ネルソン・ピケ、ハミルトンへの人種差別発言で1億2,400万円の罰金。母国ブラジル法廷で裁かれる

　ブラジル裁判所は、人種差別的、同性愛嫌悪的言葉を発した3度のF1世界チャンピオンであるネルソン・ピケに対して、約95万ドル（1億2,4000万円）の罰金を科した。

　事の発端は2021年11月。ブラジルのポッドキャストに出演したピケが、ルイス・ハミルトン（メルセデス）とマックス・フェルスタッペン（レッドブル）が接触したイギリスGPについて意見を求められた際、ハミルトンに対して人種差別発言を行なった。

　これに対して非難の声が上がり、ピケは自身の発言について謝罪。「考えが甘く、弁明の余地はない」と述べた。

　またピケは、自身が使った”Nワード”は「ブラジルのポルトガル語で『男』や『人』の代名詞として広く歴史的に口語として使われてきたモノで、決して侮辱する意図はなかった」と誤解であることを主張していた。

　しかしブラジルのNational LGBT+ Allianceを含む4つの人権団体は、この問題を法廷に持ち込み、ピケに道徳的損害賠償として1000万ブラジル・レアル（2億5,000万円）を要求した。

　これに対して3月25日（金）、ブラジルの首都ブラジリアにある民事裁判所は、要求額の半分に当たる500万レアルの支払いをピケに命じた。

　この判決を行なった裁判官は罰金額について、「民事責任としての賠償機能だけでなく、社会として人種差別や同性愛嫌悪という悪質な行為をいつの日か根絶するために、まさに（そしておそらく主だった）懲罰機能を表すモノ」と述べている。

Lewis Hamilton, Mercedes-AMG

Photo by: Steve Etherington / Motorsport Images

　ピケの発言は当時、F1パドック中からも広く非難を浴び、名指しされたハミルトンはソーシャルメディア上で次のように反論した。

「そういった時代遅れの価値観は変わっていくべきであり、僕たちのスポーツでもそれは許されない。僕は人生の中で、そういった振る舞いをされたり標的にされたりしながら生きてきた」

「学ぶための時間は十分あったはずだ。今は行動を起こす時だ」

　70歳のピケはその後、F1パドックから追放。英国ドライバーズクラブの名誉会員としての資格も停止された。

　F1で唯一の黒人ドライバーであり、唯一の黒人F1世界チャンピオンであるハミルトンはこれまで、モータースポーツにおける多様性と包括性を改善するための取り組みの”フロントロウ”に立ってきた。

　彼はハミルトン委員会を設立し、モータースポーツ界における黒人の地位向上に関する報告書を作成した。

　これを基に、ハミルトンとメルセデスは、より不利な立場にある女性やアフリカ系を含むエスニックマイノリティの学生をSTEM（科学、技術、工学、数学）分野へ参加させる共同チャリティ団体「Ignite」を設立。このチャリティは、ハミルトンの個人財団「ミッション44」と連携している。

　なおハミルトンは、昨年のサンパウロGPを前にブラジル名誉市民ともなっている。