角田裕毅の将来を脅かす存在……F1初表彰台のアイザック・ハジャー、レッドブル昇格の時が迫っているのか?
F1オランダGPで初の表彰台を獲得したアイザック・ハジャー。彼が2026年シーズンにレッドブルへ昇格する可能性は高まっているのか?
写真:: Piotr Zajac / NurPhoto via Getty Images
F1オランダGPでは、レーシングブルズのアイザック・ハジャーが3位表彰台を獲得した。彼が来季レッドブルでマックス・フェルスタッペンのチームメイトとなる“有力候補”だったとするならば、ザントフールトでの活躍は彼をいよいよ“本命”へと押し上げるものになっただろう。
ハジャーは昨年のF2でランキング2位となり、今季からレッドブルの姉妹チームでF1デビューを果たした。一方でレッドブルは、セルジオ・ペレスを昨年限りで放出し、リアム・ローソンを後任として昇格させた。しかし成績不振により、開幕2戦限りで角田裕毅と交代させられるなど、慌ただしい動きを見せた。
その速さを評価されながらも、果たしてF1昇格に向けた準備が整っているのかという懸念もあったハジャー。本人もF1デビューが決まる前、motorsport.comに「F1でのテスト経験が少なすぎるので、自分が準備できているかどうかは分からない」と漏らしていたほどだが、今やその懸念は完全に払拭された。開幕戦こそフォーメーションラップで痛恨のリタイアを喫したが、その後はコンスタントに入賞し、現在ランキング10番手。F3やF2の時代に見せた無線での激昂も鳴りをひそめた。
ハジャーの急成長はレッドブルにとって朗報だ。なぜなら、フェルスタッペンの長期的なチームメイト探しはいまだ続いているからだ。2戦で降格させられたローソンはその後レーシングブルズで持ち直してはいるものの、すぐに再チャンスを与えられる可能性は低そうだ。
レッドブルのローレン・メキーズ代表、そして相談役のヘルムート・マルコ博士にとっての最大の問題は、角田裕毅の処遇をどうするかだ。角田はレッドブル昇格後9ポイントしか獲得できておらず、ランキングは19番手。その下にいるのはアルピーヌのセカンドシートに座ったジャック・ドゥーハンとフランコ・コラピント(いずれも無得点)だけだ。一方でチームメイトのフェルスタッペンは205ポイントを稼ぎ、ランキング3番手に位置している。
同じ過ちを繰り返さないこと
写真: Kym Illman / Getty Images
ここからが難しいところだ。現在苦しむ角田と、その後任候補であるハジャーらを妥当な形で比較する方法は存在しない。
角田もこれまでのレッドブルドライバーと同様に、フェルスタッペン以外にはまともに扱えないように見える気難しく不安定なマシンに苦しんできた。それにイモラでのクラッシュによりアップグレードの面で後れをとったのも大きかった。最近になってようやく、フェルスタッペン車のスペックに追い付いてきたところなのだ。
そして忘れてはならないのは、角田自身もレーシングブルズにいた頃は現在のハジャーと同じように高い評価を受けていたことだ。今季開幕時、レッドブル姉妹チーム在籍5年目に入っていた彼は年々成長を見せていて、開幕戦で予選5番手(ハジャーは11番手)を獲得。決勝は不運な戦略ミスで入賞を逃したが、続く中国でもスプリントで6位に入った。角田が“昇格”していなければどこまで行けたのかは誰にも分からないが、確かなのは彼が突然ドライビングの仕方を忘れてしまったわけではないということだ。
同じ理屈で言えば、ハジャーがレッドブルRB21を操って角田より良い結果を出せる保証もない。そして不確定要素をさらに増やすのが、2026年の新しい技術レギュレーションだ。レッドブルは今後も4度の世界王者であるフェルスタッペンに合わせてマシン開発を続けるだろうが、グラウンドエフェクト廃止によってセッティングの許容範囲が広がり、適応が容易になる可能性もある。それが角田に有利に働くのか、あるいはハジャーに有利に働くのかは、ドライバー人事が確定したずっと後にならないと分からない。
一部には、前任者たちが苦しんできたのだから、ハジャーはそもそもレッドブル昇格を望むべきではない、という意見もある。しかしハジャーがそれを拒否できるとは到底思えないし、仮に拒否したとしてもレッドブルがそれを受け入れるとも考えにくい。
マルコはオランダで「アイザックは一味違う」とコメントし、現在の考えの一端を示した。これはつまり、ハジャーが“呪われた”レッドブルのセカンドシートでプレッシャーに耐え得る逸材であると理解しているのだ。
一方で、ハジャーには経験不足ゆえの伸びしろがあり、5年目の角田と比べて成長余地が大きいと主張することもできる。ただ、だからこそレッドブルは才能ある若手を早々にダメにしてしまうという過ちを繰り返したくないと考えているはずだ。かつて姉妹チームを率いたフランツ・トストは常々「若手には3年の猶予を与えろ」と言ってきた。
