F1メカ解説|最強レッドブル、その止まらない創意工夫……サウジアラビアでは冷却用パネルの調整で、最高速を確保
レッドブルがF1サウジアラビアGPで支配的な強さを見せたのは、ライバルに対して直線スピードの優位性が優れていたからだと言える。
ジョルジョ・ピオラ【F1メカ解説】
Analysis provided by Giorgio Piola
レッドブルは先日行なわれたF1サウジアラビアGPでも完璧な強さを見せ、1-2フィニッシュを達成した。これで開幕戦バーレーンGPに続き、2戦連続の1-2フィニッシュ。ダブルタイトル3連覇に向けて死角はまったくなしといった状況だ。
そのレッドブルのサウジアラビアGPでの強さの秘密は、直線スピードにあった。
予選中スピードトラップで最も速かったのはハース勢で、ニコ・ヒュルケンベルグが338.3km/hを記録して最速。チームメイトのケビン・マグヌッセンも334.7km/hであり、ハースが1-2を占めた。
それに続いたのがレッドブルRB20を駆ったマックス・フェルスタッペンで、333.1km/h。チームメイトのセルジオ・ペレスも、8番手ながら332.1km/hを記録している。
しかもハースは直線スピードに振ったセッティングであったものの、レッドブルは最高速を伸ばしながらもダウンフォースをしっかりと発揮できており、コーナリングスピードも十分に高かった。つまり高速性能とコーナリング性能を、高い次元でバランスさせることができていたと言える。
ダウンフォース、そして空気抵抗のレベルは、リヤウイングの大きさに左右されることが多い。しかしサウジアラビアで特に興味深かったのは、レッドブルはRB20のボディワークを変更することで、その目的を達成するように見えたことだ。
彼らはボディワークの冷却用開口部を脱着することで、空気抵抗を調整していたようだ。この冷却用の開口部が少なければ空気抵抗が減ることになり、その分最高速を高めることができるわけだ。
レッドブルはRB20を巧みに設計。エアボックスこそオーソドックスなデザインであるが、細長い縦と横方向のインレットを設けたサイドポンツーン、そしてヘイローの内側に存在するシュノーケル状の開口部……これらをうまく使うことで、違いを生み出している可能性がある。
Red Bull RB20 cooling comparison
Photo by: Giorgio Piola
しかしそれだけではない。通常のエンジンカウルのリヤエンドの排熱用開口部に加え、様々な熱を遮断する選択肢がある。
例えばエンジンカウルの両側面には、ルーバーパネルが設けられているが、サウジアラビアGPではこれを完全に閉じることができることが分かった(白い矢印で示した部分)。
またエンジンカウルの上面、砲塔のようになっている膨らみとエンジンカウルの間にも開口部が設けられており、これもパネルを用いて開いたり閉じたりできる。
Red Bull RB20 rear wing comparison
Photo by: Giorgio Piola
レッドブルが採用した低ダウンフォースレベルのリヤウイングに関しては、ダウンフォースと空気抵抗を減らすために全てがパワーダウンされているものの、バーレーンで使われたハイダウンフォース仕様のリヤウイングとほぼ同じ機能を持っていた。
上の写真の上側がバーレーンGP仕様、下がサウジアラビアGP仕様である。
スプーン状のメインプレーンの中央部分は上方に向けて持ち上げられており、許容される領域内の占有スペースを削減。その結果、翼端板へ向かう角度が緩やかになった。またフラップは薄いモノになっており、ここでも空気抵抗を削減している。
この処理は、メインプレーンに対するフラップの大きさの比率を管理することで、DRSを使った時に最高速度が十分に上がるようにすることを目指したものである。
なおフラップ中央部の後端にある切り欠きは、サウジアラビアGPの方が小さくなっているのは興味深い。そして、いずれのタイプにも後端にガーニーフラップが取り付けられている。
Red Bull RB20 beam wing comparison
Photo by: Giorgio Piola
リヤウイングの変更に伴い、レッドブルは発生する荷重を軽減することを目的とした新しい構成のビームウイングも採用した。
2枚あるビームウイングは、いずれも角度が薄くなり、上方のフラップは特に薄くなっている。この上方のフラップは、バーレーンGP仕様(上)では車体中心線をまたいで左右のフラップが連続して存在している。しかしサウジアラビアGP仕様は、左右がそれぞれ独立して存在。直接後部の衝撃吸収構造に接続された。
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