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レッドブルが繰り返す血も涙もない決断。繰り返されるシーズン途中の非情なドライバー交代の歴史

レッドブルが、またしてもシーズン途中でのドライバーラインアップ変更を決定した。わずか20年の歴史の中で、レッドブルは何度も同じことを繰り返してきた。

Daniil Kvyat, Toro Rosso, and Max Verstappen, Red Bull in the press conference

 レッドブルが、レーシングブルズから角田裕毅を昇格させ、リアム・ローソンに代わって起用することを発表した。わずか2戦でローソンを見限ったことになる。

 2005年のF1参入の際、クリスチャン・クリエンとビタントニオ・リウッツィを併用したのを含め、レッドブルはパフォーマンスを理由に何度もドライバーを入れ替えてきたチームだ。

 次の才能を試すと言えば聞こえは良いし、その決断が大成功を収めたこともある。一方で継続性を欠いた結果、レッドブルだけでなくその姉妹チームが後退を余儀なくされたこともあった。

2006年レッドブル - クリスチャン・クリエン vs ロバート・ドーンボス

Robert Doornbos, Red Bull Racing with David Coulthard

Robert Doornbos, Red Bull Racing with David Coulthard

Photo by: Gareth Bumstead

 2005年にリウッツィとシーズンを”分担”したクリエンは、開幕戦から2戦連続入賞を果たすなどパフォーマンスを見せ、リウッツィにわずか4戦シートを譲ったのみで、2006年のシートを確保した。

 しかしチームメイトで13度の優勝経験を持つデビッド・クルサードと比べてパフォーマンスは振るわず。さらにシーズン終了前にレッドブルから提示された翌年のインディカーへの移籍を拒否。第15戦イタリアGPを最後にシートをサードドライバーのロバート・ドーンボスに譲り、レッドブルから離脱することとなった。

 インディカー行きのオファーを断ったことで、アドバイザーであるヘルムート・マルコの怒りを買ったと、クリエンはF1のポッドキャスト『Beyond the Grid』に語った。

「そのオファーにはノーと言ったんだけど、おそらくあのときの僕のミスは、オーストリアのテレビで公然とそれをやってしまったことだ」

「それがヘルムートには不評だった。そしてモンツァのレース後、彼はこう言ったんだ。『オーケー、クリスチャン。今すぐ終わりにしよう!』ってね」

 当時、トップ4以外のチームは金曜フリー走行に3台目のマシンを投入することが許されていたため、レッドブルはそのマシンに乗っていたドーンボスをレギュラードライバーに昇格させた。

 ドーンボスは残り3戦で十分な仕事をこなしたが、その後はテストドライバーに戻り、並行してチャンプカーやインディカーに参戦。特に2007年のチャンプカーでは2勝をマークし、ルーキートップとなるランキング3位を記録している。

2007年トロロッソ - スコット・スピード vs セバスチャン・ベッテル

Sebastian Vettel, Scuderia Toro Rosso

Sebastian Vettel, Scuderia Toro Rosso

Photo by: Sutton Images

 2007年シーズンはトロロッソにとって大失敗のシーズンとなった。レッドブルはスコット・スピードとリウッツィ、あるいはその両方を変えるかどうか検討していた。

 そんな中、BMWザウバーに移籍していたレッドブル育成ドライバーのセバスチャン・ベッテルが、カナダGPでのクラッシュで負傷したロバート・クビサの代役としてアメリカGPでサプライズデビューを果たした。

 インディアナポリスでベッテルは予選7番手、決勝8位となり、当時史上最年少の19歳でポイントを獲得した。そしてそれは、スピードとチームとの関係が悪化したタイミングでのことだった。そこからさらに3度のリタイアを喫したスピードにしびれを切らしたレッドブルは、ハンガリーGPでベッテルを呼び戻し、スピードの後任とした。

 中国GPで4位入賞を果たしたベッテルは、インディカーのスター、セバスチャン・ブルデーとともに翌シーズンに挑んだ。そして2008年イタリアGPでポールトゥフラッグのデビューウィンを飾ったベッテルは、2009年にレッドブルへの昇格を果たす。

 ベッテルとレッドブルは2010年から2013年にかけて、圧倒的な強さを誇り4連覇。言うまでもなく、この交代劇は大成功だった。

2009年トロロッソ - セバスチャン・ブルデー vs ハイメ・アルグエルスアリ

Jaime Alguersuari, Toro Rosso STR04

Jaime Alguersuari, Toro Rosso STR04

Photo by: Glenn Dunbar / Motorsport Images

 ベッテルがレッドブルへと昇格したこの年、ブルデーはマシンに自分のドライビングスタイルを合わせるのに苦労し、新たなチームメイトであるセバスチャン・ブエミの後塵を拝することになった。ブルデーが結果を残せず、レッドブル育成出身のブエミが堅実なデビューを飾ったことで、レッドブルはブルデーの代わりにもうひとりの育成出身者をドライバーに起用した。

