【分析】レーシングブルズはレッドブルを手助けしている……懸念集まる”同一オーナー問題”。コース上での疑惑シーンはあったのか?
レッドブルのローレン・メキーズ代表は、2026年のシーズン前半を見れば、レーシングブルズから多大なサポートを受けているという疑惑を否定できるはずだと主張する。その主張は正しいのだろうか?
F1では、度々ひとつのオーナーが複数のチームを所有することについて、疑惑の目が向けられてきた。最近ではレッドブルとそのジュニアチーム(トロロッソ、アルファタウリ、レーシングブルズ)が槍玉に挙げられることが多い。
この件についてレッドブルのローレン・メキーズ代表は、不正なことは何もしていないと主張する。その主張は本当に正しいことなのだろうか。
F1では長きにわたって、各チームが独自にマシンを開発・製造しなければいけないことになっている。一部購入/売却可能なパーツも存在するが、モノコックなど基本的な部分の流用は認められていない。
レッドブルは傘下にふたつのチームを抱えるが、そのマシンのデザインが似ているとして、以前はかなり問題視されることもあった。最近ではその話題も沈静化していたが、メルセデスがアルピーヌの株式を取得しようとしているという噂が流れると、この話題が活性化した。
この件について最も問題視しているのが、マクラーレン・レーシングCEOのザク・ブラウンである。ブラウンCEOはひとつのオーナーが複数のチームを持つことに関する不公平性を指摘し、FIAのモハメド・ベン・スレイエム会長に書簡を送った。
ブラウンCEOが問題視しているのは、マシンのデザインを含む知的財産権(IP)について、そしてチーム間で人材を自由に移動することができるという点である。
またブラウンCEOは、2024年の新シンガポールGPで、レーシングブルズのダニエル・リカルドがファステストラップを獲得するために、決勝レース最終盤にピットインしたことについても問題視している。
当時のF1はファステストラップを獲得したドライバーにも1ポイントが加算されるレギュレーションであったが、リカルドがこのファステストラップを記録することにより、マクラーレンのランド・ノリスからポイントを奪う形となった。このリカルドの行動は、同年ノリスとタイトルを争っていたマックス・フェルスタッペン(レッドブル)をサポートするためだったのではないかと、ブラウン代表は訝しんでいるのだ。
Laurent Mekies, Red Bull Racing Team Principal
Photo by: Chris Graythen / Getty Images
さらに今年のマイアミGPでは、レーシングブルズのリアム・ローソンに、フェルスタッペンを先行させるように指示が飛び、このことも議論を読んだ。
レッドブルが2チームを所有していることについては、これまでも度々問題視されてきたが、時間が経てば次第に収束するということを繰り返してきた。しかしメキーズ代表は、今回の事象については、あまり問題視していない。
「F1には11チームがいて、それぞれが独立した形でレースに参戦している」
メキーズ代表はそう語った。
「チーム間の人員の移籍や最低休養期間については、非常に厳格かつ詳細な規定がある。我々は当然FIAの規定を遵守するだけでなく、こうした憶測に巻き込まれないように、自主的に休養期間を長く設定している」
そしてメキーズ代表は、疑惑を払拭するため、レッドブルとレーシングブルズのマシンが今年どのようにレースを戦ってきたかを、メディアに「見て」欲しいと提案した。
「シーズンの最初からを考えれば、たくさんの事例を見ることができるだろう」
メキーズ代表はこう語った。
「残念ながらシーズンの最初の頃は、マシンの競争力が低かったからね」
コース上で、レッドブルに譲ったシーンはなし?
