F1トルコ決勝:ハミルトン、抜群のタイヤ管理で逆転優勝。7度目の戴冠に華を添える
F1第14戦トルコGPの決勝レースが行なわれ、メルセデスのルイス・ハミルトンが優勝を果たし、今季のチャンピオン獲得を決めた。
Race winner Lewis Hamilton, Mercedes F1 W11
Steven Tee / Motorsport Images
F1第14戦トルコGPの決勝レースがイスタンブール・パーク・サーキットで行なわれ、メルセデスのルイス・ハミルトンが優勝。2020年シーズンのチャンピオンを、完璧な形で決めた。
2011年以来、9年ぶりの開催となったトルコGP。グランプリの2週間前に路面が再舗装された関係で、各チームは週末を通じてグリップの低いコンディションに悩まされた。
決勝レースはドライコンディションで行なわれると予測されていたが、現地時間の昼頃から雨が降り出してしまい、各車がグリッドへ向かうレコノサンスラップの段階で、フルウエットコンディションとなった。
このレコノサンスでは、トラブルが続発。アントニオ・ジョビナッツィ(アルファロメオ)がクラッシュしグラベルにハマってしまった。ただジョビナッツィはマーシャルの手でコースへと戻され、グリッドにつくことができた。さらにピットレーンスタートのジョージ・ラッセル(ウイリアムズ)はピットレーン入り口でウォールに接触。フロントウイングを破損してしまった。
その他、ピエール・ガスリー(アルファタウリ)は予選後にパワーユニット交換を申請したものの後に撤回。これによりパルクフェルメ規則を違反した疑いがあるとして、グリッド最後尾からのスタートとなった。またウイリアムズはニコラス・ラティフィもピットレーンスタートを選んだ。
各車がフォーメーションラップに向かう頃には雨雲も抜け、通常通りのスタンディングスタートでレースが幕を開けた。
2番手スタートのマックス・フェルスタッペン(レッドブル)がホイールスピンを喫し、濡れた路面にまったく動力を伝えられずに大きく出遅れてしまう中、ポールポジションのランス・ストロール(レーシングポイント)がトップをキープ。ルイス・ハミルトン(メルセデス)は6番手から4番手までポジションを上げた一方、バルテリ・ボッタス(メルセデス)やエステバン・オコン(ルノー)はターン1の混乱でスピンを喫した。
スタートではポジションを上げたハミルトンだったが、ペースは上がらずフェルスタッペンやアレクサンダー・アルボン(レッドブル)に抜かれてしまった。
トップのストロールと2番手のセルジオ・ペレスは好ペースを刻み、レーシングポイントのワンツー体制。11番手スタートからセバスチャン・ベッテル(フェラーリ)がロケットスタートで一気に3番手につけ、フェルスタッペン、アルボンがそれを追う形だ。
フェルスタッペンはベッテルの背後に近づくが、なかなか抜くことはできず。その間にストロールはペレスにすら6秒差のギャップを築く快走を続けた。
いち早くピットに飛び込んだのは、14番手を走行していたシャルル・ルクレール(フェラーリ)。インターミディエイトタイヤへと履き替えた。スピンで下位に沈んだボッタスもこれに追従した。
9周目には、3番手のベッテルや6番手のハミルトンなど続々とインターミディエイトタイヤにスイッチ。首位のストロールも、9周を走り終えたところでピットに飛び込んだ。
前が開けたフェルスタッペンは、1分51秒091をマークしファステストを更新。さらに翌周には1分48秒610までタイムアップした。しかし後方ではタイヤを履き替えたハミルトンが全セクターで全体ベストを塗り替え、1分45秒872をマーク。路面は完全にインターミディエイトタイヤに適したコンディションになったようだ。
予選でインターミディエイトを機能させられず苦しんだフェルスタッペンも、11周を走り終えたところで流石にピットイン。僅差でペレスの前に出ることはできなかったが、ベッテルは攻略し実質1ポジションアップすることに成功した。なお、12周を走り終えたところでアルボンもピットイン。ハミルトンの後ろ、6番手でコースに戻った。
13周目、ジョビナッツィがスローダウンし、コースサイドにマシンを止めてしまった。これによりバーチャル・セーフティカー(VSC)が発動。15周目にレースが再開された。
ハミルトンは再三ベッテルに仕掛けるが、バックストレートエンドのターン12でオーバーシュート。逆にアルボンに交わされてしまった。アルボンはさらに、翌周のターン7のブレーキングでベッテルをも攻略。これで4番手とした。
3番手のフェルスタッペンも、ペレスの背後にピタリ。18周目にペレスが挙動を乱したスキを見てオーバーテイクを試みるが、ランオフエリアにはみ出してコントロールを失いスピンしてしまった。なんとかクラッシュを免れたフェルスタッペンは、タイヤにフラットスポットを作ってしまいピットイン。新たなインターミディエイトに履き替え、8番手でコースに戻った。
これで3番手に上がったアルボンはペレスを猛追。首位のストロールのペースも徐々に悪化し、アルボンがペレスのテールに張り付いた23周目には、トップ3が5秒以内に接近した。