レギュレーション大変革の2026年シーズンを自社製パワーユニットで臨むレッドブルにとって、ドライバーラインアップのテコ入れを急ぐ必要はないかもしれない。ここ数年は姉妹チームを含めたシート4席が不安定であったが、その陣容を来季も継続させることには一定の合理性がある。
さらに決断を難しくする要素が、次の順番を待つ“5番目のドライバー”、アービッド・リンドブラッドの存在だ。彼は陣営内で高い評価を受けており、未来のトップドライバーと言われている。もし角田とハジャーが交代となれば、25歳の角田が再びセカンドチームに戻る可能性は低いため、リンドブラッドのF1デビューが実現するだろう。逆にレッドブルがラインアップを継続させた場合、リンドブラッドはリザーブとしてレギュラー陣に圧力をかけつつ、必要に応じて戦力となる準備を整えることになるだろう。
レーシングブルズ 予選結果比較
| ハジャー | 1-2
(1-1 スプリント除く) |
角田 |
|---|---|---|
|
11 |
5 |
|
|
15 |
8 |
|
|
7 |
9 |
| ハジャー |
12-3 (10-3 スプリント除く) |
ローソン |
|---|---|---|
|
7 |
14 |
|
|
12 |
17 (DRSトラブル) |
|
|
14 |
12 |
|
| 9 |
14 |
|
| 11 |
15 (バッテリートラブル) |
|
| 9 |
16 |
|
| 6 |
8 |
|
| 9 |
13 |
|
| 9 |
19 |
|
|
13 |
6 |
|
| 13 |
16 |
|
| 9 |
11 |
|
| 8 |
9 |
|
|
10 |
9 |
|
|
4 |
8 |
レッドブルには時間の余裕がある
写真: Erik Junius
レッドブルにとって、「時間が味方している」というのはポジティブな点だ。すべてのドライバーが契約下にあり、チームの判断次第で自由に動かすことができるということはローソンと角田の入れ替えで示された。マルコは10月のメキシコシティGPあたりで決断が下されるだろうと示唆しており、それまでは少なくともあと5戦、角田には自分がチームにふさわしいことを示す機会が与えられる。
とはいえ理論上レッドブルは来シーズンの開幕まで決定を先延ばしできるが、メキーズはドライバーたちを長くやきもきさせないためにも、シーズン終了までには決断を下すと説明している。そしてハジャーの表彰台がセンセーショナルに取り上げられているものの、彼らはあくまで一時の感情ではなく合理性によって人事を決定するとしている。
「レースごとに感情が揺さぶられるのは悪いことではないが、ブダペスト(ハンガリーGP)とここ(オランダGP)ではまた違った感情になるものだ」とメキーズは言う。
「実際のところレッドブルの立場で見れば、彼らは全員我々のドライバーで、契約下にある。決定権があるのは我々だけだ。なぜ1戦の結果に基づいてプレッシャーをかける必要があるのだろうか?」
「シンプルに言えば、我々はかけることになるだろう。残りは9レース……最終戦まで待つとは言わないし、ドライバーに知らせるべきタイミングというものもある。だが我々には時間がある。急ぐ必要はないのだ。今は幸いなことにユウキが(レッドブルで)走っており、レーシングブルズも非常にうまく機能していると言える。したがって若手ドライバーの評価もできる」
フェルスタッペンとの差を縮めること
では、今から10月末までの間にシート争いの勢力図に何が起こり得るのか? そして角田はハジャーの脅威を退けるために何をすべきなのか?
「やれることは常にある。常にだ」とメキーズは言う。
「我々にもできることがあるし、彼にもできることがある。我々は全力でサポートしているが、全体としては依然としてポジティブな傾向にあると思う。スパ(ベルギーGP)とブダペストでは、ユウキはマックスとの差という点で大きな前進を見せた。今回も9位だったし、もう少し運があれば8位、あるいは7位も狙えた」
「我々が望むのは、彼がさらに進歩を続け、マックスとの差を縮め続けること。そして継続的にポイントを獲得し続けること。それが最大の指標であり、結局それがすべてなのだ」
「リアムもレーシングブルズで大きな成長を遂げているし、アイザックも開幕から驚異的な仕事を続けていて、毎戦我々を驚かせている。レッドブルの視点から見れば、この決断を急ぐ理由はほとんど見当たらない」
記事をシェアもしくは保存
Subscribe and access Motorsport.com with your ad-blocker.
フォーミュラ 1 から MotoGP まで、私たちはパドックから直接報告します。あなたと同じように私たちのスポーツが大好きだからです。 専門的なジャーナリズムを提供し続けるために、当社のウェブサイトでは広告を使用しています。 それでも、広告なしのウェブサイトをお楽しみいただき、引き続き広告ブロッカーをご利用いただける機会を提供したいと考えています。