Isack Hadjar, Red Bull Racing, Arvid Lindblad, Racing Bulls
Photo by: Mark Sutton / Formula 1 via Getty Images
今シーズン序盤戦を振り返ると、確かにレッドブル勢はスタートで失敗するなどして後方に下がることもあった。そして追い上げていく道中でレーシングブルズの背後につくというシーンも何度かあった。
その際にレーシングブルズのドライバーたちが、何の抵抗もなくレッドブルの2台に進路を譲ったのならば、多くの方々が懸念を抱いているように、レーシングブルズがレッドブルを助ける立場……ということになるかもしれない。しかしレーシングブルズのドライバーたちは、レッドブルを相手に抗戦するというシーンも多かった。中国GPでは、リアム・ローソンがアイザック・ハジャーをオーバーテイクするシーンもあった。
確かにレーシングブルズのふたりにはレッドブルのマシンにポジションを譲るように指示が飛んだこともあった。
例えばオーストラリアGPでは、フェルスタッペンの前を走っていたリンドブラッドに「マックスと争ってタイヤを無駄遣いするな」という指示があった。これはレッドブルにポジションを譲るというよりも、実際に自身が順位を争っているオリバー・ベアマン(ハース)とのバトルに集中するためのものだった。
またマイアミGPでは、リアム・ローソンに「マックスにポジションを譲らなければならない。できるだけ早くやってくれ」という無線が飛んだ。これは、大いに議論の的となった部分でもある。
このレースでフェルスタッペンは、スタート直後にスピンして大きく後退してしまうこととなり、ローソンの真後ろにつけた。そしてフェルスタッペンは、ローソンをオーバーテイクしようとターン11でインに飛び込もうとしたが、ローソンがブロック。その結果2台揃ってオーバーランしてしまうことになった。そしてローソンが前のままコースに戻った後、前述の無線が飛んだのだった。
フェルスタッペンもオーバーランしたため、本来ならばローソンにはポジションを譲る義務はない。ローソンも「そんなの理解できない」と抗議したが、その1周後にチームの指示に従い、フェルスタッペンを先行させた。
この指示は、チームがペナルティを回避しようとしただけという可能性もあるが、外から見れば、レッドブルに進路を譲ったようにも見えるため、議論の的となったのだ。
しかしローソンは、大騒ぎするようなことではなく、ポジションを譲るという判断は単にミスだったと語った。
「僕らはミスをしたんだ」
「あんなことする必要はなかった。あれはマックスのせいだったんだから。チーム内での検証が、適切ではなかったと思う。しかし、決断を下すまでの時間がとても短いから、間違った判断をしてしまったんだと思う。もしもう一度同じような状況になったら、同じようなことはしないだろう」
疑惑のシーンはない……今のところは
Liam Lawson, Racing Bulls, Laurent Mekies, Red Bull Racing Team Principal
Photo by: Clive Mason/Getty Images
結局ここ数戦は、レッドブルのパフォーマンスが向上。レーシングブルズとコース上で争うようなシーンはほとんどなくなった。
陰謀論を好む人たちは、レッドブルとレーシングブルズがコース上で競り合う度に、「同じグループ内のチームだから」と指摘するだろう。しかし今シーズンの序盤を見ると、メキーズ代表の「そういうことを裏付ける根拠はほとんどない」という主張に反論するのは難しいと言わざるを得ないだろう。
ただより大きな問題点は、コース上でのことではなく、人事異動に関するものだろう。レッドブルとレーシングブルズの間は、非常に自由に人材の行き来が可能だ。かくいうメキーズ代表も、前代表のクリスチャン・ホーナーが退いた直後に、レーシングブルズから移籍してきた人物。その間にガーデニング休暇期間は一切なかった。通常チーム間を移籍する際には、そんなことはあり得ない。即座に別チームでの仕事を開始してしまえば、以前所属していたチームの機密情報をすべて携えてしまうということになるからだ。
これはレッドブルとレーシングブルズが同じオーナーの下で運営されているからだということに他ならない。この件についての懸念は、おそらく今後も消えることはないだろう。
そして今季ここまでのコース上での動きについては、レーシングブルズがレッドブルをサポートすると明確に断言できるシーンはなかった。しかしこれがシーズン後半となり、レッドブルがチャンピオン争いに加わるなどした場合にはどうなるのか……という点については確かに疑問である。ライバルチームは、その点を必ず注視しているはずだ。
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