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夏休み特別企画:F1マシンを走らせたMotoGPライダーたち

今年6月、MotoGP王者のマルク・マルケスがレッドブルのF1マシンを走らせ、話題となった。しかしマルケス以外にも、F1マシンを駆ったライダーが複数存在する……

Marc Marquez

Marc Marquez

Red Bull Content Pool

 今年6月、MotoGPの王者であるマルク・マルケスが、トロロッソ・ホンダのカラーリングが施されたレッドブルのF1マシンをドライブした。マルケスにとってこれが、F1マシン初ドライブ。にもかかわらず、印象的な走りを披露したという。

 ただ、F1マシンをドライブしたMotoGPライダーは、何もマルケスが初めてではない。これまでにも複数のチャンピオンがF1マシンのフィーリングを経験。中には実際に参戦計画が持ち上がった者、そして2輪と4輪の双方で世界チャンピオンになった者……様々な事例がある。その一部を紹介していこう。

1. マルク・マルケス(2018年)

マルク・マルケスが走らせたトロロッソ・ホンダカラーのレッドブルF1

 4度のMotoGPチャンピオンに輝き、今シーズンもランキング首位をひた走っているマルク・マルケス。そのマルケスは今年の6月に、レッドブルリンクでレッドブルRB8(2012年)を走らせた。

 マルケスがホンダのライダーだということもあってか、マシンはトロロッソ・ホンダのカラーに塗られ、準備が整えられた。そして、途中スピンする場面もあったが、43周を走破。motorsport.comの計測によれば、1分14秒9のベストタイムを記録した。

 ちなみに、今年レッドブルリンクで開催されたオーストリアGPのポールポジションタイムは、1分3秒130(バルテリ・ボッタス)。これに比べれば、10秒以上も遅いタイムだが、マルケスがこの日走らせたマシンは、KERSとDRSが作動していないものであったという。

 走行を終えたマルケスは「素晴らしい経験だった。少しずつ物事を理解し、楽に走れるようになっていった。一生忘れることはない」と感想を語った。またこの日コーチ役を務めたマーク・ウェーバーは「印象的な走りだった。彼は少しずつタイムを削り取っていったんだ」と、その走りを絶賛した。

 また、昨年のF1王者であるルイス・ハミルトンは「今回のようなことはとてもエキサイティングだ。彼(マルケス)のような”レジェンド”がやってくるなら、僕は歓迎する」と、F1転向を勧めるようなコメントを発している。

 なおマルケスと同じタイミングで、ダニ・ペドロサもレッドブルのF1マシンを走らせている。

2. ホルヘ・ロレンソ(2016年)

メルセデスF1マシンを駆るホルヘ・ロレンソ

 当時ヤマハのライダーとしてMotoGPを戦っていたホルヘ・ロレンソは、2016年の10月に、メルセデスW05を走らせた。舞台はシルバーストン・サーキットだった。

 ヤマハのMotoGPチームとメルセデスF1チームの両方にスポンサードするエナジードリンク企業”モンスターエナジー”社のイベントで、ロレンソのF1ドライブが実現。GP2マシンやシミュレータでのテストを経て、F1走行に臨んだ。

「夢が叶った」と語るロレンソは、F1マシン初ドライブの感想を、次のように表現した。

「ドライブするのは比較的楽だった。マシンはコーナーですごく速かったし、グリップは現実とは思えないほどだった。コーナーはMotoGPと比べても別世界だった。40km/hも速いんだ」

 ロレンソはフィードバックを受ける度にそれを自らの走りに取り入れ、ペースを上げていったという。それを見たメルセデスF1チームは「彼が二輪の世界で、何回もワールドチャンピオンになった理由がわかった」と語った。

3. バレンティーノ・ロッシ(2004年4月〜2007年)

フェラーリのコクピットに収まり、エンジニアと会話するロッシ

 MotoGP界の伝説とも言えるバレンティーノ・ロッシは、フェラーリのF1マシンを複数回走らせている。

 彼が初めてF1マシンのステアリングを握ったのは、2004年の4月。フェラーリのテストコースも兼ねるフィオラノを走行した。この走行にはミハエル・シューマッハーも立ち会っており、次のように語った。

