【F1メカ解説】ただでさえ難しかったスパ・フランコルシャンのダウンフォース選択……ウエットコンディションでさらに複雑に

超高速の直線区間と、ダウンフォースが要求される区間が組み合わされているスパ・フランコルシャンは、ウイングレベルの設定が非常に難しい。しかも今年のように雨絡みとなると、その複雑さはより増すことになる。

【F1メカ解説】ただでさえ難しかったスパ・フランコルシャンのダウンフォース選択……ウエットコンディションでさらに複雑に

 ベルギーGPの舞台であるスパ・フランコルシャンは、ケメルストレートを代表とする超高速区間、そして第2セクターを中心とするダウンフォースを必要とするコーナリング区間という、ふたつの特性を兼ね備えたコースだ。

 かつて同サーキットは、鈴鹿と並びしっかりとダウンフォースを発生させなければ攻略できないコースと言われていた。しかし今では、F1マシンの絶対的なグリップ力が増したこともあり、ローダウンフォースで走る”超高速コース”と言えるような存在となった。事実、オーバーテイクが比較的容易なケメルストレートでの最高速を引き上げるべく、多くのマシンが薄いリヤウイングを使うようになり、逆にダウンフォースが必要とされる区間では、その状態で対処する方法が探られてきた。

 ただ今年のベルギーGPは、事前の段階から悪天候に見舞われる可能性が指摘されていた。ウエットコンディションとなれば、当然マシンを路面にさらに強く押し付けるべく、ダウンフォースを増やしたいところ。しかしそれを重視しすぎてしまえば、空気抵抗も増えてメインストレートでの最高速に影響を及ぼす。特に今季のタイトルを争うレッドブルやメルセデスにとっては、無視できないことだった。

 さらにタイヤに負荷がかかりすぎると、摩耗を早めてしまうことに繋がり、レース中のスティントの長さに影響を及ぼしてしまう可能性もあった。

Red Bull Racing RB16B rear wing comparison

Red Bull Racing RB16B rear wing comparison

Photo by: Uncredited

 そのような複雑な状況下において、レッドブルとメルセデスは、異なるアプローチを取った。

 メルセデスは金曜日に様々な選択肢を試した。一方でレッドブルは、当初は通常のスパ仕様と見られるウイングをつけていたが、FP3ではマックス・フェルスタッペンのマシンに、通常はモンツァで使うことになるはずの非常に薄いリヤウイング(上)を取り付けた。

 メインプレーンがスプーン形状であるのは、通常とはあまり変わらない。しかしその翼端板への取り付け部分は高い位置になっている……つまり、ウイングの前面投影面積は小さくなっているはずだ。また、翼端で発生する渦も減らされているはずだ。

 しかし雨が降ったことにより、チームは変更を加えなければならなくなった。結局はより大きなダウンフォースを発生させるため、フェルスタッペンのマシンのフラップ後端には、ガーニーフラップが取り付けられることになった。一方のペレスのマシンは、決勝レースに向かうレコノサンスラップでダメージを負い、スタート遅延の間に修復されるその時まで、ガーニーフラップなしで走り続けることになった。

Red Bull Racing RB16B rear wing comparison

Red Bull Racing RB16B rear wing comparison

Photo by: Giorgio Piola

 メルセデスは、FP1でボッタスのマシンにローダウンフォース仕様のリヤウイングを取り付け、その評価を行なった。しかしその後、より高いダウンフォースレベルのウイングに変更することになった。ルイス・ハミルトンは、週末を通してこのダウンフォース発生量の多いリヤウイングを使った。

 ただ予選で悪天候が近づくと、チームはフラップの後端にガーニーフラップを装着した。このガーニーフラップは、空気抵抗の増加量をできるだけ少なくして、バランスを取るのを手助けするのだ。

Mercedes W12 rear wing comparison

Mercedes W12 rear wing comparison

Photo by: Giorgio Piola

 その他のチームも、スパ・フランコルシャンに最適なパッケージを模索するべく、試行錯誤した。

 アストンマーチンは、独自の”ローダウンフォース仕様”パッケージを、ベルギーGPに持ち込んだ。彼らは他チームのようにリヤウイングを変更するわけではなく、フロントウイングに斬新なソリューションを投入した。

