コラム
F1
神野研一のF1オフシーズンエンジニア日記 ~F1新車発表の舞台裏~
フォースインディアやアストンマーティンで活躍したF1エンジニア、神野研一氏のコラムをお届け! 第2回のテーマは、F1チームが新たなシーズンに臨む新車発表の舞台裏だ。
神野 研一
公開日時: 2024/02/01 11:23
Copy link
Viberでシェア
Google検索でmotorsport.comをお気に入り登録

少し遅くなりましたが、皆さん明けましておめでとうございます。今年もコラムを執筆させて頂くことになりましたが、読者目線で分かりやすい記事をお届けできるよう頑張りますので、今年もよろしくお願いいたします。
さて、そんな新年の挨拶もほどほどに、今回のコラムではF1新車発表の舞台裏について紹介しようと思います。2024年シーズン開幕が待ち遠しくて仕方ないというF1ファンの皆さんの話題提供になれば幸いです。
■新車発表までの舞台裏は超タイトスケジュール!
前回のコラムでも少し紹介しましたが、年明けはチーム全体が超多忙になります。例えば設計部門は、提出期限が絶対遵守の多くの出図作業に追われます。もし出図が遅れるとプレシーズンテストで新車を走らせることができなくなる……そんなリスクに繋がるので、職場は緊張感に包まれます。
また、レースチーム、R&D部門、ビークルダイナミクス部門は新車の最終チェックのための実験に追われます。出図を経てファクトリー内で製造されたパーツをメカニックたちが着々と組み上げると、それまでCADデータ上でしか存在していなかったマシンがいよいよ現実になります。そして感慨に耽る時間もなく、すぐにマシンは台上実験室へと運ばれて行きます。
日本ではR&D部門というといわゆる研究開発部門という意味合いで使われることが多いですが、イギリスでは”実験”開発部門というより狭い定義で使われます。例えばフロントウイングの変形量の計測とその治具の設計などを担当しており、様々な検証実験を担当しています。
そして台上実験室では、主にサスペンションキネマティクス(サスペンションの3次元幾何学的な動き)の確認、サスペンションコンポーネントの特性実験、ウイング類の剛性実験など、車両の各システムの性能チェックだけでなく、レギュレーションに準拠しているかどうかをR&D部門が確認します。
ここで紹介できるのは全体の作業のごく一部であり、数え上げたらキリがないほどにたくさんの実験項目があります。ちなみに、この時点で組み上がっているマシンは一台限り……。各部門がこの一台のマシンをタイトなスケジュールで共有し、全ての実験をこなさなくてはならないのです。このため場合によっては深夜から実験スタートすることも決して珍しくありません。
もちろん、こういった走行前のシステムの特性チェックや確認実験により現代F1マシンの高い信頼性が成り立っていることも特筆すべきことです。自分も台上試験を担当していたので、その信頼性確保には少しは貢献していたかと思いますが、本当に多くの仲間に支えられてもらったからこそ、無事にマシンをサーキットへ送り出すことができました。
■チームから見た新車発表
Lance Stroll, Aston Martin AMR23
そんな多忙なF1チーム、特に開発技術陣からすると、新車発表は『できればリバリーの発表だけで済ませてもらえませんかね……』というのが偽らざる本音でしょう。近年のF1マシンの新車発表では、ショウカー(Show car)という展示用に作られたマシンに新シーズンのスポンサーやカラーリングを施した発表になる傾向があります。
例えば2023年のレッドブルの発表会はまさにそのパターンで、その発表会場はなんとアメリカはニューヨークでした。前述した通り、新車は走行に向けて様々な実験や検証をこなしている真っ最中です。もちろん、その新車をニューヨークに送る余裕は全くありません。こういった背景を知っていたので、新車発表の場所がニューヨークと発表された段階で『なるほど、レッドブルの新車は恐らくプレシーズンテストで初お披露目になるのだな』と自分はすぐに予測することができました。
一方でF1ファンやメディアに最も喜ばれるパターンがここ最近のアストンマーティンでしょう。2021、2022、2023年と三年連続で実際の新車を発表し続けてきました。特に2023年は独自色の強いデザインで、ウォータースライダー式のサイドポッドはF1のトレンドにもなりました。2022年以降は先行開発の仕事に従事していたため、自分はそこまで超多忙ではありませんでしたが、シーズン開幕前の超多忙な2月にしっかりと新車発表に漕ぎつけたチームは本当に称賛に値すると思います。
■今シーズンの注目ポイント
Photo by: Andy Hone / Motorsport Images
Ayao Komatsu, Chief Engineer, Haas F1 Team, Kevin Magnussen, Haas F1 Team, on the Sprint grid
今年の新車発表において、日本人F1ファンの多くが注目するポイントとしてはハースF1チームの小松礼雄チーム代表による新車発表が挙げられます。小松代表とはミルトンキーンズのカートサーキットで開催された24時間耐久カートレースに一緒に参加するなど、ご家族とも個人的に交流させて頂いたことがあります。
その24時間耐久レースに向けて一緒に事前の練習走行をした時のことです。僕が迂闊にインを空けるとものすごい勢いでオーバーテイクを仕掛けてくるアグレッシブさが小松代表にはありました。その時の勝敗については敢えて言及しませんが(笑)、僕の小松代表への印象としては『闘将』、『漢気』、『情熱』という言葉で、義理人情に厚く、とことん勝ちに拘る人物でした。その小松代表が新車発表イベントを皮切りに、チームをどのように牽引していくのか? 数多の困難が待ち受けていることは想像に難くありませんが、小松代表の今後の更なる活躍に注目したいと思います。
2月は各チームの新車発表が目白押しとなっています。F1ファンの皆さんにとっては『早く今年の本当の新車を見たい!』という強い思いがあるので、リバリーだけの発表だった場合はガッカリしてしまうかも知れません。しかし、今回のコラムでも書いたようにそのバックグラウンドでチームは膨大な準備に取り組んでいます。なので、そのガッカリ感はそっと心の隅に置き『プレシーズンテストでは最高のマシンを見せてくれるはずだ!』と改めて期待感を高めてもらえればと思います。
今シーズンも素晴らしいレースが展開されるであろう2024のF1も開幕まであと少しです。皆さん、楽しみに待ちましょう!
あなたの意見が聞きたい!
Motorsport.comで何を見たいですか?
5分間のアンケートにご協力ください。
- Motorsport.comチーム
関連ニュース :
記事をシェアもしくは保存
Copy link
Viberでシェア
前の記事 いよいよ到来F1 2024年シーズン。レギュレーション変更点やカレンダー、ドライバー……開幕前に知っておきたい6つのこと
次の記事 ルイス・ハミルトンのフェラーリ電撃移籍が正式発表! 黄金時代築いたメルセデスは今季限りで離脱……跳ね馬株価も過去最高値を更新
最新ニュース

