レーシングポイント&アルファタウリ、”トークン外”開発可? そのトリックとは
来季に向け、基本的には開発が凍結されることになったF1。しかしレーシングポイントとアルファタウリは、レギュレーションの抜け道を使い、大幅アップグレードを行なうことができる可能性があるようだ。
写真:: Mark Sutton / Motorsport Images
2021年シーズンに向け、マシンの開発が凍結されることになったF1。もし開発を行なう際には、各チームに割り当てられたトークンを使って行なわなければいけない。しかしこのシステムの抜け道を使い、レーシングポイントやアルファタウリなどは、トークンを使わずに、今季マシンを広範囲にアップデートできることになりそうだ。
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、財政的な危機に直面しているF1。この状況を打開するため、今季マシンを来シーズンまで引き続き使い、開発コストを抑えるという案が提言され、承認された。これにより、基本的にはマシンに開発を施せなくなるが、各チームに割り当てられたトークン”2”の範囲内で、開発を進めることができる。
このトークンは、本質的にはマシンが抱えている”問題”に対処するために使うものであり、22日(水)には、トークンを使っての開発計画の詳細をFIAに提出する期限が設けられていた。
ただこのレギュレーションには抜け道があることが、最近明るみに出てきた。例えばレーシングポイントは、トークンを使わずに、マシンの広範囲をアップデートできるというのだ。
ルールの中ではカスタマーチームは、供給元のチームがパーツをアップデートし、カスタマーチームもそれを使うことを決めた場合には、トークンが消費されることになっている。しかし現在供給元の2019年仕様のパーツを使っている場合、それを2020年仕様に置き換える場合には、トークンを使用せずに済むというのだ。
最近改訂された2021年のテクニカルレギュレーションにも、次のように書かれている。
「2019年仕様のパーツを使っているチームが、2021年に2020年仕様にアップグレードすることを望む場合には、この変更はトークンを使わずに行なうことができる」
レーシングポイントは現在、2019年のメルセデス製のギヤボックスを使っている。つまり来シーズンは、トークンを消費せずにメルセデスの2020年仕様のギヤボックスを使うことができるのだ。また、サスペンションや油圧システム、ステアリング、ブレーキシステムなど、様々な重要な部分も、トークンの消費なしでアップグレードすることができる。そして、その他のエリアでトークンを使ってのアップデートを行なうことができるのだ。
つまりマシンの大部分で、メルセデスが今年に使っているテクノロジーを、来年のレーシングポイントが手にできる可能性がある。そうなれば、チームのパフォーマンスが大きく前進するということにも繋がりかねない。
アルファタウリも、レッドブルの2019年仕様ギヤボックスやその他のコンポーネントを使っており、トークンを気にせずに2020年仕様のコンポーネントを使うことができるようになるはずだ。
しかしその一方で、フェラーリのカスタマーチームであるハースとアルファロメオは、すでに2020年仕様のパーツもしくは設計を使用しているため、”トークンフリー”でアップデートを手にするのは難しいだろう。
フェラーリのチーム代表であるマッティア・ビノットは、開発できる範囲が非常に限られているということについて苛立っているものの、他のチームはそれを使用せずに、一歩前進することができると認めた。
「トークンシステムは、今後予定されている開発凍結に先んじて導入された」
そうビノット代表は語った。
「少なくとも、2トークンに制限されることが重要だったと思う。システム全体として、つまり新型コロナウイルスの脅威の後、現在の状況全体の妥協案であることは明らかだ」
「我々フェラーリがいる場所を見ると、完全に満足することはできない。我々の希望は、完全に開発を行なうことができるということだった。しかし、現在の立場をよく理解している。これまでも申し上げてきたように、これは今シーズン中に採られた妥協策の一部だと思う」
「そして私はフェラーリとして、我々の状況を理解し、今回のことをF1全体と他のチームに対する責任ある行為だと評価している。それが、今我々が手にしているモノだ。我々はトークンのシステムを選んだのだ」
「我々はまだ議論している。最終的に、パッケージ全体を2019年仕様から2020年仕様にアップグレードできるチームがあるということについては、我々は完全には納得できていない」
「それは不公平だと思う。なぜなら、トークンが2しかないというのは、誰にとっても同じはずだからだ。トークンは2しかなく、誰もがそのトークンしか使えないようにすべきだ」
ルノーのエクゼクティブ・ディレクターであるマルチン・ブコウスキーは、トークンシステムについては支持しているものの、その抜け道については不満であると、ビノット代表の意見に同意した。
「現在の状況を継続すること、そして来年に向けて凍結を決断することは、必要なものだった」
そうブコウスキーは語った。
「システムについては満足している。しかし残念ながら、このシステムにはいくつかの欠陥があるというマッティアの見解にも同意する。そこには、いくつかのチームがメリットを手にできる抜け穴がある。これは、FIAとチームが話し合っているモノだ。それについて対処されることを願っている」
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