マクラーレンは戦略失敗は、”合議制”だったから? 元アストンマーティンF1の女性ストラテジストが語る

アストンマーティンF1の元ストラテジストであるバーニー・コリンズが、今季マシンのパフォーマンスを上げつつも、戦略面でうまくいかず複数の勝利を逃すことになったマクラーレンについて分析した。

Lando Norris, McLaren MCL38, makes a pit stop

Lando Norris, McLaren MCL38, makes a pit stop

写真:: Steven Tee / Motorsport Images

 今季躍進を遂げるマクラーレンの戦略面について、かつてアストンマーティンF1でストラテジストとして活躍したバーニー・コリンズは「もっと冷酷になるべきだ」と語った。

 マクラーレンは今シーズン、開幕直後から優れたパフォーマンスを発揮した。アップデートを投入するとその勢いはさらに加速し、表彰台の常連に。そしてマイアミGPではランド・ノリスが、ハンガリーGPではオスカー・ピアストリがそれぞれF1初優勝を手にした。

 しかし勝利はこの2回のみ。戦略面でもっとうまくいっていれば、勝てたと思われるレースが複数あった。

 例えばイギリスGPでノリスは、インターミディエイトタイヤからドライタイヤに変えるピットストップのタイミングが遅れたこと、そしてここでデグラデーション(タイヤの性能劣化)の大きいソフトタイヤを履いてしまったことで勝利を逃した。

 motorsport.comの姉妹サイトである英国Autosport.comのポッドキャスト番組に登場した、元アストンマーティンF1のストラテジストであり、今ではSky Sportsで解説者を務めるコリンズは、マクラーレンはもっと冷酷になり、プレッシャーのかかるような戦略決定を”合議制にすべきではないと語った。

「それがマクラーレンの問題の一部だと思います。ドライバーにどのタイヤが欲しいのかを絶えず尋ねるような形だと、当然ながら決定までのプロセスが遅くなってしまいます」

 そうコリンズは語る。

「決定を下す人々に独立性を持たせることができれば、当然決定はより早くなります。ノリスのピットストップの件は、彼がソフト、ミディアム、ハードのどれを選択するのかということを集中しすぎて、インターミディエイトからドライに変えるタイミングに集中できなかったことが問題だったと思います」

「実際に最初の質問は、『ドライで走るのに正しい周回はいつか?』というものであるべきでした。他の決定は、他の人に任せればよかったんです。信頼と独立した思考があれば、もっともうまく連携できるチームになります」

 コリンズはまた、しばらく勝利を争う立場から遠ざかっていたマクラーレンが「今は勝つ方法を学んでいるところ」と発言していることについても納得できないと言う。

「それは正しくありません」

 そうコリンズは言う。

「中団グループの戦略は、先頭を争うのと同じくらい難しいんです」

「そのことについて賛同する人も、反対する人もいるでしょう。しかし全てのポジション、全てのポイントが争われているんです。マクラーレンはこれまで、戦略面では非常に長けていたと思います。ピットウォールで、少しだけ人の動きがあったんだと思います」

「対戦する相手は変わります。中団グループや中団以下のチームであれば、特定のチームと対戦することになります。そうすれば、相手がどのように反応し、どれほど攻撃的なのかがわかります」

「チームのレベルが上がれば、対戦する相手も当然変わります。私は、自分が関わった全てのレースで、他のチームが下した全ての決定を分析を下しました。レッドブルがなぜその決定を下したのか、メルセデスがどうしてその決断をしたのか、かなりよく分かったような気がしています」

「マクラーレンも同じことをしているに違いありません。前進したことは、チームとしては待ち望んでいたことです」

 またコリンズは、ストラテジストとしては女性が登用される機会が多くなっているものの、エンジニアリング部門で女性が出世した事例が少ないことについても意見を述べた。

「ある時点では、ピットウォールの50%近くを女性のストラテジストが占めていました」

「その理由はいくつかあると思います。ストラテジストとして活かせる、バックグラウンドの範囲が広いというのも、その一部だと思います。一方で、エンジニアリングの分野では、女性の数は十分ではないと思います。ですから、ピットウォールにベストな10人を揃える上で、女性を入れるのは難しいんです。ソフトウェアや数学などの分野を担当するストラテジストならばおそらくはもっと女性が多いです。それが、ピットウォールに反映されているんだと思います」

「意思決定やプレッシャーという側面は、女性の方が向いていると思います」

「現在女性のレースエンジニアはいませんが、それは時間の問題だと思います。しかしドライバーの声となるために費やす時間は、かなりのコミットメントが必要だと思います。その段階に達するまで、F1で10年とか15年はかかります。そしてそこまでに辿り着くまでに、多くの女性が色々な理由でチームを離れているかもしれません。一方で戦略の面では、そこに辿り着くまでの道は短いと思います」

 
 

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