分析
F1 オランダGP

イス取りゲームは最終局面に。2025年のF1に向けて残る”3席”を誰が掴む? 最新ドライバー市場動向

F1で各チームの2025年のシートはその大半が決定済みとなった。アルピーヌの1席が決まった今、残り3つのシートの動向がどうなっているのか、改めて確認しよう。

Nico Hulkenberg, Haas VF-24, Valtteri Bottas, Stake F1 Team Kick Sauber C44, and Zhou Guanyu, Stake F1 Team Kick Sauber C44, take their grid spots

 アルピーヌは先日、ジャック・ドゥーハンを2025年のF1ドライバーとして適用することを発表。これで来季の未定シートは3つとなった。それらのシートの状況を改めて確認しよう。

 未定となっているのは、メルセデス、RBそしてザウバー/アウディのそれぞれ1席だ。

 しかし、そのうちメルセデスとRBは実際のところ大筋では決まっているようなものと言える。

 ルイス・ハミルトンの後任を探しているメルセデスは、育成ドライバーのアンドレア・キミ・アントネッリ昇格がほぼ確実という状況だ。早ければ9月のイタリアGPで正式発表が行なわれる可能性があり、そこではアントネッリがメルセデスからFP1に出走する予定でもある。

 そしてRBひいてはレッドブル陣営は、メルセデスより流動性があるものの、問題は結局のところ陣営内部での話であって、部外者が立ち入る余地は無いと言える。

 レッドブルのモータースポーツアドバイザーであるヘルムート・マルコはオランダGP前に、リザーブドライバーであるリアム・ローソンが2025年にレッドブル陣営から参戦する旨を語った。

 これの意味するところは、セルジオ・ペレス(レッドブル)かダニエル・リカルド(RB)のどちらかがシートを譲らなくてはならないだろうということだ。

Liam Lawson, Reserve Driver, Visa Cash App RB F1 Team, with Helmut Marko, Consultant, Red Bull Racing, Peter Bayer, CEO, RB F1 Team

Liam Lawson, Reserve Driver, Visa Cash App RB F1 Team, with Helmut Marko, Consultant, Red Bull Racing, Peter Bayer, CEO, RB F1 Team

Photo by: Andrew Ferraro / Motorsport Images

 ペレスとリカルドは共に今季前半戦でシートが不安視されていたが、結果的に夏休み後も続投が決定された、しかし来年のシートを確保するためには、今後のレースで進歩を示さなくてはならないはずだ。そして、それはドライバーも十分に認識している。

「まだ、パフォーマンスが僕の親友だということは分かっているよ」とリカルドは言う。

「そして自分ができると分かっていること、(自分の)能力を発揮することができれば、来年もファミリーのどこかに残ることができる。そのことに集中しないとね」

「リアムについて言えば、(昨年のオランダGPでリカルドが負傷し、代役として)彼がマシンをドライブするのを見ることができた」

「彼はグリッドにいる価値があると思う。ある意味、彼のためにハッピーだよ。もし彼が来年のシートを保証されるなら、それはいいことだと思う」

「でも、僕にとってはどうなんだろう? さっきも言ったように、多分少し未知数なことだけど、もし僕がパフォーマンスを発揮すれば、きっとどこかで僕のポジションを見つけてくれると思う」

 なおローソンとレッドブルの契約は、2025年に陣営がローソンにF1シートを提供できなければ解除になると見られている。それはリカルドも認識していることだ。

Daniel Ricciardo, Visa Cash App RB F1 Team

Daniel Ricciardo, Visa Cash App RB F1 Team

Photo by: Sam Bloxham / Motorsport Images

 一方で、レッドブル陣営にはローソンをローン契約で他チームに貸し出すという選択肢もあり、レッドブルのクリスチャン・ホーナー代表も、それを示唆した。

 ホーナー代表はマルコによる”ローソンシート確約”発言について訊かれた際、次のように語った。

「彼(マルコ)に尋ねたんだ。彼ははっきりと、来年F1でドライブするだろうと言っていた。我々はレンタルすることもできるし、何も決まっていない」

「もし我々がリアムのオプションを選ばなかったなら、彼は2025年に向けてフリーのドライバーになる。ドライバー契約には特定の期間があり、それは一般的なものだ」

 ローソン獲得については、今年はじめの段階で、ザウバー/アウディが興味を示していたと見られている。ただ陣営の上層部交代の混乱が起こる前に、ローソンという選択肢は立ち消えていた。

 しかし今、レッドブルのスポーティングディレクターを務めていたジョナサン・ウィートリーがザウバー/アウディの新チーム代表として契約を結んだことが、再び議論を活発にさせる要素となった。当然、ウィートリーはローソンの強みなどを良く知っているからだ。

 なおザウバー/アウディがニコ・ヒュルケンベルグのチームメイトとして、ローソンのような若手を狙うか、それともより経験豊富なドライバーを望むのかどうかは、プロジェクト責任者となった元フェラーリのマッティア・ビノットの考えに左右されるはずだ。

 もしザウバーが後者を選択するならば、その第一候補は現在もチームで走るバルテリ・ボッタスだ。実際、ボッタスはビノットと新たに交渉を行なっていると理解されている。

Valtteri Bottas, Stake F1 Team KICK Sauber C44

Valtteri Bottas, Stake F1 Team KICK Sauber C44

Photo by: Sam Bloxham / Motorsport Images

 まだ決定は下されていないものの、ボッタスはトップが交代して以降の交渉は、以前よりも前向きな兆候があると感じている。

「ここ6ヵ月ほど、僕は最優先対象ではないように感じられていた」

 ボッタスはオランダGPの際にそう語った。

「言うまでもなく、僕の前に契約したドライバーがひとりいるわけで、チームと経営陣は、時にコミュニケーションがほぼ無いまま、あらゆる選択肢を探していた。でも今は少し違ってきているようだ」

「明らかなリセットがあって、今は首脳陣で誰が何をするかという明確な構造がある。これはポジティブなことだと思うよ」

「マッティアはとても成功を収めてきたチームからやってきた。彼はいいチームが何を本当に必要としているかを知っているし、それはチームの将来にとっても良いことだと思う」

「もちろん、最終的な決定を下すのは彼らだ。全ての選択肢を評価しているのは間違いない。ただ僕は強力なポジションにいるべきだと思っている。マッティアとアウディ次第なのは明らかだけどね」

 そういったこともあり、残り少ないシートを巡るドライバー市場の動きは、話題の中心となりそうなスイス・ヒンウィルへと注目が集まっている。ザウバーそしてアウディがどんな判断を下すのか、しばらく目が離せないこととなりそうだ。

 

前の記事 F1メカ解説|ほろ苦デビューとなったウイリアムズのアップデート。しかしその効果は確認済み……軽量化がさらに進んだ?
次の記事 岩佐歩夢が地元・大阪に凱旋! 本人プロデュースイベントがららぽーと門真で9月7日開催……イベント詳細が決定

Sign up for free

  • Get quick access to your favorite articles

  • Manage alerts on breaking news and favorite drivers

  • Make your voice heard with article commenting.

エディション

日本 日本