マクラーレンへのPU供給にはリスクも? メルセデス代表「でも準備はできている」
メルセデスF1チームの代表であるトト・ウルフは、2021年からマクラーレンにパワーユニットを供給することは、”リスクある決断”だったことを認める。


マクラーレンは、2021年からメルセデスのパワーユニット(PU)を使うことを決めた。一方でメルセデスのチーム代表であるトト・ウルフは、マクラーレンにPUを供給する決定には、”リスク”も伴っていることを認めた。
マクラーレンは1995年から2014年までの長きに渡ってメルセデスとタッグを組み、この間に幾多の成功を収めた。しかしPUをホンダ製に切り替えた後はパフォーマンスが低下し、2018年からルノーPUに変更した後も、表彰台すら獲得できていない。勝利に関して言えば、2012年を最後に未勝利が続いている。
しかしウルフ代表は、マクラーレンの進歩と2021年のレギュレーション変更は、メルセデスに”大いなる挑戦”をもたらす可能性があると考えているようだ。
「2021年には新しい時代が始まり、グリッド上は大接戦になるだろう。そして激しい競争があるはずだ。PUについても、学ぶべきことがたくさんあると考えている。そして、より競争力のあるカスタマーチームが、現在の2チーム(レーシングポイントとウイリアムズ)に加わるんだ」
「我々はマクラーレンは強いと評価している。ザク(ブラウン/マクラーレンF1のCEO)とアンドレアス(ザイドル/マクラーレンのチーム代表)が始めたステップは、確かに有望なように見える」
「ただマクラーレンのような力強い相手と戦うのは、そのデメリットよりもメリットの方が大きいはずだ」
マクラーレンが2014年限りでメルセデスとの関係を解消し、ホンダとの契約を結んだ背景には、V6ターボ・ハイブリッドのPU時代には、ワークスチームでなければ戦えないだろうとの考えがあったはずだ。そして2年前にマクラーレンがホンダと袂を分かった際、メルセデスはPU供給には後ろ向きだった。
ウルフは今回の契約締結について、「状況が少し変わったのだ」とだけ語ったが、マクラーレンが中団グループのチームとしてのポジションを確固たるモノとしたことが、今回の契約を結ぶ決め手となった可能性がある。
以下の表は、マクラーレンとメルセデスの成績を比較したものだ。上段は同じエンジン(つまりメルセデス製)を使っていた際の成績比較、そして下はマクラーレンが別のエンジン(ホンダおよびルノー)を使うようになった後の比較だ。こうして比べてみれば、マクラーレンの凋落ぶりは一目瞭然であろう。
メルセデス VS マクラーレン
|
メルセデス |
マクラーレン |
勝利数 |
20 |
18 |
表彰台 |
46 |
49 |
ポールポジション |
27 |
10 |
ドライバーズチャンピオン |
1 |
0 |
コンストラクターズチャンピオン |
1 |
0 |
ポイント |
1582 |
1632 |
|
メルセデス |
マクラーレン |
勝利数 |
69 |
0 |
表彰台 |
141 |
0 |
ポールポジション |
74 |
0 |
ドライバーズチャンピオン |
4 |
0 |
コンストラクターズチャンピオン |
4 |
0 |
ポイント |
3362 |
296 |
ウルフ代表は、今回の契約については、反対よりも支持する声の方が多かったと語る。
「我々は、より多くのパワーユニットを走らせることのメリットを学習した」
そうウルフ代表は言う。
「同時に供給しなければならないから、そのためのプロセスと、物流の部分には問題があるかもしれない。しかし今後は、メリットの方が多くあるだろう」
「経済的な面でもメリットがある。つまり収支の問題だ。これは非常に役に立つ」
「全体的には多くのプロセスがある。そしてマクラーレンが良い仕事をすれば、それは確かにリスクにもなる。彼らはおそらく我々をベンチマークにし、チームの内部にこう言うだろう。『同じパワーユニットを使っているんだ。しかし、君たちは十分な仕事をしていない』とね」
「しかし我々は、ハイブリッド時代で7年の経験を手にした。そしてそのステップを踏む準備ができているんだ」
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