現行パワーユニット規則に3つの大きな問題点アリ!? マクラーレン代表が指摘「この問題に早急に対処すべき……安全上の問題もある」
マクラーレンのチーム代表であるアンドレア・ステラは、バーレーンでのテストを終え、今季のパワーユニットの問題点が3つ明らかになり、これらは安全上の問題から対処すべきだと語った。
Oscar Piastri, McLaren, Alexander Albon, Williams
写真:: Mark Sutton / Formula 1 via Getty Images
マクラーレンのアンドレア・ステラ代表は、ショーと安全性の向上のため、2026年のパワーユニット(PU)レギュレーションに、複数の改訂が必要だと主張した。
今季からF1のPUはレギュレーションが変更され、エンジンと電動モーターの出力が均等になった。このことにより、これまでも多くの懸念が語られてきた。しかしバルセロナでのシェイクダウンテスト、そしてバーレーンでのプレシーズンテスト前半を経て、未だ3つの大きな問題があることが明らかになった。
ひとつ目はスタートである。今季からMGU-H(熱エネルギー回生システム)が廃止されたため、スタート時のターボの起動は、エンジンの駆動力に頼ることになった。そのためスタート練習の際には、必要なブーストレベルまで引き上げるために、10秒以上もアクセルを踏み続けるマシンが見られた。
しかしこの時の手順のタイミングを少しでも間違えると、発進が遅れたり、マシンがアンチストールの状態に陥ったりする可能性がある。バーレーンでのプレシーズンテスト最終日には、アルピーヌのフランコ・コラピントがこの状態に陥った。またグリッド後方のマシンは、グリッド位置に停止してからスタートが切られるまでに10秒も確保できない可能性が高く、必然的にスタートを失敗するマシンが増えることになるかもしれない。
またストレートエンドでアクセルを離し、惰性で走行する必要性……つまりリフト&コーストの必要性についても懸念が高まっている。後続のマシンが全開で走り、しかも接近していた場合、その速度差によって危険な状況が生じる可能性がある。また今季からはDRSに変わり、ブーストモードがオーバーテイク支援のためのギミックとして用意されているが、バッテリー残量が足りなければ使うことができず、オーバーテイクの機会が減ってしまうかもしれない。
この問題を深刻化させているのが、バルセロナとバーレーンが、エネルギーの回生(ハーベスト)に関して最悪のサーキットではないということだ。そのため、より電気エネルギーを消費するサーキット、ブレーキングポイント(=回生できるポイント)が少ないサーキットでは、その状況がさらに悪化する可能性がある。
Lewis Hamilton, Ferrari, Isack Hadjar, Red Bull Racing
Photo by: Sam Bagnall / Sutton Images via Getty Images
マクラーレンのステラ代表は、安全面とコース上でのスペクタクルの両面で状況を改善するため、修正を迅速に実施するように呼びかけている。来週水曜日(2月18日)には参戦11チーム、FIA、FOMによるF1委員会の会議が行なわれる予定であり、ここでそれが議論されることになるだろう。
「予選でどれだけ速かったとか、レースペースがどのくらいかという話ではない。グリッド上の安全性について話しているのだ」
ステラ代表はそう語り、安全なスタート時の手順について主張した。
「競技の上での利益よりもはるかに重要な問題がいくつかある。そして私としては、グリッドでの安全性は簡単な調整で実現できるものであり、考えるまでもない」
解決策のひとつは、スタート手順のタイミングを微調整し、ドライバーがグリッド上で、ターボの回転数を適切な所まで上げるための時間を確保するということだ。
「レーススタートの手順において、全てのマシンがパワーユニットをしっかり始動できる状態にしておく必要がある。グリッドは、マシンがゆっくりとスタートするような場所ではない」
そうステラ代表は説明する。
「これは大変重要なことだ。だからずべてのチームとFIAは、必要なことに関して責任ある行動を取るべきだと考えている」
またステラは、DRSの廃止とアクティブエアロの導入により、オーバーテイクはより難しくなったと懸念を語る。
