メルセデス”唯一の弱点”……冷却性能はニューマシンW11で改善できたのか?
メルセデスF1チームは、昨年型W10の弱点だった冷却システムを、ニューマシンW11では改善していると語る。またパワーユニットをより高い温度で動かすことができるようにしたことにより、その効果が後押しされているという。
写真:: Mercedes AMG
2月14日に発表されたメルセデスF1のニューマシンW11。ダブルタイトル7連覇を懸け、今シーズンに臨むという、重責を背負った1台である。
昨年型W10は、ダブルタイトルこそ獲得したものの、弱点も抱えたマシンだった。それは冷却性能である。W10はラジエターの能力に限界があり、パワーユニットをはじめとした機器を完全に冷却することができず……チームも対策に乗り出したが、シーズン中に解決することはできなかった。その弱点は高温のコンディションとなったオーストリアGPで顕著に表れた。
「冷却のパッケージを改善した」
テクニカルディレクターのジェームス・アリソンは、そう語っている。
「我々は表面積をより増やすようにした。特にマシンの中のラジエターの面積だ。これはペナルティを受けることなく、シーズン中に行なうのは難しいことだ」
「しかしシーズンを跨げば、その対策は可能だ。少し重量は増えることになるが、それ以外の”代償”を払うことはない」
「HPP(メルセデスのハイパフォーマンス・パワートレインズ)が行なった開発の恩恵も受けた。彼らはエンジンの作動温度領域を引き上げるように働いたのだ。これにより、冷却に必要なラジエター面積が少なくなるなど、冷却面への負荷が軽減されることになる」
HPPのエンジン部門のトップであるアンディ・コーウェルは、この作業は昨年オーストリアGPの前からスタートしていたと言う。しかし今シーズンに向けては、さらなる前進を遂げたと自信を持っているようだ。
「昨年の始め、我々のマシンの冷却性能は不十分だった。その結果、いくつかの難しいレースを戦うことになったのだ」
コーウェルはそう語った。
「最初の2戦で十分な冷却能力がないことが明らかになった際、より高い限界温度でパワーユニットを動かす作業に取り掛かった」
「オーストリアでは、冷却水の温度は4度高めても大丈夫だということを証明することができ、レースでの耐久性をわずかに高めるのに役立った。しかしそれでも、チームにとっては非常に厳しい週末だった」
「それ以来我々は、シャシーの冷却システムで冷やす必要がある排熱を、全体的に抑える方向で作業を続けてきた」
「今年に向けては、パワーユニットの全ての冷却水が、これまでよりも高い温度でも作動できるように、多大な努力を払っている。これにより、冷却液とレース中の気温との温度差が大きくなるため、冷却システムの効率が向上する」
「それは難しい挑戦だ。なぜならエンジンの大部分のパーツはアルミニウムで作られており、そして我々がエンジンを動かす時の温度は、素材の特性上、非常に急速に劣化してしまうということを意味する」
「1基のパワーユニットで8レースを走りきるというのは、エンジニアリング面で非常に難しい課題だ。しかし、それが我々の目指しているところだ」
コーウェルは、エンジンがシャシーを助ける必要があると主張する。
「パワーユニットのエンジニアとして我々は、クランクシャフトに伝えるパワーにだけ集中するわけではなく、空力部門の悩みを削減するためにパッケージングの面も重視してきたのだ」
とはいえメルセデスは、2019年シーズンに抜群の信頼性を誇った。チャンピオンとなったルイス・ハミルトンは、パワーユニットの交換によるペナルティを1度も受けなかったのだ。
「ルイスのハードウエアで達成できた信頼性に非常に満足しており、誇りに思っている」
そうコーウェルは語る。
「しかし他のドライバーで経験した、短い距離でのトラブル発生を悲しんでいる。それが我々が注力していることだ」
「我々はその理由、そして直面した品質の問題を理解することに注力している。そしてその根本的な原因に基づいて、再発を封じ込めるために懸命に働いているのだ」
「22戦という年間のレース開催数は、1基のパワーユニットで8レースを走らなければならないということを意味する。そのため、全てのハードウエアに必要とされる走行距離が増えている。だから我々は、信頼性をこれまで以上に重視しているのだ」
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