F1メカ解説|やばいぞレッドブル! 優位性が消えたチャンピオンチーム、ライバルに追いつくために新旧パーツを続々投入する試行錯誤

レッドブルは、マクラーレンやメルセデスといったライバルに追いつくために、様々な新旧のパーツを投入し続けている。

Red Bull Racing RB20 side view comparison Hungarian GP, Dutch GP

Red Bull Racing RB20 side view comparison Hungarian GP, Dutch GP

写真:: Giorgio Piola

ジョルジョ・ピオラ【F1メカ解説】

Analysis provided by Giorgio Piola

 ここ数年は圧倒的なパフォーマンスを発揮し、F1界を席巻してきたレッドブル。昨年は22戦21勝と、年間の最高勝率記録を塗り替える、驚異的なシーズンを過ごした。

 ただ今季はその状況が一変。開幕直後こそ昨年同様の強さを見せたが、次第にマクラーレンやメルセデスがパフォーマンスを上げ、サマーブレイクを挟んで5戦連続でレッドブルが勝利を逃すこととなった。マックス・フェルスタッペンはドライバーズランキング首位を維持しているものの、マクラーレンのランド・ノリスに70ポイント差まで接近されている。またコンストラクターズランキングでは、レッドブルとマクラーレンの差はついに30ポイント。1戦で逆転してしまう可能性もあるほど、僅差に迫っている。

 先週末のオランダGPでレッドブルは、パフォーマンス的に苦悩している状況を理解するため、マシンに新旧様々なパーツを投入し、検証を行なったようだ。その一部には、かつて使っていたパーツも含まれていたという。

 そしてマシンが”ドライブしにくく”なった理由を理解するために、フェルスタッペンとチームメイトのセルジオ・ペレスのマシンのフロア構成を分け、データ収集にも徹した。

 レッドブルRB20のフロアが大きく変更されたのは、エミリア・ロマーニャGPでのことだった。この変更が最近の苦戦の要因となったのかどうか、それを理解することに集中している一方、レッドブルは他の領域でパフォーマンスを引き上げるための試みを続けている。

 ハンガリーGPでレッドブルは、フェルスタッペンのマシンにハイダウンフォース仕様のサイドポンツーンとエンジンカウルを投入した。このパッケージは高速サーキットのスパ・フランコルシャンでのベルギーGPでは一時的に取り除かれたものの、微調整を加えた上でオランダGPに再投入された。

 このわずかな調整のひとつが、リヤエンドの排熱用開口部の大きさである。オランダではこの開口部を、わずかに小さくしてきたのだった。ただこの部分は、サーキットの特性やコンディションによって変更することが可能。加えてエンジンカウルの側面に存在する冷却用パネルを交換することでも、状況に適合させることができる。

 コクピット周辺にも変更が加えられた。特筆すべきは、新たに追加されたミラーステーとフィンである。これによりチームは、車体に沿って流れる気流の挙動に、若干の調整を加えようとしている。

 これはハンガリーで初めて使われ、オランダで再び登場したサイドポンツーンとエンジンカウルの変更に対応したモノであると思われる。

Red Bull RB20 mirror comparison

Red Bull RB20 mirror comparison

Photo by: Uncredited

 配置にもいくつかの違いがある。上の写真の左側が新仕様、右が旧仕様である。

 路面に水平に設けられているミラーステーは、ミラー本体に直接接続されず、本体の内側に設けられた調整板に繋がれている(白い矢印)。これにより整流効果のあるエレメントがひとつ追加されたことになり、サイドポンツーンの上を流れる気流により積極的に関与しているのだろう。

 ミラー本体を真下から支えるステー(赤い矢印)は、以前は前後長の長いモノが使われていた。しかし最新仕様ではこの長さが短くなっており、サイドポンツーンのショルダー部分の気流に変化を加えているのだろう。

 またヘイローの付け根部分には、フェアリングの外側に小さなウイングレットがつけられていた。しかし新仕様ではこれが排除。代わりに、垂直のフィンがコクピット横の吸気口上に設けられることになった。このフィンは上半分はヘイローのフェアリングの形状に合わせて、曲線を描いている。

Max Verstappen, Red Bull Racing RB20
Sergio Perez, Red Bull Racing RB20

 なおオランダGPでレッドブルは、2台のマシンのダウンフォースレベルにも差をつけ、比較テストを行なった。

 フェルスタッペンはハンガリーで走らせたのと同じように、ハイダウンフォース仕様のリヤウイングを装着。一方でペレスは、スパと同様にローダウンフォース仕様の空力セッティングだった。リヤウイングの違いを見ると、その差は明らかだ。

Additional reporting by Jonathan Noble

 

前の記事 きっと、いつまでもF1に緊張する……ノリス、今も「レース当日はほとんど飲み食いできない」と明かす
次の記事 “壊し屋”サージェント外してルーキー起用。ウイリアムズF1のドライバー選択は理に適っているのか?

Sign up for free

  • Get quick access to your favorite articles

  • Manage alerts on breaking news and favorite drivers

  • Make your voice heard with article commenting.

エディション

日本 日本