【F1メカ解説】驚速メルセデスの秘密は、リヤサスペンションにあり?
今季特にコーナリング性能で圧倒的なパフォーマンスを見せるメルセデス。その秘密はリヤサスペンションのレイアウトにあるのかもしれない。
Mercedes W10 rear suspension
Giorgio Piola
ジョルジョ・ピオラ【F1メカ解説】
Analysis provided by Giorgio Piola
昨年までは、そのパワーで優位性を保ってきた感があるメルセデス。しかし今季の最大の強みのひとつが低速コーナーでのパフォーマンスにあることは、今や広く知られるところになっている。
同チームのドライバーであるバルテリ・ボッタスは、その回頭性が素晴らしいパフォーマンスを生むための自信に繋がっていると語った。
「マシンはうまく回転しているように感じる」
今季のメルセデスのマシンW10について、ボッタスはそう語った。
「それは、昨年もしくはその前までの年と比較して、明らかに大きな改善だ。これまでは低速コーナーのいくつかで、僕らが良くなかった例もあった。でも今は、大きな前進を果たした。コーナーの入り口では、マシンのフロント部分は間違いなくずっと良くなっているんだ」
「それはブレーキを少し遅らせたり、コーナーを抜けるまでフロントに頼ることができるということを意味する。昨年と比較して、僕らが望むところにずっと近くなっているように感じている。それは明らかに良い感じなんだ」
このメルセデスの進歩は、フロントサスペンションの開発によって実現されたモノだと言うことができるだろう。プッシュロッドを効果的に短くするこのデザインは、ステアリングを大きく切った時に、ノーズが沈み込むのを助ける。このことは空力性能とフロントタイヤに荷重をかけることを手助けするはずだ。
しかし今季のメルセデスの優位性は、フロントサスペンションだけに答えがあるわけではないようだ。マシンのリヤ部分にも、面白い解決策が存在しているように見える。
メルセデスはリヤのサスペンションに、マルチリンクのレイアウトを採用している。これは、レッドブルがフロントサスペンションに投入した解決策によく似ている。
本記事のメインのイラストは、メルセデスのリヤサスペンションを下から見たものだ。
(1)はロワウイッシュボーンの前アーム、(2)はアッパーウイッシュボーンの後アームになっており、アタッチメントがフロントロッカーリンケージで覆われている。また(3)はプルロッドだ。
しかし最も興味深いのは、このサスペンションの後部にある。(4)のロワウイッシュボーンカバーは、ドライブシャフトまでを覆うようになっている。アッパーウイッシュボーンエレメントの本体は(5)に内包されており、スリットが入れられているのが特徴だ。これにより、マシンの両側に気流を流すことを手助けしていると思われる。
このデザインは、リヤタイヤの温度を管理するためのメカニカル的なメリットを見出すだけでなく、空力的な効果ももたらしている。これらのサスペンションアームは、できるだけ空気抵抗を増やさない形で、ディフューザーの性能を最適化する気流を生み出しているようだ。
レギュレーションでは、ひとつのホイールに対してサスペンションアームは6本までしか使えないことになっている。伝統的には、ウイッシュボーンは2本と数えられるため、これだけで既に4本。プッシュロッドが1本となる。メルセデスは、後輪の水平位置を保持し、トーイン/トーアウトを制御するトラックロッドの役目を、ウイッシュボーンの後アームにも持たせているようだ。
しかしボッタス曰く、低速コーナーでのパフォーマンスだけが良くなったわけではないと言う。
「去年のクルマに比べて、大きな前進がひとつあるというわけではない。それは全体的なことだと思う」
今年最大の進歩はどの部分なのかと尋ねられたボッタスは、そう語った。
「それ(サスペンション)は、機械的に感じることができるものの一部だ」
「しかし、今でもこのスポーツは、空力面が大きな部分を占めていると思う。ストレートではフェラーリに比べて少し遅れているかもしれない。でも、全てのコーナーでは僕らの方が彼らよりも確実に速い。それはダウンフォースによるものだと思う。だから僕は、それが昨年と比較した時の最大の改善だと言うべきだろう」
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