メルセデスの”とんでもない”ペースは、デザインをコピーする価値がある?
メルセデスの昨年型マシンのデザインを真似たクルマで、驚異的なパフォーマンスを見せるレーシングポイント。ウイリアムズもその手法を、真剣に検討すべきだと考えている。
写真:: Mark Sutton / Motorsport Images
今季レーシングポイントが果たした進歩は、F1に大きな論争を巻き起こしている。そのマシンは、昨年型のメルセデスに酷似しており、”ピンク・メルセデス”とも揶揄されている。
レーシングポイントはマシンのデザインについて、レギュレーションで許された範囲内で行なったと主張。しかしブレーキダクトの設計については、ルノーが正式に抗議しており、近日中にもその裁定が下されるモノとみられる。
ただレーシングポイントが大幅にパフォーマンスを向上させたのは間違いなく、同チームが採った手法……つまり強豪チームのデザインを真似るという形を、小規模なチームは追従しなければならないのではないかとも思われる。とはいえ、来季に向けてはシャシーの開発が凍結されており、2022年からはマシンのレギュレーションが大幅に変更されることなっている……つまり、レーシングポイントのように他チームのマシンを模倣しようとしても、短期的にそれを実現することはできない。
ウイリアムズのビークルダイナミクス責任者のデイブ・ロブソンは、他チームのマシンをコピーすることについて不安を抱いていたとしても、メルセデスの卓越したパフォーマンスを考えれば、可能な限りの範囲でクローンを作ることを、全てのライバルが考えることになるだろうと語る。
「おそらく、そうしなければならなくなる可能性はあるだろう」
メルセデスのコピーを作る可能性があるかどうか尋ねられたロブソンは、そう語った。
「かなり長い間、メルセデスが傑出したマシンであるのは明らかだと思う。レッドブルとフェラーリは、特定のサーキットでは優れていることもあった。しかし、メルセデスはどこでも速いパッケージだ」
「ハンガリーでのペースは驚異的だった。フィールドの他と比べると、境界があるようだった」
「その厳しい現実を目の当たりにし、レーシングポイントがやったことを考えれば、その手法を真剣に検討する必要があるだろう。ラップタイムを大きく短縮でき、それを見出すための方法があるなら、そのルートを辿る必要があると思う」
ロブソン曰く、ライバルチームのマシンを真似る際の最大のハードルは、そのデザインの背後にある概念を理解することだと言う。
「コピーというのはずっと、我々のゲームの重要な部分であり続けてきた」
「難しいのは、これらのマシンは非常に複雑であり、コピーするのに本当に必要なのは、コンセプトだということだ」
「だからマシンの全てを写真に撮り、全てのビデオ映像を見て、メルセデスがどうやってその部分を機能させているのかを理解することができれば、自分でもそれを機能させることができる」
「一部のパーツは、車高の選択にも影響する。そして空力の面で、重要なモノもある」
「そういうモノをすべてコピーし、それがどうやって機能するかを理解し、それを自分たちのマシンで機能させることができるようになれば、それは正当な戦いになる。何の問題もない。それは全て、このゲームの一部だと思う。そして彼らは、その点で非常に良い仕事をした」
レーシングポイントは、メルセデスのコンセプトを最初に風洞実験にかけた際、それをしっかり機能させるのに苦しんだと明かしている。ロブソンもこれに同意。コピーしたとしても、それが自動的に結果につながるわけではないというリスクがあると認める。
「おそらくレーシングポイントは、2021年に状況が大きく変化すると感じていたはずだ。でも今ではそれは2022年に先送りされた。彼らにはそのリスクを負う余裕があり、財政面でも安定していた。だから今回のことが裏目に出ていたとしても、おそらくそれが問題になることはなかっただろう」
そうロブソンは語った。
「コンセプトを完全に変えることは、信じられないほど難しい決断だと思う。それをコピーして理解し、機能させることができると自信を持っていなければならないんだ」
「それが必要とされるコンセプトだ。ただ、写真を撮ってコピーするだけではうまくいかない。非常に複雑なことなんだ。ただ、彼らが今回のアプローチで成功したことを考えれば、それを真剣に検討する必要があるだろう。このことを本当に、本当に、真剣に捉えなければいけない」
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