ガスリー本人にとっても、初ポールポジション獲得は予想外「土曜日に向けて微調整したら自信が増した。決勝で順位を守れたらいいね!」
F1
F1 F1
イタリアGP
32 分前
ガスリー本人にとっても、初ポールポジション獲得は予想外「土曜日に向けて微調整したら自信が増した。決勝で順位を守れたらいいね!」

加藤大翔、連勝逃すも3位! 2戦連続表彰台獲得。りー&山越も入賞。日本勢大活躍|FIA F3モンツァ フィーチャーレース
FIA F3
F3 FIA F3
Monza
1 時間前
加藤大翔、連勝逃すも3位! 2戦連続表彰台獲得。りー&山越も入賞。日本勢大活躍|FIA F3モンツァ フィーチャーレース

史上初の予選Q1敗退“100回”!! アストンマーティンのストロール、不名誉な記録を樹立
F1
F1 F1
イタリアGP
1 時間前
史上初の予選Q1敗退“100回”!! アストンマーティンのストロール、不名誉な記録を樹立

レッドブルのクルマは「”紙”でてきてるようなもの」 フェルスタッペン、劣化するマシンに不満と諦め
F1
F1 F1
イタリアGP
4 時間前
レッドブルのクルマは「”紙”でてきてるようなもの」 フェルスタッペン、劣化するマシンに不満と諦め
Subscribe and access Motorsport.com with your ad-blocker.
フォーミュラ 1 から MotoGP まで、私たちはパドックから直接報告します。あなたと同じように私たちのスポーツが大好きだからです。 専門的なジャーナリズムを提供し続けるために、当社のウェブサイトでは広告を使用しています。 それでも、広告なしのウェブサイトをお楽しみいただき、引き続き広告ブロッカーをご利用いただける機会を提供したいと考えています。
次の 2 つのオプションがあります。
- サブスクライバーになります。
- 広告ブロッカーを無効にします。
購読中 すでに購読していますか? ここからサインインします
広告ブロッカーを無効にしましたか?
ページをリロード
お知らせの管理
登録