F1メカ解説|シンガポール圧勝マクラーレン。”ミニDRS”話題のアゼルバイジャンに続きリヤウイングに注目!
F1シンガポールGPを圧倒的な強さで勝利したマクラーレンは、ダウンフォースレベルという面で他チームとは少し異なるアプローチを採っていたようだ。
McLaren MCL38 beam wing comparison
写真:: Giorgio Piola
ジョルジョ・ピオラ【F1メカ解説】
Analysis provided by Giorgio Piola
マクラーレンのランド・ノリスが、2位のマックス・フェルスタッペン(レッドブル)に20秒もの大差をつけて勝利したF1シンガポールGP。一時は30秒近い差を開いたこともあり、まさに圧勝という内容だった。
このシンガポールGPのマクラーレンは、その初日からリヤウイングに注目が集まっていた。1週間前のアゼルバイジャンGPで、高速走行時にフラップが動き、メインプレーンとの隙間が開くことによって空気抵抗を減らす”ミニDRS”と呼ばれたシステムを使っていたことが明らかになったからだ。
ただシンガポールGPで本当に注目すべきはそのミニDRSではなく、トレンドとは異なるダウンフォースレベルを採用したことにあったはずだ。
シンガポールでほとんどのチームは、最大量のダウンフォースレベルを採用した。しかしマクラーレンはそうはせず、少しダウンフォースを削ることを選んだ。
金曜日のFP1でマクラーレンは、2台のマシンでダウンフォースレベルを分けた。オスカー・ピアストリのマシンは最大のダウンフォースを発揮するパッケージだったが、ノリスのマシンは少しダウンフォースが削られていた。結局その後、ピアストリのマシンもノリスと同じダウンフォースレベルに変更することになった。
ライバルチームが採用したのは、モナコやハンガリーで使うダウンフォースレベル(メイン写真の◯の中)。しかしマクラーレンは、オランダGPで使ったのと同じリヤウイングを使った。ただ、さすがにそれだけではダウンフォースは足りない。そのためマクラーレンはビームウイングに変更を加え、オランダ仕様のパッケージにダウンフォースを積み増した。
シンガポールGPで使ったビームウイングは、オランダと同じ2枚の仕様だった。その2枚のうちより荷重がかかる下側のウイングはそのままだが、上部のウイングがサイズが大きくなり、ディフューザーとリヤウイングの効果をより引き上げることが目指されたのだ。
■ミニDRS論争
McLaren MCL38 rear wing
Photo by: Giorgio Piola
マクラーレンのリヤウイングは、シンガポールGPに向けて大きな話題となった。このミニDRSはアゼルバイジャンGPで明るみに出たもの。ピアストリの後方を写したオンボードカメラには、スピードが上がるにつれて、リヤウイングのメインプレーンとフラップの隙間が開いていく、その瞬間が記録されていた。
メインプレーンとフラップの隙間が広がると空気抵抗が下がり、最高速も伸びることになる。
空気抵抗を減らすために、リヤウイングが変形するようにしているのは、何もマクラーレンだけではない。ただマクラーレンが採った手法は、これまで見られたモノとは異なる、新しいモノだった。
これまでは、ウイングが後方に倒れることで前面投影面積を減らすという形が一般的であった。しかし今回のマクラーレンのミニDRSは、フラップの前端が上に持ち上がり、メインプレーンとの隙間を開けるという部分が新しいと言える。
このデバイスにより最高速が向上すると考えられるが、どの程度効果があったか現時点でも不明である。
このウイングはFIAの静的荷重テストは通過していた。しかしライバルチームの圧力もあり、この仕様のリヤウイングに修正を加えることがFIAから求められ、マクラーレンもこれに合意している。
なおラスベガスGPのコースレイアウトは、アゼルバイジャンに似ている部分もあり、同様のパッケージが功を奏する可能性がある。しかしマクラーレンは、そのラスベガスではミニDRSを使えないということになる。
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