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レギュレーション調整だけで、F1が抱える問題は解決できるのか?|motorsport.com各国ライター陣の視点

FIAは、新レギュレーションを導入したF1における懸念事項に対処するため、マイアミGPを前に調整を行なったが、これで問題は解決するのだろうか?

Charles Leclerc, Ferrari, George Russell, Mercedes

Charles Leclerc, Ferrari, George Russell, Mercedes

写真:: Lars Baron / LAT Images via Getty Images

 マイアミGPを前に、FIAは2026年レギュレーションに的を絞った微調整を導入した。その主な目的は、過度なエネルギーマネジメントによってドライバーが全力で走行することができなかった点を改善することにある。

 また、開幕戦後に提起された安全上の懸念、特に大きな速度差に関する懸念にも対処し、事故のリスクを最小限に抑えるため、スタート手順の調整も行なわれた。

 大方の予想通り、抜本的な変更が行なわれたわけではない。一部のドライバーやファンがソーシャルメディア上で懸念を表明したにもかかわらず、F1の上層部は今シーズン序盤戦で展開されたレースの質に満足しているからだ。 

 これらの変化で十分なのだろうか? 各国のジャーナリストによる見解を見てみよう。

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レギュレーション調整は対症療法

ジュール・デ・グラーフ - Motorsport.com オランダ版

 F1の2026年レギュレーションが、本格的に定着する前にすでに「修正」されていること自体が何かを物語っていると言えるだろう。しかし、それは必ずしも一見した通りの意味ではない。

 FIAによる今回の調整は、理論上でまさに選手権が機能すべき姿そのものだ。つまり、早期に弱点を特定し、迅速に対応し、パニックに陥ることなく改善を重ねる。その意味では、システムは意図通りに機能していると言える。

 しかしその論理の下には、居心地の悪い緊張感が潜んでいる。

 こうした微調整によって、最も目立つ問題……過度なリフト&コースト、極端な接近速度、そしてドライバーが全開走行ではなく省エネを強いられる状況は軽減されるかもしれない。だが新レギュレーションのコンセプトの核心にある哲学的な問題にはほとんど対処できていないからだ。マシンが根本的にエネルギーマネジメントを中心に設計されているなら、レースは必然的にその制約を軸に展開されることになる。数値を再調整することはできても、それによって誘発される問題を完全に再調整することはできない。

Max Verstappen has been a vocal critic of the 2026 rules

Max Verstappen has been a vocal critic of the 2026 rules

Photo by: Mark Thompson / Getty Images

 だからこそ、F1は根本的な問題ではなく、その症状に対処しているだけのように感じられる。電動化、効率化、メーカーの関与といった方向性には、2014年のハイブリッド化、1980年代初頭のターボエンジンへの移行、あるいは1961年のエンジン規定の変更と同様に、常に何らかのトレードオフが伴うものだった。

 初期段階で混乱が起きるのは、前例のないことではない。しかし、それを認めたからといって、競技の観点から見て結果が自動的に満足のいくものになるわけではない。

 認識の問題もある。ドライバー、チーム、ファンが、レギュレーションサイクルの初期段階でこれほど否定的な言葉でマシンを公然と評するようになると、そのストーリーは急速に固定化される。そして、物語を書き換えることは、ルールブックを書き換えるよりもはるかに難しいのだ。

 結局のところ、真の評価はデータや修正された出力の数値からではなく、コックピットの中から下されることになる。もしドライバーたちが、互いに競い合うというよりもシステムを操作していると感じ続けるのであれば、いくら微調整を重ねたとしても、問題が「解決された」と説得力を持って主張することはできないだろう。少なくとも現時点では。

誰にとって”十分”なのか?

