ふたりの不運は“トントン”になったのか? タイトル争うメルセデスのアントネッリとラッセル、その前半戦を分析
ジョージ・ラッセルとアンドレア・キミ・アントネッリは、今季前半戦でタイトル争いを繰り広げる中で様々な不運に見舞われてきた。イギリスGPを終えた今、ふたりの不運は均衡したと言えるのだろうか?
F1第9戦イギリスGPを終えた時点で、メルセデスのジョージ・ラッセルはチームメイトでポイントリーダーのアンドレア・キミ・アントネッリに対して25ポイントの差をつけられている。彼はこの点差について、パフォーマンスを考えれば「おそらく妥当」だとしながらも、互いを襲った不運が平等なものだったかについては明言しなかった。
イギリスGPの決勝レースでアントネッリはポールポジションからスタートし、レース終盤にはトップを走るシャルル・ルクレール(フェラーリ)を追い上げていたが、ホイールシールドのトラブルで後退。ポジションを落としながらチェッカーを受けたものの、トラブルの影響でコースアウトを繰り返したことが祟り、トラックリミット違反のタイムペナルティを受けて15位に終わった。
一方のラッセルはスローパンクチャーで緊急ピットインを強いられる場面もあったが、最終的にはアントネッリらライバルの脱落によってポジションを上げ、2位に入った。決勝前にふたりの間には43点という大きな差がついていたが、ラッセルは一気に18点を縮めることに成功した。
レース直後、ラッセルは「これで2人の不運は帳尻が合ったのではないか」と問われると、次のように答えた。
「不運が相殺されたかどうかは分からない。ただこの9戦を通じた僕自身のパフォーマンスと彼のパフォーマンスを考えれば、25ポイント差というのはおおむね妥当だと思う」
「今年ここまでを見れば、彼の方が僕より良い仕事をしてきた。だから、彼が前にいるのは当然だ」
「その差が25ポイントであるべきなのか、10ポイントなのか、あるいは35ポイントなのかは議論の余地がある。ただいずれにしてもそのあたりだと思う」
「僕自身もモナコではドライブスルーペナルティで15ポイントを失った。だから、10~30ポイント差くらいであれば、おおむねフェアなんじゃないかな」
両者の不運を検証
写真: Sam Bloxham / LAT Images via Getty Images
では、実際にふたりの不運は釣り合いが取れているのだろうか? 本来個々の事例は独立して評価すべきではあるが、不運に見舞われた回数とその影響の大きさを整理してみると、この問いに関する大まかな傾向が見えてくる。
なお、第2戦中国GP予選でラッセルに発生したパワーユニットのトラブルは、この比較には含めていない。というのも、ラッセルはそれでもアントネッリと並ぶフロントロウを獲得しており、決勝ではアントネッリの優れたレースペースによって力負けしている。したがって、トラブルによって失ったポイントはなかったと判断した。
第3戦日本GP
ラッセルを襲った最初の、そして最も分かりやすい純粋な不運は日本GPだった。オリバー・ベアマン(ハース)のクラッシュによるセーフティカー導入のタイミングが、ラッセルがピットストップを終えてコースへ復帰したわずか数秒後だったのだ。
これにより、アントネッリを含むライバルはセーフティカー中に大きなタイムロスなくピット作業を行なうことができた。その恩恵を受けたアントネッリが勝利を収めた一方、順位を落としたラッセルは前のマシンからのダーティエアに苦しみ、4位でフィニッシュ。ふたりの間に13点の差が広がった。
第5戦カナダGP
モントリオールでも不運を被ったのはラッセルだった。彼はスプリントで優勝し、決勝レースでもポールポジションからアントネッリと優勝争いを繰り広げていた。しかし彼は電気系統のトラブルによってストップ。アントネッリに優勝(この時点で4連勝)を許したことで、この日だけで一気に25点分離されることになった。
第6戦モナコGP
モナコの場合は状況が複雑だ。まずラッセルが不運だったのは、ピットレーンの速度違反で5秒のタイムペナルティを受けたことだ。メルセデスはこれをセーフティカー中のピットストップで消化しようとしたが、ミスにより消化できなかった結果、ドライブスルーペナルティに格上げされてしまった。これで大きくポジションを落としたラッセルは12位ノーポイント……そしてこのピットレーン速度の計測にあたっては、システムに不備があったことが後に発覚している。
このレースでもアントネッリが優勝。ラッセルはまたしても25点の差をつけられる格好となった。もしラッセルに不運なペナルティが与えられず、順当に3位でフィニッシュできていたとしたら、点差の拡大は10点に抑えられていた可能性がある。
第7戦バルセロナ・カタルニアGP
ここではアントネッリが不運に見舞われた。レース終盤、ラッセルとのバトルを制して2番手を走っていたアントネッリはメカニカルトラブルによってストップし、ノーポイントに終わった。その結果、ラッセルが繰り上がりで2位となり、差を広げられるどころか18点縮めることになった。
第9戦イギリスGP
ここでは前述の通り、まずラッセルが不運に見舞われた。スローパンクチャーに見舞われたラッセルは緊急ピットインで順位を落としたが、その後5番手まで挽回した。しかしその直後にはアントネッリにさらに大きな不運が襲う。ホイールシールドの破損をきっかけに大きくポジションを落とし、ポイント圏外に追いやられた。
ラッセルは、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)のスピンアウト、そしてそれに伴って出されたセーフティカーラン中にステイアウトする戦略がハマり、2位をゲット。アントネッリとの差を再び18点縮めた。
結果は「まだラッセルの方がやや不運」
これらを踏まえて、「不運によって何点分のポイントを損したか」という観点で考えてみると、やはりラッセルが落としたポイントの方が多い。したがって、上述の不運が全て起こらなかった場合のポイントを試算したところ、いくつかの不確定要素はあるものの、少なくともラッセルは現状の25ポイントよりも小さい点差でシルバーストンを去ることになっただろう。場合によっては、チャンピオンシップをリードしていた可能性もあり得る。
もっとも、F1世界選手権はタラレバの話で勝敗が決まるわけではない。アントネッリにもラッセルにも、今後も自分ではどうにもできない出来事は起こるだろう。
だからこそラッセルも、失ったポイントを過度に気にしてはいない。重要なのは、自分でコントロールできる部分に集中し、現実の25ポイント差を縮めることであって、「もしも」のシナリオを追い求めることではない。
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