため、パフォーマンス向上が明確なマシン開発とはトレードオフの関係にある。
「予算制限によって、行なうこと全てが重要になる。ただ(マシンが)重すぎるという理由でアップデートを行なうのであれば、できるだけ避けたいと思うだろう」
「誰もが、自分たちの資金を最大限活用することに注力している。例えば、マシンパフォーマンスを上げるために新しいフロントウイングを投入し、空力的な効果と同時に重量を減らすことができれば、重量的なメリットも得られる可能性があるのだ」
「もし空力パフォーマンスのために重量を犠牲にするのであれば、それは苦渋の選択だ。だから我々は常に、それらを両立させようとしている。レギュレーションが変わった最初の年は、マシンを走らせながら、余分を少しずつ取り払っていくのだ」
エギントンが語るように、全ては限りある予算を最大限に活用することに帰結する。
「予算制限があるということで、財布の紐は堅い」
「やることについてスマートでいる必要がある。シーズンを通じて、その資金を有効に使う必要があるからだ」
「特定の活動だけに使うのではなく、シーズン後半のマシンパフォーマンス不足にも対応できるようにする必要があると認識しなくてはならないのだ」
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