若い頃あんなに欲しかったトロフィーも、今は……。4度のF1王者ベッテルが開いた悟り「成功者とは、幸せに生きている人のこと」
セバスチャン・ベッテルは、F1での過酷な戦いはタイトルさえも儚いものに感じさせてしまうと語った。
Red Bull Racing celebrate victory with Adrian Newey, Red Bull Racing Chief Technical Director, Christian Horner, Red Bull Racing Team Principal, race winner Sebastian Vettel, Red Bull Racing, Mark Webber, Red Bull Racing
写真:: Daniel Kalisz / Sutton Images via Getty Images
F1で4度のワールドチャンピオンに輝いたセバスチャン・ベッテルは、UAEで行なわれたビジネス系イベント『シャルジャ・アントレプレナーシップ・フェスティバル』で、自身の成功に対する価値観の変化について語った。
ベッテルは2007年にBMWザウバーからF1にデビューすると、レッドブルに所属していた2010年〜2013年に4連覇を達成した。その後フェラーリ、アストンマーティンと渡り歩き、2022年にF1引退。優勝53回、ポールポジション57回という記録を残した。
ただベッテルは成功の尺度について語る中で、もはやそうした数字を勲章のように思っていないと明かした。
彼が強調したのは、F1のスピード感の中では、どんなに最高の瞬間でさえも一瞬で過ぎ去ってしまうということだ。なぜなら、前のレースの振り返りが終わる前に、次のレースの準備が始まるからだ。
キャリア初期のベッテルは、常に次の勝利を追い求めていたという。その姿勢は、レッドブル時代に4度タイトルを獲得するうえで大きく役立った。しかしフェラーリ、そしてアストンマーティンでの晩年を迎える頃には、その“成功観”が変わり始めていたという。
「僕の夢は常にひとつ(チャンピオン)だった。でも少し残念なのは、その瞬間をあまり楽しめないことだ。次のレースがすぐ来るし、また勝つことに集中するからだ」
「キャリア後半になって、たくさんのレースに出場できたこと、そして多くの才能ある人たちと一緒に仕事ができたのは光栄なことだったと気づいた。トロフィーやチャンピオンは確かにひとつの成功の形で、人々もそれを成功だと評価する。でも後になって、成功の意味を再定義するようになった」
「僕は誰とも険悪な関係を残さず、多くの友人を作り、人々と素晴らしい経験をしてきた。そうしたストーリーこそが、ある瞬間に何を達成したかよりも、自分という人間を形作るものなんだ」
さらに彼はこう続けた。
「若い頃は、とにかく一番大きなトロフィーが欲しかったし、最高の存在でありたかった。でもキャリア後半になると、物事をより広い視点で見るようになった。今の僕にとって成功者とは、自分自身に満足し、満ち足りていて、人を尊重し、充実感のあることをしながら幸せに生きている人のことだ」
「それは『あなたが優勝だ。これがトロフィーだ』『これが小切手だ。あなたはこれだけ稼いだんだ』といったように、表彰されるものではない。でも社会ではそういうものを成功とみなしているけどね」
そう語るベッテルは、お金こそが成功の尺度だという考えにも異を唱える。トロフィーや富は人々が思い描くような意味を持たないという。
「成功がお金だとは思わない。プロの立場として、いくつかトロフィーを獲ってきた僕が言えるのは、確かにトロフィーは家のどこかに飾られて、そこにあり続ける。でも、ある時からそれの横を通り過ぎても特別な感情は薄れていく。人生はそれ以上のものだからだ」
「振り返ってみると、本当に大切なのはトロフィーそのものではなく、そこまでの道のりだ。最後にトロフィーを手にできるのは素晴らしいことだし、チーム全体やアスリートとしてそれを共有できるのは最高の瞬間だ。でも、それ以上に大切なものがある」
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