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コラム

セーフティカーはもはや“時代遅れ”なのか? 海外記者が徹底考察

セーフティカーはF1に留まらず、WEC、スーパーGTなど、現在は様々なカテゴリーで導入されている。セーフティカーの是非、バーチャルセーフティカーなどの先進的システムが持つ可能性について、海外記者はどう考えているのだろうか?

The Safety Car George Russell, Mercedes F1 W11

The Safety Car George Russell, Mercedes F1 W11

Zak Mauger / Motorsport Images

 今日のモータースポーツにおいて欠かせなくなっているもののひとつに、セーフティカーがある。セーフティカーは事故やトラブルなどでコース上に危険が発生した場合、それを円滑に処理するために出動するものだ。セーフティカーが先導する間、各マシンは追い越しをすることなく、スロー走行でセーフティカーの後ろに隊列を組む。その間にコースマーシャルたちが事故車両や散らばったパーツなどを回収し、コースが安全な状態となった後にレースが再開される。

 しかしながら、セーフティカーは“競争”の性質に反するものであり、セーフティカーが勝敗を分けたり、思いもよらぬ番狂わせを起こすことが多々ある。そのため、21世紀となった現代ではもっと良い方法があるのではないかという議論があるのも確かだ。

 セーフティカーは果たして時代遅れなのだろうか? もし時代遅れなのだとしたら、現代のより良い解決策とは何なのだろうか?

 今回は様々なカテゴリーにおけるセーフティカーについて考察していくが、インディカーのオーバルレースでの“フルコースコーション”に関しては議論の対象外とする。それはもはやアメリカンオープンホイールにおけるエンターテインメントの一部と化しており、欠かせないものとなっているからだ。ここでは“通常のサーキット”でセーフティカーがどのような結果をもたらしているかについて考えていく。

F1:なぜ周回遅れのドライバーを救済するのか?

The Safety Car leads Sergio Perez, Racing Point RP20, and Esteban Ocon, Renault F1 Team R.S.20

The Safety Car leads Sergio Perez, Racing Point RP20, and Esteban Ocon, Renault F1 Team R.S.20

Photo by: Mark Sutton / Motorsport Images

 他のモータースポーツカテゴリーと比べると、セーフティカーがレースに与える影響はそれほど破滅的なレベルではないかもしれない。依然としてマシンの性能差がチームによって非常に大きいからだ。しかし、セーフティカーラン中に周回遅れのマシンが同一周回に戻ることができる現行ルールは、非常に不公平と言える。

 例えばこのようなシナリオだとどうだろう……ルイス・ハミルトンがコントロールを失ってグラベルにハマってしまった。彼は危険な位置にいたという理由から、外部の力を借りてマシンを動かしてもらい、周回遅れになりながらもコースに復帰。それと同時にセーフティカーが出動した。ハミルトンはセーフティカーラン中に同一周回に戻り、集団の後方につけることができた。そして彼はその間にタイヤ交換も済ませたため、フレッシュタイヤで追い上げを開始。最終的にポイント圏内でフィニッシュした。

Markus Winkelhock, Spyker F8 VII leads behind the safety car

Markus Winkelhock, Spyker F8 VII leads behind the safety car

Photo by: Sutton Images

 これは架空のシナリオではなく、2007年のヨーロッパGPで実際に似たようなことが起きている。ハミルトンはこの時9位でフィニッシュしたが、当時のポイントシステムでは8位までが入賞だったため、彼はノーポイントに終わっている。ただタイヤ選択次第では優勝もあり得たような状況だった。

 ヨーロッパGPでの出来事を受けて、周回遅れのマシンを救済するルールは不公平だとして廃止された。しかしこのルールは2012年に復活。その理由は、リスタート時にレースリーダーと2番手の間に周回遅れのマシンがいると、レースリーダーが有利になり過ぎるからという何とも理不尽なもの。レースリーダーは既にセーフティカーによってそのリードを台無しにされているというのに。

 この救済ルールの弊害は他にもある。バーレーンの高速レイアウトで行なわれた2020年のサクヒールGPでセーフティカーが出動した際、ただコース上に落ちたフロントウイングを回収しただけにも関わらず、隊列を整えなければいけないために8周もセーフティカーランが続いたのだ。

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WEC&IMSA:マルチクラスのレースにおいてセーフティカーは禁物

Safety car leads the field in bad weather conditions

Safety car leads the field in bad weather conditions

Photo by: Alessio Morgese

 現在WEC(世界耐久選手権)の1戦に組み込まれている伝統のル・マン24時間レースでは、60台以上のマシンがサルト・サーキットを周回しているため、頻繁にセーフティカーが出動する。そこで我々が確認しなければならないのは、4つ存在するクラスのいずれかに大きなギャップが生まれていないかだ。

