エンジニアの助言を完全無視したオーバーテイクが勝因に。バクー戦振り返るピアストリ「あのチャンスを逃したら次はないと思っていた」
オスカー・ピアストリは、F1アゼルバイジャンGPでの優勝を手繰り寄せたオーバーテイクは、エンジニアの指示を無視した結果のものだったと語った。
Oscar Piastri, McLaren MCL38, Charles Leclerc, Ferrari SF-24
写真:: Dom Romney / Motorsport Images
F1第17戦アゼルバイジャンGPでは、マクラーレンのオスカー・ピアストリが2勝目を挙げた。2番グリッドからスタートしたピアストリにとっては、レース中盤にポールシッターのシャルル・ルクレール(フェラーリ)をオーバーテイクしたことが勝負の分かれ目となったが、本人が当時の状況を語った。
51周目で争われたアゼルバイジャンGPは、ミディアム→ハードと繋ぐ1ストップが主流のレースに。ピアストリはルクレールに先んじて15周でピットインすると、ルクレールもそれに反応する形で翌周にピットへ。ピアストリの前でコース復帰することに成功したが、2台は接近する形となった。
そして20周目、ピアストリはターン1への飛び込みでルクレールの前に立ち、首位奪取。その後ルクレールは再三ピアストリに仕掛けるものの最後はタイヤも厳しくなり力尽き、2位に終わった。
ピアストリは表彰式前のクールダウンルームでルクレールに対し、ターン1でのオーバーテイクは止まり切れずにウォールに突っ込んでしまうか五分五分に感じたと説明していた。またその後のインタビューでは、リスクを負ってオーバーテイクするのは「今しかない」と感じた結果、エンジニアのトム・スタラードからの「タイヤを労わるように」という指示を無視したことを明かした。
「ピットストップの後は半々の確率でチャンスがあると思ったので、そこを狙うしかないと思った」とピアストリは言う。
「それ(タイミングの妙)が勝因になったと思う。最初のスティントで同じようなことをしてタイヤを完全に使い切ってしまったから、僕のレースエンジニアには申し訳ないことをした。彼は無線で『もうそういうことはしないようにしよう』と言ってきたんだ」
「僕は次のラップでそれを完全に無視して、インに飛び込んだんだ……」
「あの時点では、シャルルの後ろについてデグラデーション(タイヤの性能劣化)が起きるのを待つのは無理だと思ったんだ。そうなると2位をキープするような展開になると思ったんだ」
「あのチャンスを逃したら、次はないと思っていた。それに、シャルルを信用していたということもある。彼は本当にフェアだからね。彼としても、僕が曲がり切れずに飛び出すと思っていたかもしれないけど、コーナーを曲がれたのは自分でも驚きだった」
「ハイリスクかつ大きな決断だったけど、あそこは勝つためにもトライする必要があった」
ただ当然、あのオーバーテイクがピアストリの優勝を100%決定付けたわけではなかった。ピアストリは約30周に渡ってルクレールに攻め立てられたが、巧みにディフェンスしたことでなんとか抑え切ることに成功し、最後はルクレールをDRS圏外に追いやった。
「これだけ長い間プレッシャーに耐えるのは大変だった」とピアストリは振り返る。
「リードを奪ったことで40%くらいは仕事をしたと思うけど、それを守り切ることが残りの60%だと思っていた。前に出るためにタイヤをかなり使ってしまっていて、その影響がどれほど大きいかも最初のスティントで分かっていた。でも前にいてクリーンエアで走ることがプラスになることを期待していたんだ」
「実際少しはプラスになったと思うけど、DRSを使われることでタイムを失うし、その中で後ろのシャルルを抑えるのは相当ストレスのかかることだった。ひとつのミスも許されない。結局少しはミスをしたけど、バクーのようなコースでは全力で走ってノーミスなんて実際には不可能なんだ」
「幸運にもそれは大きなミスではなく、痛手にはならなかった。個人的にはベストレースのひとつだったと思う」
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