ドライバーやファンから批判を受けるF1の国際映像……彼らはどんな想いで中継を作っているのか? 担当ディレクター語る「最も重要なのはコース上のアクション」
F1の放送/メディア担当ディレクターのディーン・ロック氏が、motorsport.comの独占インタビューに応じ、F1の放送に関する批判に反論した。
今年のF1シンガポールGPの決勝レースで、アストンマーティンのフェルナンド・アロンソは、ピットストップが遅れたことにより8番手から15番手に後退し、無線で不満を訴えた。エンジニアのアンドリュー・ウィザードが「残り34周だ」と伝えると、アロンソは「毎周話しかけるなら無線を切るぞ」と反論した。
アロンソはこの無線でのやりとりが注目を集めたことについて快く思っておらず、自身のSNSにこう投稿した。
「プライベートの無線に関するポールポジションを確保した今、メインの放送を微調整し、コース上で起きている興奮をファンにもっと届ける時が来たぞ!」
アロンソの不満は収まらず、メキシコシティGPでも続いた。彼はスタート直後のターン1で、多くのドライバーがコースをショートカットしたにもかかわらず、ポジションを落とすことなくコースに戻ったことに不満を訴えた。
「彼らは僕らにやったように、無線を全て放送すべきだ」
メキシコシティGPの1周目の後、アロンソはそう語った。
「彼らがこれを放送して、ターン1〜2も見てくれるといいんだけどね。おーい? ターン1〜2のシーンは放送されなかったのか?」
アロンソのこのコメントは、実際には生中継映像には載せられなかった。
Fernando Alonso had het idee dat vooral zijn boordradio's werden uitgezonden.
Foto door: Zak Mauger / LAT Images via Getty Images
F1の放送・メディア担当ディレクターであるディーン・ロック氏はmotorsport.comのインタビューに応じた際、F1放送チームは「ドライバーの代弁者ではない」と反論した。
「我々はストーリーを公正かつ正確に伝える責任がある。だから誤解を招くような内容や、意図の異なる内容は一切放送しない」
そうロック氏は語った。
「フェルナンドは素晴らしいドライバーだ。彼があのマシンに乗って出来たこと、それについて考える時間を持てたことについては、称賛に値する。しかし我々は、彼の代弁者ではない」
「我々の目標は、物語において誠実であり続け、ファンを巻き込むことだ」
「どんなストーリーを伝えられるか、ふたりのチームメイトの視点からレースをどう表現できるか、という点は素晴らしいことだ。しかしドライバーが、事実を全て把握せずにチームを批判することもあるので、注意が必要だ」
「そして誤解を招かないように注意しなければいけない。興奮をもたらし、ファンをコクピットに誘い込み、ドライバーの真の姿を見せたいと思っている。ただやり過ぎたり、センセーショナルにしたりしてはいけない」
「フェルナンドが以前は、無線でイタリア語を話していたのを覚えている。字幕を全て英語にしたら、彼はそうしなくなった。だから確かに、そういうことには別の意図が隠されていることもある。我々は賢明に対処するように努めている」
■ドライバーからのフィードバック
Carlos Sainz was van mening dat de F1-regie de baanactie uit het oog verloren was.
