レッドブル/レーシングブルズのような”2チーム体制”は、F1にとって大問題? マクラーレンCEOが訴え「公平性を失えば、ファンはすぐに離れてしまう」
マクラーレン・レーシングのザク・ブラウンCEOは、レッドブルとレーシングブルズのように異なるチームが密接な関係を築くと、不公平な”優位性”をもたらす可能性があるとして、懸念を表明している。
レッドブルとレーシングブルズのような「AチームとBチーム」が存在するモデルは、F1における公平性を損なうリスクがあるとして、マクラーレン・レーシングのザク・ブラウンCEOが懸念を訴えている。
AチームとBチームが存在することに関する疑問は、F1では長く議論の的となってきた。古くは1990年代中盤のベネトンとリジェや、2000年代序盤のフェラーリとザウバー、ホンダとスーパーアグリ……などであろうか。
ただ近年の最も直接的な例は、レッドブルとレーシングブルズの存在だろう。レッドブルはスチュワート・レーシングを買収して2005年からF1への参戦を開始すると、すぐにミナルディを買収してスクーデリア・トロロッソを立ち上げ、2006年から参戦をスタートさせた。その後トロロッソは、アルファタウリ、RBと名称変更を経て、現在もレーシングブルズとして参戦を継続している。
レッドブル・グループ内では、現レーシングブルズは若手ドライバーをF1にデビューさせ、経験を積ませるための存在であることは公然のこと。実際レッドブルに乗ったドライバーのほとんどは、レーシングブルズ(トロロッソ、アルファタウリ、RB含む)を経ている。
この状況に異議を唱えるのが、マクラーレンのブラウンCEOである。
レッドブルとレーシングブルズの関係性は、ドライバーだけではない。エンジニアをはじめとしたスタッフの移動も、頻繁に行なわれている。最近では現在レーシングブルズで副テクニカルディレクターを務めるアンドレア・ランディが、7月1日からレッドブルに移籍し、パフォーマンス部門の責任者を務めることが発表された。
ただチーム間を移籍する際には、それほど早いタイミングで移籍することなど普通はできない。機密情報の流出を防ぐ目的のため、ガーデニング休暇などが設けられる場合が多いのだ。実際マクラーレンは、現在レッドブルでレーシング部門責任者を務めるジャンピエロ・ランビアーゼを獲得したが、彼が実際にマクラーレンでの業務を開始するのは、2028年まで待たねばならないかもしれない。
ただブラウンCEOは、この問題はレッドブル・グループだけの問題ではないと強調する。
ハースの設計施設はイタリアのマラネロにあり、フェラーリと密接な関係を築いている。この2チームの間でも、人材交流が行なわれている。またメルセデスは、アルピーヌの株式を取得することを目指しているとされていて、これが実現すれば、新たな”AチームとBチーム”という関係性が生まれることになる。
「A/Bチーム制は、できる限り早く、できる限り排除する必要があると思う。複数のチームを所有する状況……現時点では一例あるよね。もちろん、その経緯や理由については理解している。現代においては、ほぼすべての主要スポーツでそれが認められている」
「しかしこの状況は、スポーツの公平性を損なう、非常に大きなリスクが存在している。11の独立したチームが存在しているという感覚がなくなってしまったら、ファンは失望するだろう」
「私は最初から、この問題について声をあげてきた。スポーツマンシップに反する形で、コース上で実際にその影響が生じているのを見てきた。ダニエル・リカルドがファステストラップを記録して、我々からポイントを奪ったこともある。それで他のチームを助けたのだ」
ブラウンCEOが言うリカルドの事例は、2024年のシンガポールGPのことである。当時RBのドライバーだったリカルドは、レース終盤にピットイン。フレッシュタイヤを履き、ファステストラップを獲得した。これにより、マクラーレンのランド・ノリスからファステストラップのボーナスポイントを奪い、RBの姉妹チームであるレッドブルのマックス・フェルスタッペンを援護した。当時ノリスとフェルスタッペンは、タイトル争いを繰り広げるライバルであった。
「現アストンマーティンがレーシングポイントだった頃には、ブレーキダクトの知的財産権の違反があった」
ブラウンCEOはそうも語る。これは2020年のことである。同年のレーシングポイントのマシンRP20は、前年のチャンピオンマシンであるメルセデスW10と瓜二つであり、ピンクメルセデスと呼ばれ議論の的となった。チームは適法だと主張したが、最終的にはレギュレーション違反と判断され、罰金とコンストラクターズポイント15ポイント剥奪という処分が下された。
「従業員が一夜にして移籍するケースもある。しかし我々は待たざるを得ない。場合によっては金銭的な交渉を強いられることもある。それが予算制限にも影響を及ぼすのだ」
そうブラウンCEOは続けた。
「だから金銭的な保証なしにスタッフが別のチームに移籍するケースを見ると、それは不公平な金銭的優位であり、不公平な競技上での優位性でもある」
「フェラーリとハースが人材を頻繁に入れ替えているのを見てきた。そして知的財産権の問題は、みなさんの頭の中でも大きな課題となっていることは承知している」
「たとえばサッカーのプレミアリーグの試合で、同じグループが所有する2チームが対戦した場合、片方は負ければ降格、もう片方は負けても問題ないという状況になった時のことを想像してみてほしい。まさにそれが、今の我々が抱えているリスクだ」
「パワーユニット(PU)サプライヤーがいるのは仕方ないが、これ以上は(複数チームを持てるような状況を)進めるべきではないと思う。私の考えでは、11チームすべてができる限り独立しているべきだと思う。なぜならリスクが高く、スポーツの公平性を損なう事例も見てきたからだ。そうなれば、ファンは素早く離れていってしまうだろう」
2チーム体制を防ぐために、何か変化があったと感じているかと尋ねられたブラウンCEOは、次のように語った。
「前回のコンコルド協定をまとめる際には、大きな議論となった。昨年この件については、FIAとF1に手紙を書いた。というのも我々は常に、様々な問題に遭遇し、それを指摘しているからだ。FIAの意識と監視のレベルは向上していると思う」
「率直に言って、レーシングブルズとレッドブルのレーシングカーが同じように見えなくなったことは、喜ばしいことだ。ローレン・メキーズ(レッドブルのチーム代表)ともこの件について話し合ったことがある。彼を特に批判しているわけではないが、彼はふたつのチームを率いている唯一の人物だ。彼は非常にオープンで透明性があり、『気に入らない点があれば話し合おう』とも言ってくれた。だから彼らもこのことを認識していて、ギリギリのところで挑もうとはしていないんだと思う」
「コンコルド協定に関する会議では、『いずれはチームのひとつを売却すべきか?』という議論もあった。しかし同時に、彼らがF1のために成し遂げてきたこと、そしてそれがずっと昔から行なわれてきたということに対して、私は大きな敬意を抱いている」
「適切にマネジメントするため、あるいは監視するためには、これ以上チームを増やすことは、F1にとって明らかに誤った選択だろう」
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