フェデリコ・ファトゥロス Motorsport.com ラテンアメリカ版

 Motorsport.comとの独占インタビューでステファノ・ドメニカリ(F1のCEO)が述べたコメントから判断すると、彼にとっては、月曜日にFIAが発表した変更でおそらく十分だろう。

 実際、今シーズンこれまでのレースで得られたデータはマイナス面よりもプラス面の方が大きいと彼は主張している。今回の調整が、F1の新規則が引き起こした問題を巡るネガティブな論調に終止符を打つ助けとなることを、彼は期待していると言っても過言ではないだろう。

 しかし、それがドライバーや古参のF1ファンにとって十分かどうかは、また全く別の問題だ。

 ひとつ確かなことがある。4月の強制的なインターバルを経て、来週のマイアミGPでマシンがサーキットに戻ってくるにあたり、月曜日に発表された調整内容は正しい方向への一歩であるように思われる。

 ハードウェアの変更を必要とするような革命的な成果が会議から生まれるとは誰も予想していなかった。現段階ではそれは不可能なことだからだ。しかし、これらの微調整は、すでに施行されている規則の範囲内で、現実的に可能な範囲内での論理的な調整であるように見える。

 数週間前、前回の記事で現行の規則の範囲内でF1が何を変更すべきか尋ねられた際、私は安全性が予選ラップやリフト&コースト、その他すべての事項よりも最優先されなければならないと書いた。

 鈴鹿でオリバー・ベアマン(ハース)とフランコ・コラピント(アルピーヌ)が巻き込まれたような状況、つまりハースのドライバーがマシンから降りた後、足を引きずりながら立ち去るという事態をシリーズが許容することは、到底容認できないことだった。

 その点において、接近速度を低減するための措置や、レーススタート時の問題を緩和するための決定は、特に歓迎すべきものだ。スタート時の問題は、対処すべきもう一つの重要な課題であった。

 総じて言えば、F1の新時代に関して、これらすべての変更が万人を満足させることは難しいだろう。しかし、懸念が聞き入れられたことは確かだ。今後は、これらの変更がトラック上でどのような真の影響をもたらすか、少し時間を置いて見極める必要がある。

Oliver Bearman, Haas F1 Team car after his crash

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Photo by: Kym Illman / Getty Images

安全が最優先! だが、その代償は?

田中健一 Motorsport.com 日本版

 安全が最も重要であることは言うまでもない。F1のようなハイスピードのカテゴリーであっても、それが常に最優先でなければならないのは間違いない。したがって、安全性向上を目的としたレギュレーション変更は完全に正当化される。

 しかし、ひとつ疑問を感じる点がある。それは、予選で全開走行を可能にするための調整についてだ。最新の変更では、1周あたりのエネルギー回生上限が8MJから7MJへと引き下げられる。これは実質的に、1周あたりに使用できる電気エネルギー量が減ることを意味し、その結果ラップタイムは遅くなる。果たしてそれが我々の望むことなのだろうか。

 どのようなF1を見たいのか、改めて問う価値がある。意見は分かれるだろう。

 常にフルスロットルで走るF1マシンを見たいのか。それとも、より速いF1マシンを見たいのか。少なくとも私は、より速いF1を見たい。もちろん安全性が損なわれない範囲でではあるが、ラップレコードを更新していく姿を見たいと思っている。

 鈴鹿で行なわれた日本GPでは、アンドレア・キミ・アントネッリ(メルセデス)が予選Q3で1分28秒778の最速タイムを記録した。しかしこれは、鈴鹿サーキットのラップレコードである1分26秒983よりも1.8秒遅い。中国GPのポールポジションタイムも同様の傾向を示していた。これは新レギュレーション導入からわずか2~3戦目での話であり、非常に特異な状況だ。

 この観点から言って、新世代のF1マシンには極めて速くなるポテンシャルがあると言える。

 さらに時間が経てば、元のレギュレーションのままでも、いずれ予選はフルスロットル走行へと自然に回帰していった可能性も高いように思える。

 そういう意味では、FIA、F1、そして各チームの間でレギュレーション調整に合意がなされたこと自体は尊重されるべきだが、とりわけ予選に関しては、疑問が残ると言える。

The changes will come into force in Miami

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Photo by: Glenn Dunbar / Motorsport Images

F1はどうなりたいかを再定義すべき

マイケル・バノフスキー Motorsport.com グローバル版

 F1は、モータースポーツの頂点であると見なされるべきだと、これまでの様々なレギュレーションやフォーマットの変更を通じて主張してきたことで、自ら問題を生み出してきた。しかし、それは今や何を意味するのだろうか?

