まさかの“救済対象”となったメルセデス、ADUOでレッドブル以外がPU追加開発可能な現状を高評価「政治的な意図が一切ない」
メルセデスのトト・ウルフ代表は、一部メーカーにPUの追加開発を許可するADUOには政治的な背景はなく、その目的はしっかりと果たされていると述べた。
パワーユニット(PU)の追加開発・アップグレードが可能となる“ADUO”の対象メーカーが明らかになった際、F1パドックは驚きに包まれた。ベンチマークとなる最高のエンジンを持つメーカーはメルセデスではなく、新参のレッドブル・フォード・パワートレインズであると判定され、そのレッドブルを除くすべてのメーカーがADUOの対象になるというからだ。このことは各チームに通知され、いわば公然の秘密となっているが、レッドブルが結果の再検証を求めていることもあり、未だFIAによる正式発表は行なわれていない。
ADUOはセンサーデータを用いた事実ベースでの審査プロセスがとられているが、そこにある根本的な問題点が浮き彫りとなっている。評価対象となるのは、ハイブリッドシステムとなっているPUの内、内燃機関(エンジン)の出力のみ。したがってADUOの対象となるメーカーは「エンジン出力においてベンチマークから数%後れをとっているメーカー」ということになるが、追加開発のトークンはエンジンにとどまらず、バッテリーやMGU-Kといった電動のコンポーネントにも使うことができるのだ。
現在ワークスチームが開幕から全勝を記録しているメルセデスにとって、今回の結果は歓迎すべきものだろう。チームのトト・ウルフ代表はバルセロナで冗談まじりにこう語った。
「最初に聞いたのはフラビオ(ブリアトーレ/アルピーヌの事実上のチーム代表)からの電話で、その内容は『最強のエンジンを買ったはずなのに、そうではなかった』という話だった(笑)。何と言えばいいんだろうね」
「とはいえ、新たなホモロゲーションは間違いなく有益だ。これが得られなければ、他のメーカーに追い抜かれる可能性はかなり高いからね」
メルセデスがADUOの対象となることで、この制度が正しく機能しているのかという疑問が生じる。ウルフ代表は今回、ライバルに“追い抜かれる”リスクについて言及したが、彼は4月の時点でそういった勢力図の変化を起こすことがADUOの目的ではないはずだと主張しており、救済措置による支援が必要なのは1メーカー……つまり開幕から苦戦していたホンダだけだと述べていた。
ただウルフ代表は今週末のバルセロナで、レッドブル以外がADUOの対象という結果になったにもかかわらず、制度は設計通りに機能していると語った。
「これは本来目指されていた通りの保護のメカニズムになっていると思う。2014年のように、ひとつのエンジンメーカーが圧倒的な優位を築き、テスト走行距離やレース結果で独走する状況を防ぐためだ」
「当時は我々が有利な側だったが、今回そうした(1社独走の)状況になるのは避けたかった。特にアウディのような新規参入組や、アストンマーティンと組むホンダ、そしてもちろんレッドブルにとっても重要なことだ。これが現状であり、あるべき姿だ」
とはいえ、エンジンの出力のみで救済対象を選定し、対象メーカーにエンジン以外の開発も許可するという点にはズレがあると感じられるが、ウルフ代表は客観的なデータに基づいた判断がなされていると話す。
「私の意見としては、ニコラス(トンバジス/FIAのシングルシーター部門を統括)と話した時に、これは測定・収集されたデータに基づいているものだと感じた。そこに政治的な意図や便宜は一切なく、トルクセンサーの分析結果にすぎない。それが彼らのやり方であり、その結果がこれなんだ」
なおトンバジスは4月、追加のパラメータ導入についてFIAは前向きだったものの、チームとメーカー自身が制度をシンプルに保つことで合意していたと話している。
ただ、そういったシンプルな制度となったことによって、フェラーリの小型ターボのような要素は考慮されていない。小型のターボはスタートで有利となるが、全体的なパワーという面では劣ることになる。こういったケースであっても、単純な出力不足を理由にADUOを適用すべきなのだろうか? という疑問も湧く。
トンバジスはターボチャージャーのサイズなどの要素も計算に含める余地があるとしていたが、ウルフ代表はシンプルな制度を擁護した。複合的かつ主観的な要素を加味し始めると、最悪の場合は他カテゴリーで採用されているBoP(性能調整)のような枠組みになりかねないからだ。
「そういったものからは、F1は距離を置くべきなんだ」とウルフ代表。
「それは様々なカテゴリーで政治的な混乱を招いており、メーカーの撤退にも繋がっている」
「私はDTMやGTレース、ル・マンでそういったものを見てきた。BoPを誰かのさじ加減で決めるような仕組みにしてはならない」
「パワーユニット面で誰もが恥をかかないような微調整を行なう仕組みがあるなら、それが正しい方向だと思う」
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