 アストンマーチンはフロントウイングの最も上のフラップ後端に直線的な切り欠きを設けてきたのだ。

Aston Martin AMR21 front wing detail

Aston Martin AMR21 front wing detail

Photo by: Giorgio Piola

 チームはここ数年、フロントウイングのデザインを、エリアごとに分けてきた。例えば最も外側の部分は、いわゆる”アウトウォッシュ”を生み出すのに活用されてきた。つまり気圧の差を利用してフロントタイヤの前面に向かう気流を外に向け、空気抵抗を減らそうとしているのだ。

 今回チームが投入したソリューションは、フラップの角度を変更した際に、他の部分のセットアップとバランスを取るためのモノである可能性もある。しかしその一方で、必要なだけのアウトウォッシュの効果をしっかりと引き出しつつ、ダウンフォースレベルを調整する機能があるのかもしれない。

Lance Stroll, Aston Martin AMR21

Lance Stroll, Aston Martin AMR21

Photo by: Jerry Andre / Motorsport Images

 もちろんアストンマーチンも、ローダウンフォース仕様のリヤウイングを用意してきた。フラップとメインプレーンは共に薄く、そしてシンプルな形状になっており、フラップの後端にはガーニーフラップが取り付けられて、バランスを取っていると考えられる。

Lance Stroll, Aston Martin AMR21

Lance Stroll, Aston Martin AMR21

Photo by: Charles Coates / Motorsport Images

 悪天候によりレースのスタートが遅れている間に、チームはピットレーンで、ランス・ストロールのリヤウイングを、より大きなダウンフォースを発生するスプーン形状のリヤウイングに変更した。

 このウイング変更は、パルクフェルメルールを破ったとして、10秒のタイム加算ペナルティが科されることになったが、もしレースが行なわれていれば、ストロールがポジションを上げていくのに大きく役立った可能性がある。

Sparks kick up from Daniel Ricciardo, McLaren MCL35M

Sparks kick up from Daniel Ricciardo, McLaren MCL35M

Photo by: Jerry Andre / Motorsport Images

 マクラーレンは、以前使用したローダウンフォース仕様のリヤウイングを装着。この写真は、ウイングの後方に発生する翼端渦の姿をうまく撮影している。

Charles Leclerc, Ferrari SF21

Charles Leclerc, Ferrari SF21

Photo by: Jerry Andre / Motorsport Images

 フェラーリSF21は比較的高いダウンフォースレベルのリヤウイングで走っていたため、翼端渦がよりはっきりと見える。

Fernando Alonso, Alpine A521

Fernando Alonso, Alpine A521

Photo by: Jerry Andre / Motorsport Images

 アルピーヌは、緩やかなスプーン形状を特徴とする、ローダウンフォース仕様のリヤウイングを使った。これも翼端渦が確認できる。

Alpine A521 rear detail

Alpine A521 rear detail

Photo by: Uncredited

 またアルピーヌは、リヤウイング翼端板の剛性を確保するため、補強用の構造物が追加されている。

Pierre Gasly, AlphaTauri AT02

Pierre Gasly, AlphaTauri AT02

Photo by: Jerry Andre / Motorsport Images

 アルファタウリのローダウンフォース仕様のリヤウイングは、前面投影面積が小さいだけでなく、フラップの翼端部分上部が切り取られ、後方に発生する渦の形状を変更している。

Nicholas Latifi, Williams FW43B

Nicholas Latifi, Williams FW43B

Photo by: Jerry Andre / Motorsport Images

 ウイリアムズは、ライバルチームと比較して、高めのダウンフォースを発生するリヤウイングを搭載することを選択した。これにより、特にコーナリングスピードが重要になるセクター2では強さを発揮するだろうが、もし仮にレースがスタートしていた場合には、ストレートで脆弱さを露呈することになったかもしれない。

Alfa Romeo Racing C41 detail

Alfa Romeo Racing C41 detail

Photo by: Uncredited

 アルファロメオも、大きめのリヤウイングを採用したチームのひとつだ。当初は存在しなかったガーニーフラップが、予選前にはフラップ後端に取り付けられることになり、さらに大きなダウンフォースを追求することになった。

Mick Schumacher, Haas VF-21

Mick Schumacher, Haas VF-21

Photo by: Jerry Andre / Motorsport Images

 ハースは、セクター2でマシンを安定させるため、グリッド上で最も大きなダウンフォースレベルのリヤウイングを採用した。しかしその代償として、セクター1とセクター3で、最高速が伸びなかったのは明らかだ。

 

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