 それは各マシンの競争力の違いによる問題ではない。インディカーやNASCARでも、退屈なレースや連勝は起こる。それは「より良いレース」のためにハイブリッドシステムを排除するかどうかという話でもない。私が育った時代には、F1マシンの何台かが金属的な悲鳴を挙げながらリタイアしないほうが珍しいくらいだった。

 ルール自体は、おそらく概ね問題ない。だがF1は、どのようなレースをファンに提供しようとしているのか、そして現代のグランプリとは何なのかを、もっと明確に説明すべきだと思う。

 ホイール・トゥ・ホイールの”マリオカート”のようなバトルなのか、それとも特定のチームが支配する展開があってもいいのか。勝敗は1秒差で決まるべきなのか、それとも20秒差でもいいのか。F1はすべてを手に入れることはできないし、これからもそれは決してできないことだ。自分たちが提供したいレースの形に、はっきりと舵を切る必要がある。

 それが定まらない限り、世界最高のドライバー、チーム、そしてマシンが、ますます非現実的になっていく我々の期待に追いつくことのできないレギュレーションの下で戦い続けることになるだろう。

Charles Leclerc, Ferrari, George Russell, Mercedes, Oscar Piastri, McLaren

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Photo by: Andy Hone/ LAT Images via Getty Images

急激な方向転換は破壊的な結果を招く可能性がある

ハルドゥーン・ユーネス Motorsport.com 中東版

 レギュレーションがどれほど理論的に緻密に作られていたとしても、その成功を最終的に判断するのは、トラック上で実際に何が起きるか次第であることは周知の事実だ。

 2026年シーズンは、このスポーツにとって久々に大規模で急進的な変革が行なわれた。そして予想通り、その変化の大きさと同様に論争も激しいものとなっている。人工的なオーバーテイク、「ヨーヨー」レース、そして要素が増えたことによるドライバーの操作感の低下などが指摘されている。

 電気エネルギーの役割拡大に批判が集まる中、チーム、選手権、FIAの間で一連の会合が開かれ、レギュレーションの調整が実際に進められてきた。

 当然のことながら、焦点は最も重要な2つの課題、安全性と予選でのパフォーマンスに当てられている。しかしそれでもなお、マックス・フェルスタッペンが言うところの「根本的」な問題に対する解決策は見つかっていないように見える。

 人工的なオーバーテイクが増える中で、選手権の価値そのものが損なわれつつあるのではないか、また”コンピューター”がレース展開を支配し、マシンやドライバーに競争のあり方を指示しているのではないか、という懸念が広がっている。これはナイジェル・マンセルも最近言及していた点だ。

 現在、多くの人々の目に映っているのは、競争が「表面的」なものになってしまうリスクへの懸念である。ステファノ・ドメニカリが最近指摘したように、こうした批判は単なる批判のための批判ではない。

 また、その多くは単にクルマの運転を理解していない人々から出ているわけでもなく、実際にヘルメットをかぶりステアリングを握る意味を熟知している経験豊富な人物たちからの声でもある。

 とはいえ、この世に完全な白か黒かという問題は存在しない。むしろ、あらゆる問題には多くのグラデーションがある。

 この状況における前向きな点は、F1に関わるすべての関係者、つまりドライバー、チーム、そしてファンの期待に応えるため、解決策を見つけようと全員が協力する姿勢を示していることだ。

 忘れてはならないのは、この選手権が巨大な船のようなものであるということだ。その進路を変えるなら、多くの人が期待するほどの速さでは動かない。むしろ、急激な方向転換は破壊的な結果を招きかねない。

 したがって、現在起きていることは正しい方向への一歩と捉えることができる。そしていつものように、その変更が正しかったかどうかを判断できるのは、トラック上の結果だけだ。

 これらの変更は完全に十分なモノなのか? おそらく違うだろう。では現時点で取り得る最善の策なのか? おそらくそうだろう。

 最初の3戦はあくまで”ソフト”な開幕に過ぎず、本当の評価はマイアミから始まると言える。

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