 それがイギリスF3王者だったハイメ・アルグエルスアリで、19歳と125日という当時史上最年少でF1ドライバーとなった。

 経験の浅いアルグエルスアリは当初、ブルデーよりも成績が良くなかったが、2010年と2011年はブエミとともにシートをキープ。しかし両ドライバーともレッドブル昇格にふさわしいとチーム上層部を納得させることはできなかった。

 レッドブルの育成ドライバーがベルトコンベアのように待機していたこともあり、チームはダニエル・リカルドとジャン-エリック・ベルニュを2012年のドライバーとして起用することを決めた。

 最終的にアルグエルスアリは十分なパフォーマンスを見せたが、レッドブルにとってブルデーとの交代劇を引き分け以上に評価するのは難しい。

 有名な話だが、アルグエルスアリはDJに専念するため、25歳でレースを引退した。

2016年レッドブル - ダニール・クビアト vs マックス・フェルスタッペン

Christian Horner, Team Principal, Red Bull Racing, Daniel Ricciardo, Red Bull Racing, Max Verstappen, Red Bull Racing, 1st Position, and the Red Bull team celebrate his first and record breaking F1 win

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Photo by: Andrew Hone / Motorsport Images

 ベッテルとマーク・ウェーバーというコンビがレッドブルに安定をもたらしたが、それは育成ドライバーがトロロッソから昇格するチャンスがほとんどなかったことを意味する。

 2014年にダニエル・リカルドがウェーバーの後任となり、ベッテルが2015年からフェラーリに移籍すると、レッドブルの最初の支配的な時代が終わり、数人のドライバーがチャンスを求めて戦う短い過渡期が訪れた。

 当初はダニール・クビアトがトロロッソで1年戦った後にベッテルの後任となったが、カルロス・サインツJr.とフェルスタッペンという2人の若い挑戦者がすでにその座を虎視眈々と狙っていた。

 F1ドライバー最年少記録を更新する若さと経験不足にもかかわらず、フェルスタッペンはすぐに世代を超えた才能として頭角を現した。一方のクビアトが連続でベッテルと接触するなど物議を醸すと、レッドブルは2016年第4戦スペインGPを前にふたりを入れ替えた。

 すると、フェルスタッペンはメルセデス勢の同士討ちという幸運も味方に、移籍初戦で優勝。18歳7ヵ月15日での勝利は、F1最年少記録となっている。

 その後、ベッテルの成功を再現するようにチャンピオン4連覇を果たしているフェルスタッペンをいち早くトップチームに引き上げたという点で、この交代は成功だったと言える。

2017年トロロッソ - ダニール・クビアト vs ピエール・ガスリー vs ブレンドン・ハートレー

Pierre Gasly, Scuderia Toro Rosso and Brendon Hartley, Scuderia Toro Rosso

Pierre Gasly, Scuderia Toro Rosso and Brendon Hartley, Scuderia Toro Rosso

Photo by: Sutton Images

 自信と調子を取り戻すため、フェルスタッペンと入れ替わりでトロロッソに戻ったクビアトだったが、フェルスタッペンとリカルドがレッドブルで強力な布陣を敷いたため、クビアトはトロロッソから昇格できずにいた。また成績もサインツJr.と比べて振るわず、シートが危機に瀕した。

 一方、GP2チャンピオンのピエール・ガスリーはF1デビューを目指す次の候補となった。スーパーフォーミュラに参戦しながら、チャンスを探ることになったのだ。

 そしてガスリーはクビアトの代わりにマレーシアGPでF1デビュー。日本GPもトロロッソからF1を戦ったが、スーパーフォーミュラ最終戦のためアメリカGPは欠場。このレースでは再びクビアトが起用された。

 しかしルノーでもシーズン中のドライバー交代劇が発生。ジョリオン・パーマーの後任としてサインツJr.がルノーに移籍したこともあって、ブレンドン・ハートレーがアメリカ以降のレースで起用されることに。ガスリーがチームに戻ったことで、クビアトが弾き出されてしまった。

 ハートレーはチームでの地位を確立することはできなかったし、ガスリーは一度レッドブルに昇格しながらも、トロロッソからアルファタウリへと名前を変えたチームに出戻っている。彼が2020年イタリアGPで勝利し、今やアルピーヌでチームリーダーになっていることを考えても、三つ巴のシート争いは成功とは言えないだろう。

2019年レッドブル - ピエール・ガスリー vs アレクサンダー・アルボン

Max Verstappen, Red Bull Racing, Alex Albon, Red Bull Racing

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Photo by: Andy Hone / Motorsport Images

 2019年はリカルドがルノーに移籍したため、レッドブルは手強いドライバーに成長したフェルスタッペンのために新たなチームメイトを必要としていた。

 レッドブルはその解決策としてガスリーを起用したが、リカルドがフェルスタッペンを僅差まで追い詰めたのに対し、ガスリーはより厳しい戦いを強いられ、予選ではフェルスタッペンに平均で1周あたり0.5秒以上の差をつけられた。

