ヘルムート・マルコ、レッドブル系F1ドライバーを一斉評価……角田は爆発力に期待。フェルスタッペンは完璧に近い?
レッドブルのモータースポーツアドバイザーを務めるヘルムート・マルコが、レッドブル系のF1ドライバーを辛口評価した。
Yuki Tsunoda, AlphaTauri, Dr. Helmut Marko, Red Bull Racing
Red Bull Content Pool
レッドブルでモータースポーツアドバイザーを務めるヘルムート・マルコは、歯に衣着せぬ物言いで知られている。彼が率いるレッドブルの育成プログラムに名を連ねるジュニアドライバーたちは、マルコのお眼鏡にかなう成果が出せないと即刻”クビ”が告げられる。
そして、F1まで上り詰めた育成プログラム出身ドライバーにも例外なく厳しい目が向けられている。
レッドブルの”お膝元”であるレッドブルリンクを舞台に行なわれるオーストリアGPを前に、社内誌Red Bulletinのインタビューの中で、現在グリッドに並ぶ元・現レッドブルファミリーのドライバーについて興味深い評価を下している。
ここではその中からいくつかを紹介する。
Daniel Ricciardo, Red Bull Racing, celebrates victory
Photo by: Glenn Dunbar / Motorsport Images
ダニエル・リカルド「一貫性に欠ける」
2011年:HRT、2012年〜2013年:トロロッソ(現アルファタウリ)、2014年〜2018年:レッドブル、2019年〜2020年:ルノー(現アルピーヌ)、2021年〜現時点:マクラーレン
リカルドはトロロッソで経験を積み2014年にレッドブルに昇格すると、それまで4連覇を果たしていたセバスチャン・ベッテルを初年度で負かし、その後はマックス・フェルスタッペンらをチームメイトに勝利を重ねた。
しかしマルコは、要求されるペースを常に発揮することができなかったと考えている。
マルコ「レッドブルでの1年目は、0勝のベッテルに対して3勝と打ち負かした。ただマックスの登場は彼のキャリアにとっての分岐点だったのだ」
「戦いを挑むよりも、彼は距離を置きたがったのだ。そこから次に何が起こったのかは知っての通り。残念すぎる」
「一緒に働いていると、彼はとても良い人だった。スピードはマックスに匹敵するけど、究極的な安定感がない」
Sebastian Vettel, Red Bull Racing RB6
Photo by: Glenn Dunbar / Motorsport Images
セバスチャン・ベッテル「とても、とても分析的な仕事人」
2007年:BMWザウバー(現アルファロメオ)〜2008年:トロロッソ、2009年〜2014年:レッドブル、2015年〜2020年:フェラーリ、2021年〜現時点:アストンマーチン
ベッテルは参戦2年目の雨のイタリアGPでトロロッソながらも鮮烈な初優勝。翌年からはレッドブルに昇格し一時代を築いた。リカルドの台頭もありフェラーリに移籍し5度目のタイトルを狙うも、シーズンを通して勢いをキープできずに2021年から新生アストンマーチンへ移った。
マルコは、ベッテルが長年共にレッドブルで走っていたマーク・ウェバーを負かし、4度のF1世界チャンピオンとなった理由として、彼のハードワークと分析面での才能の2点を挙げている。
マルコ「彼は技術的な可能性を全て、究極まで利用した。それが才能あるマーク・ウェバーを最終的に圧倒した理由でもある」
Carlos Sainz Jr., Scuderia Toro Rosso STR11
Photo by: Red Bull Content Pool
カルロス・サインツJr.「フェルスタッペンとの関係が悪かった」
2015年〜2017年:トロロッソ、2017年〜2018年:ルノー、2019年〜2020年:マクラーレン、2021年〜現時点:フェラーリ
2022年イギリスGPでF1初優勝を挙げ、112人目のF1ウィナーとなったサインツJr.。マルコもF1キャリア当初から彼のペースには感心していたという。ただ、初年度でチームメイトとなったフェルスタッペンとの相性は芳しく無く、事態は悪化したと語った。
現在はフェラーリの一席を掴んでいるものの、チーム間交渉や他のドライバー獲得によってルノー、マクラーレンへと移った経歴がある。
マルコ「マックスをチームメイトに迎えたことは、彼にとっては不運だった」
「トロロッソでのふたりの雰囲気は毒々しかった。当時の状況では、彼を引き止める方法が見当たらず、ルノー、マクラーレン、そしてフェラーリへ移籍したのだ」
Alex Albon, Red Bull Racing RB16 crosses the finish line
Photo by: Steven Tee / Motorsport Images
アレクサンダー・アルボン「いい人すぎる」
2019年:トロロッソ、2019年〜2020年:レッドブル、2022年:ウイリアムズ