「これまで、DRSは後続車に空気抵抗の観点から大きなアドバンテージをもたらした」
「しかし今年は後続車が追いついても、空気抵抗とパワーが同じなので、オーバーテイクが非常に難しくなる。我々のドライバーは、バーレーンでの3日間のテストで、他のドライバーと何度かレースをした。そして、オーバーテイクが非常に難しいと感じていたようだ」
Lando Norris, McLaren, Andrea Stella, McLaren
Photo by: Steven Tee / LAT Images via Getty Images
前述の通り今季はオーバーテイクモードが導入されるが、DRSと同じような効果はなさそうだ。そもそもマシンには、余分な電気エネルギーがないからだ。解決策のひとつは、レースで使うことができる電気エネルギーの最大出力を、現状の350kWから引き下げることだ。これにより、オーバーテイクモードの有効性を高め、さらにエネルギーが足りない状況を生み出すことに繋がるかもしれない。
「前方を走るマシンに1秒以内まで迫った場合、追加のエネルギーを使えることになっている。しかし、それを活用するのは難しい。というのも、その追加のエネルギーによって得られるのは、ストレートの終盤にほんの僅かだけデプロイの量が増える程度だからだ」
ステラ代表はそう言う。
「だからこそF1コミュニティとして、オーバーテイクを実現可能なモノとするために、何ができるかを検討すべきだと思う。出なければ、レースという競技の本質的な要素のひとつ……ドライバーにオーバーテイクの機会を与えることができなくなってしまう」
またステラ代表は、リフト&コーストを減らすことは、安全面でも重要だと語った。前を走るマシンの電気エネルギーが枯渇し、後続のマシンが全開で走ってしまうと大きな速度差が生じ、危険な追突事故を誘発してしまう可能性があると訴えている。
「接近戦の中では、それは理想的な状況とは言えない。以前にも見られたような状況……バレンシアでのウェーバー、ポルトガルでのパトレーゼ、他にもいくつかあるけど、ああいう事故は、もうF1では見たくない」
バレンシアでのウェーバーというのは、2010年のヨーロッパGPでのこと。ロータスのヘイキ・コバライネンに、レッドブルのマーク・ウェーバーが最高速で追突。ウェーバーのマシンはそのまま空中を舞い、減速することなくウォールに激突してしまった。あわやコース上の看板に激突してしまう寸前という、危うい事故であったが、ウェーバーは無傷で生還した。
またポルトガルでのパトレーゼというのは、1992年のポルトガルGPでのこと。ウイリアムズのリカルド・パトレーゼは、マクラーレンのゲルハルト・ベルガーをオーバーテイクしようとテール・トゥ・ノーズ状態でメインストレートへ……しかしベルガーがピットインするために減速したため、パトレーゼは追突し、やはり空中に飛び上がってしまった。この時のパトレーゼも、幸いにも怪我を負うことはなかった。
Marshals remove the wrecked car of Mark Webber, Red Bull Racing
Photo by: Motorsport Images
リフト&コーストの必要性を減らす方法のひとつは、”スーパークリッピング”に関するレギュレーションを微調整することだ。このスーパークリッピングとは、マシンがフルスロットルで走行しながら、エネルギー回生を行なうというもの。現状ではこの上限に制限があるが、MGU-Kの最大パワーである350kWまでスーパークリッピングを行なうことができるようにすれば、リフト&コーストに頼る部分を減らせるはずだ。
「重要なのはスタート、オーバーテイク、そしてリフト&コーストを回避する対策を見つけることだ」
そうステラ代表は結論づけた。
「これらのシンプルな技術的解決策は存在しているし、次のF1委員会で議論されることだろう」
「この対策は絶対に必要だと思う。なぜならそれは可能なことであり、シンプルなことだからだ。シンプルなことを複雑にしたり、すぐに可能なことを先延ばしにしたりすべきではない」
F1委員会の会合で、この件に関する合意がなされるかどうかはまだ分からない。しかし安全上の理由であれば、FIAが主導して推し進めることも可能だ。
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