Foto door: Sam Bloxham / LAT Images via Getty Images
F1の放送に批判的なドライバーは、アロンソだけではない。アロンソの同胞であるカルロス・サインツJr.(ウイリアムズ)も、シンガポールGPの後に放送を批判した。
サインツJr.は、F1のテレビ放送で「有名人やドライバーの恋人たち」に頻繁にカメラが向けられることに不満を示した。そしてそれがレース展開を伝えることを阻害していると訴えたのだ。
シンガポールGPでサインツJr.は、実に5回ものオーバーテイクを成功させたが、そのほとんどが放送に映されなかった。そしてこのサインツJr.の発言をきっかけに、F1の放送を作り上げるF1メディア・テクノロジーセンターと、グランプリ・ドライバーズ・アソシエイション(GPDA)との連携、そしてチームやドライバーは放送に関してどんなフィードバックを提供しているのかという点が注目された。
「良い質問だね。彼らは、例えばビープ音を鳴らしたり、ミュートしたり、フィルターをかけたりといった、我々が持っている選択肢について、実際には知らなかったんだ」
ロック氏はそう説明した。
「約1年前、ドライバーズブリーフィングに出席し、車載無線の仕組みを説明した。我々はドライバーを守り、彼らがアスリートとしてどれほど素晴らしいかを、可能な限り最高の形で示そうとしていることを理解してもらうためだ」
ロック氏は、チームやドライバーの周囲の人たちから、F1の放送に関するフィードバックを時々受けることはあるものの、頻繁ではないと明かした。
「その件に関するコメントの一部は、少し文脈から外れていると思う」
ロック氏はサインツJr.の批判についてそう付け加えた。
「例えばあのレースでは、レース中にコース外の映像を3回流した。しかしそれは、レース中のバトルの最中ではなかった。我々には、イベント全体の雰囲気を伝える責任がある。コース上だけでなく、コースの周辺で何が起きているかを伝える責任がある。グリッド、ファン、そしてレース後の表彰台の映像も含まれる」
このことは、F1の報道が多様な視聴者に訴求力を持つようにするためだと、ロック氏は説明する。彼によれば対象となる視聴者は、純粋にレースだけを楽しむ人たちだけではなく、「レースにまつわるあらゆる体験」を味わいたい人も含まれるという。
「もしサーキットを走るマシンのクローズアップだけを映したら、どのサーキットにいるのかさえ分からなくなってしまうだろう」
「幸いなことに、多くのサーキットには独特の雰囲気がある。アブダビ、オースティン、モンツァなどを考えてみて欲しい。我々はそういうサーキットの雰囲気を伝える必要がある。サッカーのようなスタジアムスポーツでは、そういう雰囲気はあまり感じられないだろうからね」
「マンチェスター・ユナイテッドのスタジアムでも、他の多くのスタジアムと見た目は似ている。しかしF1のイベントは、それぞれが独自の特徴を持っている。だからこそあらゆる方法で、できる限り最高の形でイベントを捉えなければいけない。しかし根本にあるのは、コース上でのアクションだ。それが全てだ。アクションが激しいほど、より良いモノになる」
■チャンピオン争いに集中
De F1-regie bekeek al vóór de start van de race in Mexico de beste opties om de chaos in bocht 1 vast te leggen.
Foto door: Bryn Lennon / Formula 1 via Getty Images
シーズン閉幕に近づくにつて、F1首脳陣が考えなければいけないのは、タイトル争いの行方だ。
「マクラーレン勢を中心に、現在は激しいバトルが繰り広げられている。我々はその流れに完全に集中し、ファンにそれをうまく伝えなければいけない」
そうロック氏は説明する。
「しかし繰り返しにはなるが、最優先事項はコース上で起きているアクションだ。しかし多くのことが同時に起きることもあるため、我々のチームは毎週、どうすればそれを最も効果的に表現できるかを模索し、懸命に取り組んでいる」
これはレース中だけでなく、レース前にどう準備するかということにもかかっている。メキシコシティGPを例に挙げ、ロック氏は次のように語った。
「例えばメキシコの1コーナーでは、何かが起きる可能性があった。だから多くの議論をしたんだ」
「そこで問題になったのは、ランオフエリアも映せるように、カメラの画角を広くすべきかどうかだった。我々のディレクターとプロデューサーは全員フルタイムで働いているので、各レース後に何がうまくいったのか、何を改善できるのかを評価できるようになっている」
またコース上で起きる様々なバトルを追うことができるように、ワイプを入れるなど、いくつかの改良を行なったという。例えばメインの画面ではバトルのリプレイを流し、小さいワイプ画面では、現在進行形のバトルを追うといった具合だ。
「今年導入した革新のいくつかは、より多くのバトルとストーリーを、同時に見せるのに役立つ」
「予選が良い例だ。現在は3つの独立したタイムクロックがあり、画面左側のバーを使って、Q3の最終ラップで僅差でタイムを刻む10人のドライバーのストーリーを同時に伝えることができる」
「ピクチャー・イン・ピクチャーなどの技術も同様だ。これにより、たとえ首位を静かに走っているドライバーがいたとしても、他のドライバーのストーリーを追うと同時に、時折首位のドライバーの姿を伝えることもできる。伝えるストーリーが豊かであればあるほど良いのだが、コース上でのアクションは常に最も重要なのだ」
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