アルボンはピエール・ガスリーの降格により参戦初年度にしてレッドブルのシートを掴む。その後はフェルスタッペンと並ぶペースが出せずにシートを失うことになるものの、レッドブル時代序盤、ルイス・ハミルトン(メルセデス)との接触により表彰台を逃した2019年ブラジルGPと2020年のオーストリアGPがキャリアの風向きを変えたとマルコは考えている。
タイ人としてアルボンは1年の”浪人生活”を経て晴れてウイリアムズからF1復帰を果たすも、レッドブルとの密接な関係は続いている。ただマルコは、チャンピオン獲得に必要な”残忍さ”が欠けているとも指摘している。
マルコ「アレックスはとても速いが、彼はいい人すぎるとも思う。デビッド・クルサードみたいにみんなに愛されるが、結局はタフさが足りないのだ」
Yuki Tsunoda, AlphaTauri AT03
Photo by: Carl Bingham / Motorsport Images
角田裕毅「激昂しがちだが、恐ろしく速い」
2021年〜現時点:アルファタウリ
角田は2021年のデビュー以降光る速さを見せるシーンもある一方で、荒削りな面が残る。イギリスGPではチームメイトのガスリーとの同士討ちの原因となり、プレッシャーに晒されている。しかし、マルコは角田の気質が際立っているとして、彼のペースに関してはほとんど批判していない。
マルコ「激昂することが多いが、誰が何を言おうとも、彼は恐ろしく速い」
「我々は彼と彼の大きな可能性を信じている。彼がプレッシャーに晒されていない時は、とても面白く好感が持てる。誰も彼ほど激昂することはないが、それでもみんなユウキのことが好きなんだ」
Pierre Gasly, AlphaTauri, 1st position, celebrates on arrival in Parc Ferme
Photo by: Steven Tee / Motorsport Images
ピエール・ガスリー「ミラクルを起こす」
2017年〜2018年:トロロッソ、2019年:レッドブル、2019年〜現時点:トロロッソ/アルファタウリ
リカルドの後任としてガスリーはレッドブル昇格。しかしパフォーマンス不足を理由に半年で降格させられた。マルコはガスリーがレッドブルで上手くいかなかったのは「自分自身のミスに取り組む代わりに、言い訳を探した」せいだという。
しかしマルコは、彼がトロロッソ/アルファタウリでキャリアを好転させることができたと考えている。
マルコ「彼はチームのリーダーで、信じられないようなことをする。彼の同胞であるフランソワ・セベールのように、速く大胆で、人生の美しいモノに対して献身的に取り組んでいる」
Race winner Sergio Perez, Red Bull Racing
Photo by: Red Bull Content Pool
セルジオ・ペレス「フェルスタッペンの存在が彼を不安にした」
2011年〜2012年:ザウバー、2013年:マクラーレン、2014年〜2020年:フォース・インディア/レーシングポイント、2021年〜現時点:レッドブル
ペレスは2011年にF1デビューも、優勝を狙えるだけのマシンに恵まれずチームを転々。しかし2020年サクヒールGPで初優勝を果たすと、翌年からレッドブル入りを果たす。ここまでのドライバーと異なりレッドブル育成出身ではないものの、マルコは彼の仕事ぶりには感心しているようだ。
マルコは、ペレスは予選で不安要素を抱えていたものの、そこから上手く立ち直り2021年のフェルスタッペンのチャンピオン獲得に欠かせない存在となったと語った。また、彼の性格についても言及した。
マルコ「彼は勝利を引っさげてやって来て、ポジティブなムードに包まれていた。そしてマックスと会って、特に予選である種の不安要素を抱えることとなった」
「彼は自分でホテルを選び、自分のアドバイザーと一緒に彼のチーム内で生活している。彼らがみんな何をやっているのかはよく知らないけど、とても良い人たちだ」
Max Verstappen, Red Bull Racing, 1st position, celebrates on arrival in Parc Ferme
Photo by: Steven Tee / Motorsport Images
マックス・フェルスタッペン「我々の中で最速のドライバー」
2015年〜2016年:トロロッソ、2016年〜現時点:レッドブル
2015年に18歳という若さでF1に現れたフェルスタッペンは、翌シーズン途中でレッドブルに昇格するといきなりF1初優勝。2021年にはハミルトンとの一騎打ちを制してチャンピオンに輝いた。
現時点でレッドブルが輩出した最新のチャンピオンであるフェルスタッペンを、マルコが称賛するのは当然だろう。
マルコ「彼はレッドブルがこれまで獲得した中で最速のドライバーであり、最も完璧なレーシングドライバーになりつつある」
「現在、予選1発で彼より速いドライバーはいない」
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