7回王者ルイス・ハミルトン、F1ドライバーとしての進化はまだまだ止まらず……懐刀ショブリン「彼は自分とチームを、もっと良くしようとしている」
2013年にメルセデスの一員となったルイス・ハミルトン。彼は以後、同チームで6回のチャンピオンに輝くに至った。しかし彼の目標は、チーム加入当初から変わっていないようだ。
Lewis Hamilton, Mercedes W13
Steve Etherington / Motorsport Images
2007年にマクラーレンの秘蔵っ子としてF1にデビューしたルイス・ハミルトン。これまでに7回のドライバーズチャンピオンに輝き、今では歴史上最も優れたドライバーのひとりに数えられる存在となった。
ハミルトンの現在の所属チームはメルセデス。1度のチャンピオン獲得経験を手土産にチームに加入した後は、現行のパワーユニット・レギュレーションの導入も追い風になり、タイトルを積み重ねていった。
彼の目標は、基本的にはメルセデスに加入した当時とそれほど変わっていないというが、アプローチには変更があったようだ。
ハミルトンが加入した当時のメルセデスは、前身のブラウンGP時代(2009年)にチャンピオンを獲得した経験があったとはいえ、常勝軍団と言うには程遠かった。しかし同チームで長年経験する間、浮き沈みはあったもののハミルトンは豊富なデータを手にすることができ、自分の努力をどこに集中させるべきかを明確化することになった。
そのハミルトンの進化について、メルセデスのトラックサイド・エンジニアリング・ディレクターのアンドリュー・ショブリンは、次のように語る。
「ルイスとは長いこと仕事をしてきたが、彼はクルマが何をしているかということについて、本当に印象的な感覚を持つドライバーだと思う」
ショブリンはmotorsport.comの独占インタビューにそう語った。
「彼が求める領域にマシンを入れることができれば、一体どんなことができるのか‥…我々はそのことをよく理解している。そして我々は十分すぎるほど長いこと共に仕事をしてきたから、必要な話をすることができるんだ」
「キャリアを重ねるにつれ、成長していくモノだと思っている。10年前に今と同じことを知識として持っていたならば、我々はもっと成功したはずだ」
「ルイスはドライバーとして、その限界ギリギリのところがどこなのかを探すということに、とても多くの努力を払っている。どうすれば以前よりも優れたドライバーとして新しいシーズンを迎えることができるかということを常に追い求めるのは、彼の勝利への愛情によるものだろう」
「彼は打ちのめされるのが大嫌いだ。だから彼は現在、エンジニアリングのプロセスを理解するために非常に熱心に取り組んでいる。全てのエンジニアリング部門と話し合っているんだ。空力面でも、ビークルダイナミクスの面でもね」
「彼はチーム内の全てのスタッフをよく知っている。だからこの質問をするにはどこに行けばいいか、このフィードバックを誰に伝えればいいかということをよく知っているんだ。そしていずれも、我々全員が一緒になって解決すべき問題なのだ」
ハミルトンが最も成長した領域……それはマシンからより多くのパフォーマンスを引き出すために、どこに努力すべきなのかということを理解したことだと、ショブリンは考えている。そして、チームが必要なモノを提供してくれるようにするためには、どうすればいいかということも、ハミルトンは理解するようになったという。
「彼は常に少しでも良くしようとしている。当初との違いは、彼が学習し改善していくために、チームや周りにいる人たちからどれだけのモノを引き出せるのか……それを彼が認識したことだと思う」
そうショブリンは説明する。
「彼はチームに快適さを感じ、落ち着いて日々の仕事に当たることができるようになった。自信もつけたし、様々な部分について、様々な人たちと話ができているということにも満足している。彼は、リソースを実に効率的に利用しているんだ」
「しかし彼は、十分ではないと思う部分を見つけた場合に、それを解決するために一生懸命になる」
「近年では、ドライバーたちがマシンを降りた時にすべき仕事の量も増えている。例えばタイヤがどうなるかを理解したり、それを適切にマネジメントするために何をすべきかということも知らなければいけない。そして、予選の時にどうやってタイヤをうまく作動させるかということも重要だ。つまり、彼らの仕事量はかつてないほど増えている」
「そしてルイスは、パドックから帰るのが最も遅いドライバーのひとりだ。そういう姿を頻繁に目にするだろう。彼は歩き回って、自分が何をする必要があるか、確実に把握しようとしている」
"The whole team has been through a lot with Lewis, and it’s great that we have such an experienced driver when we’ve had such a challenging year."
Photo by: Carl Bingham / Motorsport Images
■メルセデスとハミルトンに訪れた”試練”
2022年のメルセデスは、特にシーズン序盤はパフォーマンス面で大いに苦労した。そういう状況は、ハミルトンとメルセデスの関係が本当に強固なモノであるのか、有効な”試験”だったと言うことができよう。
メルセデスの2022年マシンW13は、新レギュレーション導入によりF1マシンに”復活”したグラウンド・エフェクト効果をしっかりと制御できず、シーズン序盤は激しいポーパシングに見舞われて、サーキットのあちこちで跳ね回った。この解決策を見つけるため、チームは非常に厳しい状況に置かれることになった。
その時のことについて、ショブリンは次のように振り返る。
「昨年のはじめ、皆さんがトト(ウルフ/チーム代表)とチームの関係性、そしてエンジニアリングチームとルイスの関係性について、疑いの目を向けていたのは間違いないだろう。当時はかなりのストレスとプレッシャー、そして不安を感じていた。厳しい会話もあった。我々は、十分に良い仕事をすることができていなかったから、それは当然のことだ」
「ルイスとしては、(最終戦の最終ラップでレッドブルのマックス・フェルスタッペンに敗れ、タイトルを逃した)2021年の後にそういう1年を迎えるのは、大変だっただろうと思う。彼は、2022年にどうやってやり返したいかを理解していた。しかし我々は、彼にそれを成し遂げることができるだけのマシンを用意することができなかったんだ。だから、間違いなく厳しい時期だった。でもそのプロセスは、チームにとっては良いモノだったと思う」
「我々が抱えていた課題のひとつは、一致団結して、協力し合うということだった。そしてその課題を、我々はうまく乗り越えてきた。この経験は、今後も我々の役に立つと思っている」
「一連の成功の後、こういうトリッキーなマシンに対処するのは非常に難しいことだ。良い組織を維持するために、何をするべきか? 十分に良くなく、変更が必要な組織のために、自分がしていることは何か? 今回はそういう面での解決策の良い例となった。そしてまた、それは我々が1年を通じて行なってきたことだった」
ショブリンは、非常に極端な状況になったこともあったと認める。しかしそういう厳しい瞬間を共に乗り越えたことで、メルセデスとハミルトンは将来に向けて良い方向に進んだという」
「バクーやモントリオール、イモラなどで我々が用意したクルマは、厳しい状況にあった。危険と隣り合わせだったんだ」
そうショブリンは言う。
「しかしそのことは、我々がそのポジションから抜け出し、チームが再び戦えるようにすることについて、集中させるきっかけとなった」
「チームはルイスと共に、多くのことを経験してきた。そして昨年のような厳しい年に、彼のような経験豊富なドライバーがいるということは、素晴らしいことだと思う」
「その挑戦の最悪な部分を乗り越えられていることを願っている。そうすれば、次の挑戦に挑むことができるはずだ。そして戦闘力を取り戻し、チャンピオンを争いたいと思う」
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