F1 イギリスGP

レッドブル新代表に就任したメキーズを待ち受ける5つの課題……苦戦する角田裕毅を復活させることはできるか?

電撃的に解任されたクリスチャン・ホーナーの後を受け、レッドブル・レーシングのCEOを務めることになったローレン・メキーズ。彼には、大きな課題が多数待ち受けている。

Filip Cleeren

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公開日時: 2025/07/11 11:13

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Laurent Mekies, Team Principal, RB F1 Team

Laurent Mekies, Team Principal, RB F1 Team

写真:: Simon Galloway / Motorsport Images

 レッドブル・レーシングは7月9日、解任されたクリスチャン・ホーナーの後任として、これまでレーシングブルズのチーム代表を務めてきたローレン・メキーズを、新たなCEOに任命した。彼が解決しなければいけない課題は、数多くある。

 メキーズはF1でのキャリア初期、アロウズやミナルディなどの弱小チームで活躍。その後FIAやフェラーリで働いた。フェラーリではスポーティングディレクターまで務め、2024年からは現レーシングブルズに加入し、チーム代表となった。レーシングブルズは、ミナルディの系譜を受け継ぐチームであるため、言わば”古巣復帰”だ。

 そんなメキーズは、突如解任されたホーナーの後任として、レッドブル・レーシングの舵取りを任されることになった。48歳の彼は、あまりにも衝撃的な人事によって、F1界で最も注目を集めることになった職務をこなさねばならないだけでなく、山のように積み上がった数々の課題を解決しなければならない。

1. フェルスタッペンを説得すること

 ホーナーが突如解任された背景には、彼とオーストリアのレッドブル社の間における権力闘争が関連しているのは、間違いないだろう。近年では、エイドリアン・ニューウェイをはじめ、数々の有力な人材がレッドブルを離れている。そして今度は、絶対的エースドライバーであるマックス・フェルスタッペンまでが、チームを離れようとしているとも伝えられる。

Max Verstappen, Red Bull Racing

Max Verstappen, Red Bull Racing

Photo by: Jakub Porzycki / NurPhoto / Getty Images

 ホーナー代表は、これまで数々の成功を収めてきたものの、そういう事象がチームの衰退を招いたとして、不利な立場に立たされ、株主の信頼をも失ったようだ。

 メキーズに、ホーナーのような広範囲にわたる権限が与えられるかどうかはわからない。しかしメキーズにとっての最優先事項は、レッドブルが最近の苦境から脱するために何が必要か、そしてファクトリーとコースサイドでの技術体制のあるべき姿について、移籍を検討しているとされるフェルスタッペンの理解を得ることにあるだろう、

 それで十分と思うかどうかは、フェルスタッペンとその周囲の人物たちの判断による部分も大きい。ホーナーの退任を喜ぶ人もいるだろうが、メキーズの手腕を確かめ、長期的に仕事を共にするチームのCEOとして適任かどうかを見極めようとする人もいるかもしれない。

2. セカンドシート問題の解決。そして角田裕毅へのサポート体制

 2025年シーズン、レッドブルがコンストラクターズタイトルを獲得するのはまず不可能だろうと言われている。フェルスタッペンは一部のサーキットではマクラーレンに対峙できるものの、セカンドドライバーのパフォーマンスがそれとは大きくかけ離れているからだ。

 しかもレッドブルは来季から、自社製パワーユニットを使い、ワークスチームに対抗することになる。ただこの開発は簡単にはいかないのは当然であり、パフォーマンスの面ではかなり厳しい状況になる可能性も否定できない。ただ、”フェルスタッペンしかドライブできない”という状況のまま新レギュレーション下のシーズンに突入してしまえば、さらなる悲劇に繋がってしまうかもしれない。しかしメキーズをCEOとして起用することで、この点で軌道修正を行なうための十分な時間を確保できるだろう。

 それと同時に、セカンドドライバーの角田裕毅は、レッドブル昇格後輝きを見せられておらず、その自信を取り戻させなければならない。これもメキーズの重要な任務だ。

Laurent Mekies, Team Principal, RB F1 Team, Yuki Tsunoda, Visa Cash App RB F1 Team

Laurent Mekies, Team Principal, RB F1 Team, Yuki Tsunoda, Visa Cash App RB F1 Team

Photo by: Zak Mauger / Motorsport Images

 前任のホーナーは、角田のことを高く評価してはいなかった。しかしメキーズはレーシングブルズ時代から角田を大いに賞賛しており、仕事上でもうまくいっていた。そういう意味では、角田が必要とするサポートを提供できるという面では、メキーズはうってつけの存在であろう。

 繰り返しにはなるが、今季のRB21の作動ウインドウが狭いことを考えると、今季中に大躍進を遂げるのは難しいと思われる。しかし来年レギュレーションが大きく変わるタイミングは、”フェルスタッペンしか乗れない”というレッドブルのマシンの特性を解決する、絶好のタイミングとなるかもしれない。

3. レッドブルの技術体制について、新たな視点

 前述の通りレッドブルからは最近、ニューウェイだけでなくロブ・マーシャル、ジョナサン・ウィートリーなどが離れていった。そのためレッドブルとしては、この部分を補強する必要があるだろう。これらの人材の流出は、ホーナーの失策だったとも言える。

 しかし2022年と2023年にダブルタイトルを連覇した時の才能ある人材の多くが、まだレッドブルには残っている。つまり外部から有能な人材を引き抜いてくるだけが成功の近道というわけではなく、既存の人材をフル活用するということも重要だ。

 今年絶好調のマクラーレンは、レッドブルからマーシャルを引き抜き、さらに空力の天才として活躍していたピーター・プロドロモウを、より責任ある役職に就かせた。これにより、現在の成功に至ったわけだ。まあプロドロモウも、遡ればレッドブルに在籍していたこともあるが。