 ガスリーの不本意なパフォーマンスが続く中、レッドブルは夏休み明けのベルギーGPを前にトロロッソからF1デビューしたばかりのアレクサンダー・アルボンと入れ替えることを決めた。

 しかし、ガスリー以上に経験の浅いルーキーのアルボンは、フェルスタッペンのドライビングスタイルに合わせた扱いにくいマシンでフェルスタッペンのペースについていけず、苦戦を強いられた。

 結局、アルボンは2020年末にシートを失い、今はウイリアムズの重要な柱となったが、ガスリーとの入れ替え自体は失敗だったと言える。

2023年アルファタウリ - ニック・デ・フリーズ vs ダニエル・リカルド

Nyck de Vries, Scuderia AlphaTauri

Nyck de Vries, Scuderia AlphaTauri

Photo by: Mark Sutton / Motorsport Images

 ガスリーがレッドブルで12戦しか戦わなかったことがレッドブル・ファミリーの2チームにおける新記録だとすれば、その不名誉な記録は2023年にニック・デ・フリーズによって破られたことになる。

 デ・フリーズは、レッドブルのジュニアチームであるアルファタウリがドライバー不足(自業自得とも言えるが)により苦境に立たされる中、育成プログラム外から起用されたドライバーだった。

 デ・フリーズは2022年イタリアGPで虫垂炎に見舞われたアルボンの代役として、ウイリアムズからF1デビュー。ここで9位ポイント獲得を果たして注目を浴び、アルファタウリへと加わった。

 しかしデ・フリーズは、チームメイトの角田裕毅に匹敵するパフォーマンスを見せられず、クラッシュもあってプレッシャーをかけられるように。結局大きく改善することができなかったデ・フリーズは、10戦を終えたところで不本意な形で解雇された。

 その後任は、F1シートを失いレッドブルのサードドライバーを務めていたリカルドが務めることになった。

 だがそのリカルドも、オランダGPのフリー走行で手を骨折したことで5レースを欠場。デ・フリーズよりも明らかに良いパフォーマンスを発揮したものの、フェルスタッペンのチームメイトとしてレッドブルに復帰することをチーム上層部に納得させることはできなかった。そしてリカルドも、2024年シンガポールGP後に解雇されている。

2024年RB - ダニエル・リカルド vs リアム・ローソン

Liam Lawson,VCARB

Liam Lawson,VCARB

Photo by: Erik Junius

 ローソンは2023年オランダGPで負傷したリカルドの代役として、F1デビューを果たしたレッドブル育成の注目株だった。

 2024年は一旦リザーブドライバーに戻ったローソンだったが、レッドブル昇格に足る実力を見せられなかったリカルドに代わって、2024年のシーズン終盤6レースを戦った。

 ローソンはチームメイトの角田裕毅と互角に近い走りを見せ、フェルスタッペンについていけず苦戦するセルジオ・ペレスのシート争いに加わるチャンスを角田と競った。

 オフシーズンにセルジオ・ペレスとレッドブルの契約解除が決まると、レッドブルは最終的にその後任として経験豊富な角田ではなく、ローソンを起用することを決めた。

 レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表は、ローソンは経験こそなくとも、レッドブルのプレッシャーに対処する適性を持っており、より大きなポテンシャルを秘めていると評価した。

 しかし2戦続けて悲惨な結果に終わったローソンを、レッドブルは早々に見限った。レッドブルは決断を撤回し、チームの歴史の中でも最も冷酷なドライバー入れ替えを決定したのだ。

2025年レッドブル - リアム・ローソン vs 角田裕毅

Yuki Tsunoda, Redbull RB20

Yuki Tsunoda, Redbull RB20

写真: Red Bull Content Pool

 2021年にF1デビューして以来、レッドブルの姉妹チームに所属してきた角田にとって2025年はレッドブル昇格の大チャンスだったが、前述のようにレッドブルが選んだのはローソンだった。

 この決断には疑問の声も多く挙がったが、角田は腐らずに「より完璧なドライバー」を目指すと語り、5年目のシーズンに臨んでいた。

 すると開幕戦オーストラリアGPの予選でいきなり5番グリッドを獲得。チームの戦略ミスもありレースでは結果を残せていないものの、予選では安定してトップ10入りしており、鮮烈な印象を周囲に与えた。

 一方でローソンが大不振に陥っていたこともあり、レッドブルは異例の決断を下すことになった。

 レッドブルRB21は扱いづらいマシンだと評されている。移籍初戦がいくら勝手知ったる鈴鹿が舞台の日本GPだからといって、一筋縄ではいかないだろう。

 これまで見てきたように、レッドブルが下したドライバー交代劇の”勝率”は決して高くない。今回の決断を成功に導き、袋小路に迷い込みかけていた自身のF1キャリアを救えるかどうかは、角田がどんなパフォーマンスを見せられるかにかかっている。

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