 というのも、ル・マン24時間では計3台のセーフティカーが同時にコースインする。そのため各クラスの隊列がバラバラに分断されてしまい、怒りと混乱と不公平なアドバンテージしか生まない状況が発生する。

 セーフティカーがピットレーンから出てくる時に運良くその横を通過できたドライバーは、その前を走るセーフティカーの隊列の最後方につけることができる。つまり1/3周分得をするといっても過言ではない。一方で自分の目前にセーフティカーが入り込んでしまった不運なドライバーは、1/3周分損をするということになる。

Safety car on track

Safety car on track

Photo by: Joe Portlock / Motorsport Images

 LMP2クラスやLM-GTE Proクラスといった競争の激しいクラスでは、この旧態依然としたルールの影響でル・マンでのリザルトが滅茶苦茶となることもしばしばある。熾烈な競争が繰り広げられる今日のル・マンでは、一度バラバラになってしまったクラスの隊列が元に戻っていく可能性はほぼゼロに近い。

 WECの通常のレースでも、セーフティカーが競技に悪影響を及ぼすことがある。例えばセーフティカーが出た段階で、総合トップにつけているマシンがLM-GTE Amクラスの2番手以下を全て周回遅れにしていたとする。ただそうなった場合、唯一周回遅れになっていないLM-GTE Amクラス首位のマシンは、セーフティカーラン中に同クラスのライバルのすぐ後ろにつけることができる。つまりほぼ1周のアドバンテージを得ることになるのだ。

Pace Car

Pace Car

Photo by: Richard Dole / Motorsport Images

 IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権では、少なくとも後者の問題を回避するためのシステムを編み出している。まずピットレーンはプロトタイプクラスのマシンにのみ開放され、1周後にGTカークラスに開放される。つまり、プロトタイプのマシンが一斉にピットインしている間に、GT勢は周回遅れを取り戻し、隊列を整えるチャンスが生まれる。

 これは競技の面では公平と言えるが、F1のようにセーフティカー先導の時間が長引いてしまう。最近では、1月に行なわれたデイトナ24時間でピットストップ後の隊列に混乱が生じ、観客が35分ものコーションに耐えなければいけないという事態が発生した。

インディカー&DTM:セーフティカーはもはやルーレットのよう?

Safety car on track

Safety car on track

Photo by: Alexander Trienitz

 インディカー(前述の通りオーバルは除く)とDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)は基本的に同じ問題を抱えていると考えられる。セーフティカー(アメリカでは一般的にペースカーと呼ばれる)が出ている時にピットレーン入口が閉鎖されることだ。それは混乱を巻き起こし、選手権を左右するものになりかねない。

 これに関しては同じ話が何度も繰り返されているが、レース中にピットストップの必要性があるにも関わらず、セーフティカー中にピットインが制限されるインディカーとDTMでは、セーフティカー出動時にピットストップを済ませているか、済ませていないかが大きく勝敗を左右する。セーフティカーが入った時点でピットに入っていなかった者は、レース再開後の隊列が接近した状態で入らざるを得ないため、大きくタイムをロスする。ほとんどの場合、ドライバーに非はなく、むしろ他より燃費の面で優秀だということさえある。

Honda Civic Pace Car in action

Honda Civic Pace Car in action

Photo by: Phillip Abbott / Motorsport Images

 そういった理由から、インディカーでもDTMでも、ドライバーはセーフティカー出動で不利益を被らないために、できる限り早くピットに入ろうと考える。しかし仮にセーフティカーが入らないのであれば、ピットストップを遅らせて各スティントでタイヤを均等に使った方が有利だ。

 もはやそれはスポーツではなく、運否天賦に頼ったクジ引きのようなものである。

 インディカーとDTMに関わる誰もが、こういった問題があることを理解している。しかしルール改正への関心は薄い。関係者たちは、“予測不可能性”がモータースポーツの魅力のひとつだと主張して、この種の議論を避けようとする。

 確かにモータースポーツは一種の娯楽であるので、ある程度予測不可能なものであるべきだ。しかし、“予測不可能”と“不公平”を混同してはならないのだ。

スーパーGT:“整列”制度が落とし穴に?

