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ベッテル、F1キャリアの分かれ道。ホンダF1加入の可能性があった”2週間”

2022年限りでF1引退を発表したセバスチャン・ベッテル。レッドブル時代に4度のチャンピオンを獲得し成功を収めた彼だが、そのキャリアの前には分かれ道があったようだ。

Sebastian Vettel, BMW Sauber F1.07

Sebastian Vettel, BMW Sauber F1.07

Sutton Images

 4度のF1王者であるセバスチャン・ベッテルが、2022年限りでF1引退を発表した。彼は2007年アメリカGPでBMWザウバーからロバート・クビサの代役としてF1デビューしたが、その前にホンダF1に加わる可能性があったという。

 そのエピソードを明かしたのは、アルピーヌのチーム代表であるオットマー・サフナウアーだ。彼は昨年までアストンマーチンのチーム代表としてベッテルと関わりがあったほか、その前にはHRD(ホンダ・レーシング・デベロップメント)の副社長を務めるなどホンダの第3期F1活動で重要な役割を果たしていたのだ。

 ベッテルと良好な関係を築いてきたサフナウアーは、ハンガリーGPの際にベッテルとのエピソードについて訊かれ、当時レッドブルやBMWとつながりのあった若手ドライバーのベッテルをホンダに引き抜こうとしていた時期があったと明かした。

 当時ベッテルは、レッドブルからBMWザウバーに2年契約で貸し出され、サードドライバーを務めていた。

 ただ、当時ホンダF1のスポーティングディレクターを務めていたジル・ド・フェランが腰を上げなかったことで、ホンダ入りは実現しなかったのだという。

Jenson Button, Honda RA107

Jenson Button, Honda RA107

Photo by: Motorsport Images

「セブが私のところに来て、『2週間の猶予がある』と言ったんだ。彼は若くて、19歳かそこらだったかな。『レッドブルとBMWの契約が切れるまで2週間あるんだ。僕と契約することに興味はあるかな』ってね」

 そうサフナウアーは振り返った。

「彼は当時、無名の存在だった。でも私は、『ああ、この子はいい!』って思ったんだ。2週間あったんだ!」

「それでジルに会いに行って『セバスチャン・ベッテルと契約するのに2週間の猶予がある』と言ったんだ。すると彼は、『心配するな、俺が目をつけている』と言った。『どういう意味だ、目をつけているって? 2週間だぞ』と私は返した」

「とにかく、彼とは契約をしなかったんだ」

 その後、ベッテルは大クラッシュを喫したクビサの代役として、2007年の第7戦アメリカGPでF1デビュー。さらにその年の第11戦ハンガリーGPからは、トロロッソのレギュラーシートを手にすることができた。

 そして2008年の第14戦イタリアGPで初優勝。当時の最年少優勝・最年少表彰台および最年少ポールポジション記録を更新し、トップドライバーへの道を駆け上がっていった。

 サフナウアーは2008年半ばにホンダを離れたが、この年を最後にホンダはF1から撤退。チームを引き継いだブラウンGPでジェンソン・バトンが2009年のチャンピオンを獲得し、2010年からはメルセデスF1チームとして参戦を続けている。

 そして2020年、サフナウアーとベッテルはアストンマーチン移籍について話し合いを進めた。彼のフェラーリ離脱が発表され、その去就に注目が集まっていた頃、彼がサフナウアーとフェラーリ・ピスタに同乗し、ガソリンスタンドに向かう姿がキャッチされたこともあった。

 サフナウアーは、ベッテルがイギリスに滞在する際、自家製のパンを持参してサフナウアーの自宅を訪れていたというエピソードも明かした。

「コロナ禍の間、彼はイギリスに来るたびにコロナに罹ってしまうかもしれないホテルには行かず、我が家で過ごしていた。なぜなら我が家のみんなは毎日検査をして、我が家がコロナフリーであることを知っていたからだ」

「彼が家に来るときはいつも、スイスで作った自家製のパンを小さなかばんに入れて持ってきてくれた。初めての時は、子供たちはみんな不思議そうにしていたよ。でも、彼らはセブの手作りパンが大好きだった」

「彼は毎回、自家製のパンを持ってくるようになったんだ。ブリリアントだ! 他に誰がそんなことをするんだ?」

 
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