 レッドブルのパフォーマンスは、単独で見ると断罪するほどではないかもしれない。フェルスタッペンは今季ここまでに4回のポールポジションを獲得し、2勝しているのだから。しかし、なぜマクラーレンに大きく後れを取るようになってしまったのか、そしてなぜフェルスタッペンだけがドライブできるように見えるのか……それらの点は疑問である。

Oliver Mintzlaff, Managing director Red Bull GmbH, Christian Horner, Team Principal, Red Bull Racing, Dr. Helmut Marko, Consultant, Red Bull Racing

Oliver Mintzlaff, Managing director Red Bull GmbH, Christian Horner, Team Principal, Red Bull Racing, Dr. Helmut Marko, Consultant, Red Bull Racing

Photo by: Red Bull Content Pool

 レッドブルは、F1全チーム中最も古い風洞を使っており、ここ最近はその相関関係の問題に悩まされ、解決の糸口を掴むのに苦労してきた。そういう意味では、テクニカルディレクターのピエール・ワシェをサポートする人材が必要かどうかを検討すべきだろう。ちなみにメキーズはレーシングブルズでも、テクニカルディレクターのジョディ・エジントンが離脱したことを受け、同様の組織再編に着手している。

 ちなみにイギリスGPの際にホーナーは、組織変更の必要はないと主張していた。

「チームの組織は、それぞれ異なると思う」

 そうホーナーは語っていた。

「レッドブル・レーシングには、私に報告を行なう明確な組織構造があり、主要な部署が私に報告してくれている」

「ピエール・ワシェは、マクラーレンでアンドレア・ステラが担っている役割の80%程度を担っていると言える。ただ役職の名前や機能、体制が違うだけだ」

「現在の体制は、コース上でもコースの外でも非常にうまく機能している。チームには十分な力がある。変更したり調整したりする必要性はまったく感じていない」

4. レッドブルの企業文化を守る

 ホーナーはその職務を追われたものの、ミルトンキーンズのファクトリーでは高い評価を受けていたと見られる。その証拠に、解任が発表された後のスピーチの際には、スタッフから惜しみない拍手喝采が送られた。

 メキーズはこれまでF1パドック内で様々な経験を積んできた人物であり、F1においてはその企業文化が重要であることを熟知している。そしてレーシングブルズのイタリア・ファエンツァのファクトリーと、イギリス・ミルトンキーンズの新キャンパス間の距離が支障とならないよう、双方で緊密に連携する強力なリーダーシップ・チームを編成した。

Sergio Pérez, Christian Horner, Max Verstappen  at the Red Bull factory in Milton Keynes

Sergio Pérez, Christian Horner, Max Verstappen at the Red Bull factory in Milton Keynes

Photo by: Red Bull Content Pool

 ただメキーズはこれまで、チーム代表だけを務めていた。今後はチーム代表とCEOを兼任しなければいけないのだ。しかも、チームの規模はずっと大きい。PU開発のパートナーであるフォードとの関係も、新たに構築しなければいけない。

 しかしながらメキーズは、レッドブル・グループのシステムと力学を熟知しており、しかもレーシングブルズ(アルファタウリ、トロロッソ時代含む)から引き抜かれたスタッフも、レッドブルには数多くいる。このことは、彼にとって大きなアドバンテージとなるだろう。

 交代劇がこの時期に行なわれたというのも重要だ。F1は8月には夏休みとなり、ファクトリーの稼働も禁止される。その間に交代劇が起きてしまっていたならば、メキーズがレッドブルに慣れる時間が取れないこととなる。逆に今の時期ならば、レッドブルのやり方に慣れる時間を確保することもできよう。

5. 政治的闘争を戦い抜けるか

 F1が“ピラニア・クラブ”と呼ばれるのには理由がある。メキーズはトップチームの代表になることで、その意味を身をもって知ることになるだろう。

 過去数年間、食物連鎖の頂点に立っていたと言えるホーナーは、メルセデスのトト・ウルフ代表や、マクラーレンのザク・ブラウンCEOらと何度も激しい舌戦を繰り広げてきた。そしてレッドブルが持つコース内外での優位性について擁護してきた。ブラウンCEOは「ホーナーとの対立は個人的なものではなく、ビジネスとしての話だ」と語ってきたが、それは半分本当で半分嘘だと考えられている。

 しかし、メキーズは温厚な性格で知られており、分断を招くようなタイプではない。そのため、彼がかつて仕えたフェラーリのフレデリック・バスール代表のように、他チームとの良好な関係を築けると期待されている。しかも現在のレッドブルはもはや他チームから引きずり下ろされる立場ではなくなってきていることもあり、メキーズは就任後しばらくの間は気楽な“ハネムーン期間”を過ごせるかもしれない。

 とはいえ、誤解のないように言うと、彼もいずれは必要な時に自らの立場を強く主張し、戦わなければならない場面に直面するだろう。そしてその点において彼は、フェラーリやFIAでの経験から、F1界の政治的な駆け引きを熟知している。

 レッドブルが今もなおコース外で戦わなければならない問題はいくつか残っている。前任のホーナーは、2026年からの新規則パワーユニットのエネルギー配分再調整や、後れをとったエンジンメーカーに追加の開発予算と時間を与える制度の導入に前向きだった。これらの提案は原則合意に達してはいるものの、具体的な数値設定や投票による正式決定には至っていない。

 いずれにせよ、ホーナーの退任はひとつの時代の終わりであることは間違いない。彼はグリッド上で最も長くチーム代表を務めた人物だった。そして今、メキーズにはホーナーの後任として大きな責任がのしかかっている。ただ、彼はレッドブルF1が新たな色をつけていく上で適した人材と言えるだろう。

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