Safety car

Safety car

Photo by: Masahide Kamio

 スーパーGTは、マルチクラスのレースが持つ前述の問題を解決しようとしているが、その解決策は逆に新たな問題点を生んでいるようにも思える。その解決策というのは、GT500、GT300の両クラスが一旦スタート/フィニッシュライン上で整列し、クラスごとに隊列を整えた後、GT500、GT300の順で再発進するというものだ。

 ここまで聞くと、クラスがバラバラになってしまうという先に述べた問題が解決されたので、問題ないように思える。しかし問題となるのは、隊列が整うまでピットレーン入口が閉鎖されてしまうということだ。

 つまり、SC出動時点でピットイン、ドライバー交代を済ませていないマシンは、インディカーやDTMのように、既にピットインを済ませていたマシンに順位を奪われてしまう。それだけでなく、前述の“整列が”あることで、本来周回遅れにしていたはずのマシンにも前に出られてしまい、一気にクラス最下位付近まで落ちる可能性があるのだ。昨年のスーパーGTでも、セーフティカー出動で勝機を逸してしまった不運なケースが見られた。

 ここまで紹介してきた例は全て、セーフティカーが持つ根本的な問題を示している。その問題に対して独自の対処法を講じている選手権もあるが、それがさらなる複雑化を引き起こし、選手権に悪影響を及ぼしてしまうこともある。

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VSC&FCYが現状の最善策?

Stoffel Vandoorne, ART Grand Prix, passes under a 'VSC - Virtual Safety Car' board

Stoffel Vandoorne, ART Grand Prix, passes under a 'VSC - Virtual Safety Car' board

Photo by: GP2 Series Media Service

 適切に使用されれば、競技面ではるかに良い解決策になり得るものが既に開発されている。バーチャルセーフティカー(VSC)とフルコースイエロー(FCY)だ。どちらの場合も車速は大幅に落ちるが、車両同士の間隔と順位はそのまま維持される。

 先行車が車速を落とすために急ブレーキをかけ、そこに追突してしまうという問題も当初はあったが、現在では対処されている。今ではレースディレクターが全てのマシンと連絡を取り、VSCやFCYの開始、終了のタイミングをカウントダウンで知らせるようになったため、より安全になった。

 無線コミュニケーションにトラブルが起こった場合にも、コックピットにあるディスプレイでカウントダウンを視覚的に確認できるようになっている。もちろんバックアップのオプションとして、旗などで知らせることもできる。

Virtual Safety Car lights being tested

Virtual Safety Car lights being tested

Photo by: Mark Sutton / Motorsport Images

 VSCとFCYには明らかなメリットがある。各車のギャップが維持される上に、安全が確保されればすぐに解除することができる。周回遅れのマシンをラップバックさせるための不必要に長い時間や、その他のギミックも完全に排除されている。

 ただ現時点でひとつ問題が残っている。VSCやFCYが出ている時にピットストップをした際のロスタイムが通常よりもかなり少ないという点だ。F1やWECでは、VSCやFCYのタイミングで運良くピットを済ませ、勝負を決めた例がある。

 しかしながら、これを解決する方法は簡単だ。VSC/FCY中はピットレーン入口をクローズにし、ガス欠しそうなマシンやタイヤがパンクしたマシンの緊急ピットインのみを例外的に許可すればよいのだ。インディカーでは通常のコーション時にこのルールを採用しており、うまく機能している。

 それでも緊急ピットストップをしたマシンは命拾いをすることになるため、100%の公平性が確保できているとは言い難いが、現時点では最も公平な解決策と言えるだろう。

時代は“アナログ”から“デジタル”へ

Le Mans slow zones

Le Mans slow zones

Photo by: Autosport

 ル・マン24時間レースで運用されているスローゾーンも、検討に値する解決策だ。スローゾーンはサーキットをいくつかの区間に区切り、危険のある区間を通過する際だけ一定の速度に落とす、というもの。しかしこれにはセーフティカーと同じような欠点がある。

 公平を期すために、スローゾーンはそこを低速で通過した最初のマシンが再び当該区間を通過する直前に解除しなければいけない。危険が取り除かれた直後に解除すると、ゾーンを通過せずに済んだマシンが得をするためだ。

 ただそれはつまり、スローゾーンが必要以上に長い間発動される可能性がある、ということを意味する。また、前述の方法でスローゾーンを解除したとしても、タイミングを見計らってピットインすれば、スローゾーンを一度も通過せずタイムロスを防げる可能性もある。そのため、競技面ではVSCとFCYがより良い解決策と言える。

 しかしながら、スローゾーンには他にない利点もある。スローゾーン以外の区間では通常のレースが繰り広げられているため、危険のある区間以外にいるドライバーに影響を与えずに済むのだ。特にスタート直後のバトルが多い時間帯には、それが役立つだろう。

 時代は変わりつつある。VSCやFCY、スローゾーンはデジタル時代の新しい解決策だ。一方セーフティカーはアナログ時代の名残とも言える。

 新しい現実に適応する時が来たのだ。

 

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