しかしトップ3よりも、4番手のベッテル、5番手のハミルトンの方がさらにペースが良く、タイヤの摩耗が厳しいと訴えたアルボンへと一気に接近していった。さらに30周を過ぎた頃、DRSの使用が解禁され、アルボンにベッテル、ハミルトンがプレッシャーをかけていった。
次のピットストップでスリックタイヤに履き替えるため、各チームのエンジニアはタイヤを保たせようと提案するものの、ハミルトンを始め、ドライバーたちはまだスリックへの切り替えは難しいと答えた。
我慢しきれず、ルクレールやリカルドはピットに入り、2セット目のインターミディエイトへと交換。4番手のベッテルも34周目にピットインしインターミディエイトタイヤへと履き替えた。一方、アルボンがターン4で痛恨のスピン。これでハミルトンが3番手となった。アルボンはたまらずピットに入った。
ハミルトンはピットに入らずステイアウトを選択。ペースが悪いストロールと、それに詰まったペレスへと一気に近づいていった。ストロールはインターミディエイトでステイアウトしたいと主張したものの、36周終わりにピットイン。インターミディエイトタイヤをリフレッシュした。
対してハミルトンは、DRSを使ってペレスをオーバーテイク。これでついにラップリーダーとなった。
ストロールはタイヤのウォームアップに苦しんでいるのか、ベッテルやルクレール、アルボンに続けざまに攻略を許し7番手までポジションを落としてしまった。
ペースが良いのは、最も長くインターミディエイトを履いているハミルトン。さらに、早めにインターミディエイトを履き替えた4番手のルクレールも、ハミルトンと遜色ないペースを見せ、フェルスタッペンに迫った。
43周目、ルクレールにあっさりと抜かれたフェルスタッペンは3度目のピットイン。新品のインターミディエイトを投入し、7番手まで後退した。
40周走ったインターミディエイトタイヤで1分40秒台の好ペースを刻み続けるハミルトンは、46周目に13番手を走るボッタスを周回遅れに。なんとしても上位フィニッシュを決め、このレースでのハミルトンの戴冠を阻止したいボッタスだったが、何度かスピンするシーンもあり屈辱のラップダウンとなった。
残り10周を切っても、ハミルトンのペースは衰えず、2番手ペレスとの差を20秒弱まで開く独走体制に。ただペレスもペースは悪くなく、51周目のセクター2では全体ベストを更新。逆に3番手のルクレールは挙動を乱して、追撃の手を鈍らせた。
上位陣の中で接近しているのは、6番手を争うレッドブルの2台。フェルスタッペンは再びスピンする場面があったがマシンにダメージはなく、53周目にアルボンの前に出た。
レース最後の数周で再び雨が降るかもしれないという情報もあり、大量リードを稼いだハミルトンがピットインするかと思われたが、ハミルトンはピットに入らずファイナルラップに突入。危なげなくトップチェッカーを受けた。
これでハミルトンは今季10勝目。ミハエル・シューマッハーに並ぶ7度目のチャンピオン獲得を、完璧な逆転勝利で決めてみせた。
表彰台争いは最後の最後で一気に白熱。ファイナルラップで一気にタイムを落としたペレスを、ルクレールがバックストレートで交わすもターン12でオーバーシュート。これでルクレールは2位の座を失ったばかりか、ベッテルにも先行されてしまった。3位でチェッカーを受けたベッテルはこれが今季初表彰台だ。
4位以下、ルクレール、サインツJr.、フェルスタッペン、アルボン、ノリス、ストロール、リカルドまでがポイント獲得となった。
レース前半をリードしたストロールは、チームメイトと明暗分かれる9位。ウエットでは好調だったレッドブル勢も、物足りない結果に終わった。
順位 | ドライバー | 周回数 | タイム | 差 | 前車との差 | 平均速度 | ポイント |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | ルイス ハミルトン | 58 | 1:42'19.313 | 25 | |||
2 | セルジオ ペレス | 58 | 1:42'50.946 | 31.633 | 31.633 | 18 | |
3 | セバスチャン ベッテル | 58 | 1:42'51.273 | 31.960 | 0.327 | 15 | |
4 | シャルル ルクレール | 58 | 1:42'53.171 | 33.858 | 1.898 | 12 | |
5 | カルロス サインツ Jr. | 58 | 1:42'53.676 | 34.363 | 0.505 | 10 | |
6 | マックス フェルスタッペン | 58 | 1:43'04.186 | 44.873 | 10.510 | 8 | |
7 | アレクサンダー アルボン | 58 | 1:43'05.797 | 46.484 | 1.611 | 6 | |
8 | ランド ノリス | 58 | 1:43'20.572 | 1'01.259 | 14.775 | 5 | |
9 | ランス ストロール | 58 | 1:43'31.666 | 1'12.353 | 11.094 | 2 | |
10 | ダニエル リカルド | 58 | 1:43'54.773 | 1'35.460 | 23.107 | 1 | |
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