8年ぶりタイトル獲得へ……レッドブルの躍進を後押しした”開発トークン”
レッドブルのエイドリアン・ニューウェイは、昨シーズンから開発が凍結されている中、追加での開発を許可する”トークン”をうまく使うことができたため、パフォーマンス向上に繋がったと考えているようだ。
写真:: Giorgio Piola
ジョルジョ・ピオラ【F1メカ解説】
Analysis provided by Giorgio Piola
2021年のF1は、新型コロナウイルス感染拡大により財政面での大きな影響を受けたチームを救うべく、コスト削減を目的に基本的には前年のマシンをそのまま使わなければならないと規定されている。
しかしそんな中でも、各チームは割り当てられた”開発トークン”を使い、限定された範囲内で開発を加えることができるようになっている。
レッドブルのチーフ・テクニカルオフィサーであるエイドリアン・ニューウェイは、最近レッドブルのポッドキャストに登場。昨年型マシンRB16には弱点があり、2021年シーズンに向けて修正しなければならない部分があったと説明した。
「新型コロナウイルスの感染拡大によって生じる問題に対処するため、昨年のマシンを引き続き使うという、特殊な状況になった」
ニューウェイはそう説明する。
「それによって、我々が開発できることは、トークンによって制限された。我々はそのトークンを、ギヤボックスのケースの変更に使うことを選んだ。その結果、我々はリヤサスペンションの配置を変えることも可能になった。それは、私がRB16ではうまく機能しているようには思っていなかったことのひとつだ」
レッドブルは、RB16ではリヤサスペンションの後側のアームを後退させ、それを実現するためにリヤの衝撃吸収構造に切り欠きを設けた。これは、メルセデスがW11で採用したモノによく似ている。
Red Bull RB16 and Mercedes W11 rear suspension comparison
Photo by: Giorgio Piola
RB16Bではさらにこの方向に進み、サスペンションはそれに対応すべく、再配置されている。しかしリヤの衝撃吸収構造やギヤボックスのケースを変更するために多くのトークンが必要だったため、その変更は限られた範囲のモノとなっている。
しかしこの変更は非常に有効で、センシティブでドライビングしにくいと言われたRB16の特性を緩和し、フロア面積の縮小などによってダウンフォース量を削減するというレギュレーション変更の中でも、空力コンセプトを開発していく上での余裕を生み出すことになった。
「冬の間、フロアとリヤエンド周りの空力制限に関して、中規模のレギュレーション変更があった。大きな変更ではなかったが、それに合わせてマシンを最適化することが必要だったのだ」
そうニューウェイは指摘した。
Red Bull Racing RB16B floor comparison
Photo by: Giorgio Piola
このレギュレーション変更に対処するため、レッドブルは今季のトレンドともなったZ字型のフロア形状を早々に採用したチームのひとつだ。そしてマシンのパッケージを最適化するために、これまでほとんどのレースで空力面のアップグレードを行なってきた。マシンの開発は凍結されているとはいえ、空力面の開発は今季も比較的自由なのだ。
ニューウェイ曰く、RB16では理解できていない部分があったという。その躓きは、将来に向けて非常に重要な一歩だったかもしれない。
「少し前に戻ると、2019年のRB15から昨年のRB16に移行した時、マシンには完全に理解できていないことがいくつかあった」
そうニューウェイは説明した。
「風洞実験と様々なシミュレーションツールを使っても、躓く可能性はまだある。それがまさに、2020年の初めに起きたことだ」
「この問題を理解するのには、少し時間がかかった。でもそのメリットもある。それは、他のやり方では学べなかったことを学ぶことができたということだ」
「素晴らしいことをするよりも、間違いからの方が学べることが多い。そういうことが、我々が冬にしたことについて良い立場に立たせたと思う。その開発が、我々を今いるところに導いた」
Red Bull Racing RB16 front wing
Photo by: Giorgio Piola
レッドブルはノーズにも変更を加え、フロントウイングのステーを狭くするソリューション(V2)を登場させた。しかしこれは、すぐに使われなくなった。
チームは他のソリューションについても比較テストを実施し、何が間違っているのかを徹底的に調査。その間違いを修正してきた。
今年はマシンの開発凍結とトークンシステムによる開発制限、予算上限の導入などが実施された。さらに来シーズンはテクニカルレギュレーションが大きく変更される予定であるため、マシンの形状も一新されることになる。これらのことを考えれば、今年はあらゆる面で”はじまりの年”と言うこともできるだろう。
「1982年の終わりにグラウンドエフェクトカーが禁止されて以来、我々が受けた最大のレギュレーション変更になると思う。本当に革命とも言えることだ。変わらないのはパワーユニットだけ……それ以外は全て異なるんだ」
「今年のマシンを開発し続けるということと、バランスを取らなければいけない。なぜなら現時点では、我々は今年タイトルを狙える立場にいるからね。でもそれと同時に、今年だけに集中して、来年以降のことも無視することはできない」
「これらふたつのことを、しっかりとバランスを取って進めていくために最善を尽くしている。コストの上限にも対処しながらね。残念ながら特定の領域では、チームの規模を縮小する必要があったのだ」
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