フェラーリと契約延長したルクレール、その判断は正しかったのか?|海外ライターの視点
フェラーリとの契約延長が発表されたシャルル・ルクレール。少なくとも2029年までは残留することになったが、彼は正しい選択をしたのか、それともリスクを犯したのか? Motorsport.comのライター陣がそれぞれ評価した。
6月3日、フェラーリはシャルル・ルクレールとの複数年の契約延長を発表した。ルクレールは2027年までの契約期間中だったが、これで少なくとももう3シーズンはフェラーリに在籍することが決まった。
2019年にフェラーリへ加入したルクレールは、これで10シーズンをフェラーリで戦うことになるが、この判断は正しいものだったのか? それともルクレールはリスクを冒したのだろうか? Motorsport.comのライター陣がそれぞれ評価した。
Photo by: Alessio Morgese / NurPhoto via Getty Images
ルクレールにはそれほど選択肢がなかった? (オレグ・カルポフ)
ルクレールには実際のところ、選択肢はほとんど無かったと言えるだろう。そのため、フェラーリに残る決断は極めて理にかなっている。彼はおそらくグリッド上で2番目か3番目に速いマシンに乗っており、近い将来メルセデスやマクラーレンへ移籍する現実的な道筋は見当たらない。さらに、フェラーリは彼にとって夢のチームでもある。
もしフェラーリが奇跡的に2026年レギュレーションを、アストンマーティン・ホンダがそうなったように完全に”外して”いたなら、考えるべきことはもっと多かっただろう。しかし現時点でフェラーリは依然として賭ける価値のある馬だ。いずれは勝利から遠ざかっている期間も終わるはずだ。彼に必要なのは待つことだけだ。
それがどれくらいの長さになるのか? それは誰にも答えられない質問だ。しかし、ランド・ノリスがマクラーレンでどれほど忍耐強く、あるいは忠実だったかを振り返る価値はある。チーム史上でも最悪期とも言える時代に加入した彼は、その後ベンチマークとなるチームへと変貌していく過程を目の当たりにした。ノリスには他の機会も存在した。彼がレッドブルと何度か接触していたことは公然の秘密だ。しかしチーム移籍には常にリスクが伴う。特にガレージの半分をすでにマックス・フェルスタッペンが占めている場合はなおさらだ。
もしメルセデスから正式なオファーがあったなら、ルクレールはおそらく「フェラーリでタイトルを獲る」という子供の頃からの夢を脇に置き、まずはタイトル獲得という目標そのものを追っただろう。しかしそれ以外の移籍は、スーパーのレジ待ちで隣の列の方が速そうだからと列を移るようなものだ。たいていの場合、自分が離れた列の方が先に会計へたどり着くのを見届けることになる。
2016年F1テストにデビューした時のルクレール
写真: Alessio Morgese
フェラーリで夢を叶えられないかもしれない。だけど……(フィリップ・クリーレン)
ルクレールが2019年にフェラーリへ加入して以来、タイトルを獲得できるマシンを作ったチームは3つしかない。メルセデス、レッドブル、そしてマクラーレンだ。そう考えると、ルクレールがさらに3〜4年間フェラーリに未来を託すことには、間違いなくリスクが伴う。彼がフェラーリの偉大なレジェンドのひとりとなり、チーム最長在籍ドライバーになったとしても、それを締めくくる最大の栄冠を手にできないまま終わる可能性は十分にある。
一方でフレデリック・バスール代表体制のフェラーリは、活気や革新性、そしてリスクを取る姿勢を見せている。2026年の新レギュレーション時代に切ったスタートを見ると、今後数年のどこかで、フェラーリがタイトル争いに加わることは、決して非現実的ではないとも考えられる。
もっとも、個人的にはマクラーレンやレッドブルの方が、シーズン中に開発を進めてトップへ浮上する実績を持っていると思う。唯一明確な“上昇移籍”の先となり得たのはメルセデスだったが、それは当初から実現性が低かった。また、2027年以降にマクラーレンやレッドブルでドライバー交代が起こるかどうかもまだ分からない。ただ、その可能性はある。
だからこそ、2027年末まで契約が残っていたルクレールが、自分の順番が来る前にこれほど早く、そして長期にわたって全てを賭けたことは、かなり強い意思表示と言える。
これほど早く長期間フェラーリへの忠誠を誓うことにリスクはあるのか? F1というスポーツの性質上、もちろんある。間違った時期に間違ったチームへ在籍することの経験については、フェルナンド・アロンソに聞いてみればいい。
しかしフェラーリで勝てなければ、それは「満たされなかったキャリア」となる一方で、さらに悪い悪夢も存在する。フェラーリがタイトルを獲得し、その光景をルクレールが別のカラーのレーシングスーツを着て見つめていることだ。それは彼が決して自分を許せない過ちになるだろう。
Charles Leclerc already fulfilled a childhood dream by winning his home race in Monaco.
Photo by: Erik Junius
あっぱれなフェラーリへの愛と忠誠心(ベン・ヴィネル)
チームとドライバーが長年にわたって関係を築くことには、どこか愛おしく、ほとんどロマンチックとも言える魅力がある。
特にルクレールの場合はそうだ。彼は幼い頃から、Sky Italiaの実況者カルロ・ヴァンツィーニによって「Il Predestinato(運命づけられた者、選ばれし者)」と呼ばれてきた。
ルクレールは常にフェラーリ一筋だった。彼自身の語るところによれば、3歳のとき、サン・デボーテ・コーナーを見下ろす友人のアパートからモナコGPを観戦し、赤いマシンを探していたという。子供時代にミハエル・シューマッハーと出会ったことも、その情熱にさらに火をつけた。そして故ジュール・ビアンキは、彼にとって一種のゴッドファーザーのような存在だった。
ルクレールは2016年シーズンを前にフェラーリ・ドライバー・アカデミーへ加入して以来、すでに10年以上フェラーリと歩みを共にしている。その物語は成功に彩られている。GP3とF2での連続タイトル、F1での27回のポールポジションと8勝。しかし同時に、失意と挫折にも満ちていた。
もちろんビアンキを失った悲劇もある。そしてメカニカルトラブル、戦略ミス、ドライバー自身のミスによって失われた数多くの勝利のチャンスもあった。
そして何より重要なのは、フェラーリが真の意味でタイトル争いを戦えるチームになりきれていないことだ。常に上位にはいる。時折レースにも勝つ。しかし、タイトル争いには届いていない。
フェラーリでレースを戦う……ルクレールにとって夢を生きているはずなのにその夢は徐々に夢らしさを失っていってしまう。
だからこそ、ルクレールほどの才能と総合力を持つドライバーであれば、自らの将来について考え直したとしても誰も責められないだろう。別の環境ならどうだったのかと考えることは、人間として自然なことだ。
しかし彼は行動に移さない。
ルクレールの忠誠心はフェラーリに向けられている。それは今回の新契約によっても示された。おそらく少なくとも2028年までは、彼はフェラーリに留まることになる。
いずれフェラーリは正しい方向へたどり着き、ルクレールにタイトル争いができるマシンを与えるかもしれない。
しかし結果がどうであれ、彼はF1史において特別な章を書き続けている。愛するチームとともに、これほど長く耐え抜いた男として。
これまで同じような例は存在しなかった。そして、今後も現れないかもしれない。
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