予算超過の“不正チーム”に厳罰を! マクラーレンのブラウンCEOがFIA宛に書面で訴え「F1の未来のため、しっかり規則を守るべき」

マクラーレンのCEOであるザク・ブラウンは、F1が予算制限の違反者に対して厳しく対応するようFIAに要請しており、過剰な予算超過は「不正行為にあたる」と断言した。

Zak Brown, CEO, McLaren Racing

 FIAは先日、F1のファイナンシャルレギュレーションで定められている予算制限について、昨年のレッドブルが手続き上の違反に加えて予算上限も超過していたと発表。FIAが今後どのような動きを起こすのか注目されている。

 アストンマーチンも同様に手続き上の違反を犯したことが判明しているが、レッドブルとアストンマーチンはFIAの調査結果に同意し違反を認める旨の協定を結ぶことで、罰則の軽減を受けることもできる。その一方で、調査結果を不服とする場合はコストキャップ裁定委員会に異議を申し立てることも可能となっている。

 両チームがどちらを選択するかは分かっていないが、マクラーレンF1のCEOであるザク・ブラウンはFIAに対して書簡を提出し、この問題がうやむやにされないことがいかに重要であるかを訴えかけた。

 motorsport.comが入手したその書簡には次のように記されている。

「予算超過の違反、そして手続き上の違反は、技術規則、競技規則、そして財務規則において大きな優位性を生むという点で不正行為にあたる」

「つまるところ、予算超過をしたチームは今年と来年のマシン開発において不当な利益を得たということだ」

 ブラウンは先週、FIA会長のモハメド・ベン・スレイエムとF1のステファノ・ドメニカリCEOに対してプライベートでこの書簡を提出した。しかしその後ブラウンがそれを予算制限に準拠していたチームにも送ったことで、その内容が明らかとなったのだ。

■ブラウンは財政上、競技上の罰則を要求

 ブラウンは書簡の中で、FIAがこれまで予算制限のプロセスを取り締まってきたことへの信頼感を示しつつも、今後彼らがどのように行動するかが非常に重要だと述べている。

 ブラウンは、各チームが2021年の予算制限正式導入前、2020年シーズンに“リハーサル”を経験していることから、予算超過の言い訳はできないと主張した。

「FIAはオープンで徹底的なプロセスを踏んできた。我々は1年間のリハーサルを行ない、詳細が不明な場合は説明を求める機会を与えられていた。そのため、今になって驚くということはどのチームであってもおかしい」

 また予算制限をオーバーしたチームに対しては、罰金にとどまらず競技上の罰則を与えるべきだとブラウンは主張する。

「金銭的なペナルティだけでは、支出超過や手続き上の重大な違反に対する適切なペナルティにはならない。このような場合は、FIAが定める競技上のペナルティが必要である」

「我々は予算制限を超過したチームに対して、翌年の予算上限を引き下げるといったペナルティを提案する。例えば2021年に200万ドル(約2億9800万円)超過したことが2022年に確認された場合、2023年は400万ドル(約5億9600万円)が上限から差し引かれる(=超過分の200万ドルを相殺し、さらに200万ドル分の罰則を与える)といったものだ」

「200万ドルという金額は年間の車両アップデート予算の25%〜50%に相当するため、長期的に大きな効果が期待される」

「加えて軽微な予算上限違反には、CFDと風洞実験の時間を20%減らすという競技上のペナルティも科すべきだ。これらが次の年から適用され、チームがこれまで得てきた、そして今後得るであろう不当なアドバンテージを軽減するものでなければいけない」

「また軽微な予算超過を複数回することでチームがその相乗効果を得ることを避けるために、2回目の違反に対しては大規模な違反だとみなすべきだ」

■「F1の将来のためにも透明性が必要」とブラウン

 ブラウンはFIAがこの一件をどのように扱うかについて、透明性を確保することが不可欠だと述べた。

「様々なチームの支出状況を理解した今、ルールの整合性を維持するために、その後の措置とペナルティについては迅速に対応しなければならない」

「予算制限は、違反とそれによる罰則の詳細について、非常に透明性の高い状態で管理されることが最も重要である」

「そして同じく重要なのは、この制度の運用が始まって最初の1年が経過した今、様々な事柄について明確にするということである。繰り返しにはなるが、あらゆる考え方は全てのチームに共有されるべきであり、抜け穴は許されない」

 そしてブラウンは、F1解説者のマーティン・ブランドルが予算制限に関して「素晴らしく、今日のF1がより良くなっている理由のひとつ」としたことについて言及し、こう書簡を締めくくっている。

「マーティンのコメントには完全に同意する。予算制限はF1に新たな関係者や投資家を呼び込んだ要素のひとつであり、財政面と競技面でのフェアプレーを推進する方向でもある」

「したがって、F1の未来のためにも、予算制限のルールをきっちりと遵守していくことが非常に重要だ」

 なお当のレッドブルはこれまで、昨年の予算額は上限を下回っていたと度々主張しており、調査結果が公表されて規則違反が指摘された際には次のような声明を発表して驚きをあらわにした。

「我々はFIAによる財政レギュレーションに対する軽微な支出違反があったという調査結果を、驚きと失望をもって受け止めている」

「我々の2021年の申請は予算上限を下回っていた。そのため、FIAによる調査結果を慎重に検討する必要がある。我々は関連コストが予算上限額を下回っていると今も考えているからだ」

 
 
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