「慣れるまで時間はかかったが、この日終盤の彼はとても印象的だった。自分の本能で走り、何をすべきかを理解していたんだ」

 また2006年にもフェラーリにマシンを走らせている。しかもこの時はプライベートテストではなく、バレンシアでの合同テスト。当然、他のチームやドライバーらも多く走っていたのだ。そして、シューマッハーのベストタイムから0.7秒落ちで走行。周囲を驚かせた。

 同年限りでシューマッハーはF1を退いた(1回目の引退)が、その後任候補のひとりとして、当時ロッシの名前も挙がった。それは実現せずに、キミ・ライコネンが加入。しかし同年のライコネンがタイトルを獲得したのを考えれば、もしロッシが加入していたら……夢が膨らむ話である。

 また、2009年のハンガリーGPでフェリペ・マッサが負傷した後、その代役としてもロッシの名が挙がった。その時は実際にテストできる日がほとんどなく、実現していたらぶっつけ本番でのグランプリ出走……ということになったが、それも実現せずに終わった。またフェラーリは、サードカーの出走が許された場合、ロッシを走らせるという計画もあったようだ。

 最もF1デビューに近づいたMotoGP王者、それがロッシだったと言っても過言ではないだろう。

4. ジョン・サーティース(WGPとF1の両方でチャンピオン)

1967年のイタリアGPでホンダRA300を駆るサーティース

 MotoGPの前身とも言えるWGP(世界グランプリ)時代に最高峰クラスで4度のチャンピオンを獲得。その後F1に転身し、1964年に王座獲得。2輪世界選手権とF1の両方でチャンピオンになった、唯一の存在である。

 WGPでは、500ccクラスで1956年、1958〜1960年まで王者に輝き、小排気量の350ccクラスでも1958〜1960年の3回にわたってチャンピオンになっている。最高峰500ccクラスでは、通算22勝……通算勝率8割以上という驚異の成績を残している。

 その後はF1に転向。1960年のデビュー戦モナコGPこそリタイアに終わったものの、2戦目のイギリスGPで2位表彰台を獲得。通算勝利数は6勝ながら、1964年にはフェラーリを駆ってF1ワールドチャンピオンに輝いた。

 また彼のF1での最後の勝利となった1967年イタリアGPは、ホンダRA300でのもの(ホンダのF1通算2勝目)だった。

*****************

 一方で、MotoGPマシンを走らせたF1ドライバーも存在する。いずれのカテゴリーも、世界最高を決める戦い。そのフィーリングを経験してみたい……そう想うのが、チャンピオンの”性”なのだろうか?

番外編1. フェルナンド・アロンソ(2016年)

マルケスとランデブー走行を披露したアロンソ

 フェルナンド・アロンソの母国はスペイン。現在MotoGPではスペイン国内で年間4レースが行われ、前出のマルケス、ロレンソ、ペドロサら、数々のトップライダーを輩出している。

 そのアロンソは、2016年にツインリンクもてぎで行われたHonda Racing Thanks Dayにおいて、ホンダのMotoGPマシンで走行。マルケスとランデブー走行を披露した。

 近年のアロンソは、既報の通り世界三大レース(F1モナコGP、ル・マン24時間、インディ500)完全制覇を果たすことを目標に掲げてきた。今年ル・マンに勝ったことで、残すはインディ500のみ。それを成し遂げたあかつきには、MotoGPに参戦する……などということはないのだろうか?

番外編2. ミハエル・シューマッハー(2007年他)

ドゥカティのMotoGPマシンをテストするシューマッハー

 ミハエル・シューマッハーは、フェラーリに在籍していた2006年限りでF1から引退。後に所属チームをメルセデスに替え、再挑戦してすることになる。

 しかし1回目のF1引退翌年の2007年、ドゥカティのMotoGPマシンをバレンシアで走らせ、好タイムを記録した。また翌年にもドゥカティのテスト走行を担当している。

 シューマッハーは、F1から退いていた間にドイツ国内選手権にも参戦。しかし2009年の2月にレースに出走した際に転倒し、首を負傷してしまう。この怪我が原因で、同年のハンガリーGPでフェリペ・マッサが負傷した際に代役を務めることができなかった。

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