F1 オランダGP

ルノーのF1パワーユニット拠点スタッフ、撤退の方針に“裏切り”と猛反発。次世代エンジンは順調とも主張

次世代F1のパワーユニット開発を断念する予定と言われているルノー。しかし開発拠点のスタッフ達からはこの判断は“裏切り”であると示唆され、PU開発続行を求められている。

Esteban Ocon, Alpine A524, leads Pierre Gasly, Alpine A524

Esteban Ocon, Alpine A524, leads Pierre Gasly, Alpine A524

写真:: Zak Mauger / Motorsport Images

 ルノーのF1用パワーユニット(PU)開発拠点であるヴィリー-シャティヨンの従業員達は、次期F1用PU開発断念を検討している会社側に対して、再考を要求する声明を発表した。

 2024年シーズンも苦戦が続くアルピーヌ。ルノーはF1事業の撤退も噂されていたが、2026年以降に導入される次期パワーユニット開発を諦め、カスタマーとして他メーカーのPUを使用する方向へ舵を切ったと見られている。

 PU、そしてヴィリーについての最終的な決定は9月末に下される予定で、すでにルノーによってファクトリーのスタッフを新技術開発へと移管させることへ焦点をあてた調査をスタートさせている。

 しかし、ファクトリーの従業員達からは反発が生まれている。

 ヴィリーのアルピーヌ従業員社会経済協議会は声明を発表し、2026年のエンジンが示している技術的な良い兆候は、ルノーがこのプロジェクトを続けるのに十分なモノだと主張した。声明の中で、彼らは次のように記している。

「当グループの経営陣はヴィリー-シャティヨンの2026年プログラムを停止し、おそらくメルセデスからのエンジン供給を選択すると見られている」

「挙げられている理由は、開発コストを1億2000万ドル(約173億円)から、(カスタマーPUのコストである)1700万ドル(約24億円)へと交換できるという、直接的な節約だ」

Esteban Ocon, Alpine A524

Esteban Ocon, Alpine A524

Photo by: Sam Bloxham / Motorsport Images

「我々はヴィリー-シャティヨンというエリート組織を潰し、メルセデス製のPUをアルピーヌF1の心臓部に搭載することで、そのDNAと伝説を裏切ることが、何故正当化されるのか理解できない」

「F1用のフランス製PUの製造と開発の終了という発表は理解できないものだ」

「アルピーヌそしてルノーグループが自らのイメージに傷をつけることを、我々は認められない。だからこそ、我々は(CEOのルカ)デ・メオ、そして取締役会にこの決定を撤回することを求める」

 従業員らの声明は非常に長いものとなっているが、その中で注目されるのは次世代PUの初期テストは優れたポテンシャルを示しているという点だろう。

「100以上の大変革をもたらすコンセプトが研究され、そのうちの3分1以上がテストベンチでしっかりとしたパフォーマンスを示していた。これは将来のアルピーヌエンジンであるAR26に導入される予定だ」

「目標はアルピーヌの2026年エンジンを、プロジェクト開始から1年半の2024年上半期末にスタートさせることにあった」

「2024年6月26日、AR26の最初のファクトリー仕様に与えられた名前となるRE26Aが、ヴィリー-シャティヨンのエンジンベンチNo.6で最初に始動された。そして、目標期限の面で成功を納めた」

「この最初のエンジンでは、以前システムベンチで検討されたパフォーマンスコンセプトの3分の1がまだ載せられていないが、2024年末までの導入を検討している。しかしながら、最初のテストの結果は有望なものだった」

Luca de Meo, CEO, Renault Group

Luca de Meo, CEO, Renault Group

Photo by: Michael Potts / Motorsport Images

 声明によるとエンジンは最初の数時間で400kwの出力を超えていて、これは2026年の開幕戦に向けて定められていた性能目標に近いものだったという。熱効率は48%で、信頼性に大きな問題もなかったとされている。

 さらにこのテストエンジンは、アルピーヌが現在使用しているPUよりも12%短くなっており、シャシーとの統合を改善するための大きな余地があるとされている。加えて、レギュレーションで定められた最低重量も下回っているため、アルピーヌはバラストも活用することができる。

 声明はこう続けている。

「RE26Aはヴィリー-シャティヨンの全チームにとっての素晴らしい成功であり、開始から1年半を経てアルピーヌF1チームの野心を高める明らかな可能性を秘めたよくできたエンジンだ」

 なおルノーはPU開発から手を引いたあとは、現在のスタッフたちを水素技術などを含む新しいプロジェクトに移すことを約束しているが、従業員側はこれを意味のないモノだと切り捨てた。

「9月30日に最終的に承認されるはずの現場の転換計画は、アルピーヌレーシングが主導する他のプロジェクト(耐久、フォーミュラE、カスタマー競技、ハイパーカーの水素エンジンなど)へとリソースを移行させるか、大量生産に役立つと思われるが現時点では明確ではない革新的なプロジェクトへエンジニアリングを再分類することになっている」

「現在の自動車産業におけるイノベーションは、バッテリー化学と工業化、そして”ソフトウェアで機能や性能が決まる車両”や、自動運転に重点が置かれている。ヴィリーのスタッフのスキルは、これらのテーマとは関係がない」

 アルピーヌはこの件に関してコメントを控えているものの、ヴィリーの従業員代表は今後計画されているプロジェクトに関して専門知識を求める権利を行使したと理解されている。なおそのフィードバックは9月30日に行なわれる予定だ。

 なおヴィリーの変革プロジェクトについては、まだ最終的な決断は下されていない。

 

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