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“ニッポンのエース”山本尚貴がF1の舞台で示した『チカラ』

トロロッソ・ホンダからF1日本GPのフリー走行1回目に出走した山本尚貴。今回の挑戦は自分自身のためであったのだが、同時に日本を代表するドライバーとして“実力が試される”挑戦でもあった。

Naoki Yamamoto, Toro Rosso, with Franz Tost, Team Principal, Toro Rosso

Naoki Yamamoto, Toro Rosso, with Franz Tost, Team Principal, Toro Rosso

Andy Hone / Motorsport Images

 鈴鹿サーキットで行われた2019年F1日本GPのフリー走行1回目で念願のF1デビューを果たした山本尚貴。日本国内のカテゴリーで好成績を残したドライバーがF1の扉をこじ開け、日本人ドライバーとして5年ぶりにF1公式セッションに参加するというチャンスを掴んだ。

 国内外のメディアも大きく注目したのだが、同時に彼の勇姿を現場でみたホンダの若手ドライバーや国内トップカテゴリーで戦うライバルたちにとっても大きな刺激となった。

 しかし、それは同時に昨年国内トップカテゴリーで二冠を達成した山本にとっては、プレッシャーのひとつとなって、肩にのしかかっていた。

 そう。このフリー走行1回目は長年F1の舞台に憧れてきたレーシングドライバー山本尚貴の挑戦だけでなく、今の日本のモータースポーツの実力が試される舞台でもあったのだ。

 11日(金)のセッション前には牧野任祐や福住仁嶺などホンダの若手ドライバーがパドックに駆けつけた他、レッドブルアスリートで、国内では山本のライバルであるニック・キャシディと平川亮もトロロッソのホスピタリティを訪問。山本を激励する様子が見られた。こうして周りのドライバーが集まってくるのも、自分のことを注目しているからこそ。それを山本自身も十分に理解していた。

「やっぱり(スーパーフォーミュラで)一緒に戦っている選手がF1の世界にパッと入ってどういう走りをするのか? というのは……ドライバーだったらみんな気になります。例えば、仮に牧野選手や福住選手、ニック選手が(F1に)乗るとなったら『彼らがF1でどういう走りをするんだろう?』と、僕だったら絶対気になります」

「そういう逆の立場に立った時の想いというのも自分では理解しているつもりだったので、改めてこの場で僕が走ることによって、彼らに与える“刺激”というのはあったかもしれません」

「『山本がこれだけ乗れるんだから、もし自分にチャンスが巡ってきたら、自分でもやれる』という自信を(彼らに)与えることができたのであれば、僕が今回挑戦したことの意味というのはあるのかなと思います」

 motorsport.comの取材に対し、そう答えた山本。自分が今回のFP1の内容や結果次第では、日本国内カテゴリーのレベルに対する評価にも、大きく影響する可能性もあった。それだけに、ある意味で“失敗の許されない”プレッシャーのかかる90分間のセッションだった。

 その結果、セッション後は海外のメディアからの評価も良かったのだが、山本は自身が万が一失敗した時に及ぼす影響も十分理解していたという。

「もしここで僕が失敗すると『やっぱりスーパーフォーミュラでチャンピオンを獲っても、ちょっと(F1に)乗せるわけにはいかないよね』というレッテルも貼られてしまうし、そういう怖さも自分の中にはありました」

「自分のためでもあり、これからのためでもあると思って臨んでいたので……何を持ってこれが成功かというのは難しいです」

 こうして多くのファンや関係者が注目する中、山本はFP1では誰よりも多い30周を走破。スピンやコースオフを喫する場面もなく、チームから与えられたプログラムをきっちりこなした。

「(FP1を終えて)こうしてたくさんのメディアの方に来ていただいて、終わってみれば海外のジャーナリストさんも一定の評価をくださったというのを見ると、スーパーフォーミュラでチャンピオンを獲ったドライバーはそれなりに通用するんじゃないかという目で見てもらえるきっかけにはなったと思います。それは良かったです」

 しかし山本は、あくまで自分の挑戦がメインだったことを改めて強調した。

「とはいえ、今回僕は“自分のため”に走りました。決して“100%後輩のために走った”わけではありません。そこは自分の今回の挑戦に“ひとつの課題”であっただけで、メインではありませんでした。やっぱり自分の力を証明したい、実力を出したいというのが今回のテーマでした」

「でも、若い子達にも刺激を与えることができたのであれば、今回挑戦した中での“ひとつの課題”みたいなものはクリアできたのかなと思います」

 そんな山本は10月26日、27日に自身の主戦場のひとつであるスーパーフォーミュラの最終戦で2年連続チャンピオンをかけて戦う。山本を観にきたドライバーたちが今度は“ライバル”となるのだ。彼らの胸の中には、このFP1で受けた刺激が詰まっており、“打倒ヤマモト”の気概がさらに高まっていることは間違いないだろう。

 もちろん、山本もそのことは百も承知。今回F1デビューを果たしたこともあり、より一層恥ずかしい走りはできないと、スーパーフォーミュラ最終戦に向けて気を引き締め、後輩やライバルたちに何としても打ち勝つ決意を固めた。

「今回のF1挑戦があってもなくても、必ず(SFの)タイトルは獲りたいという気持ちはあります。だけど、今回こうしてたくさんの方に来てもらって、日本GPのFP1で乗った山本尚貴がSFの最終戦のタイトルをかけてどんな走りをするかというのは、みなさんに興味を持ってもらえたのではないかと思います」

「特に普段F1だけをフォローされている皆さんに、スーパーフォーミュラとか国内の選手権にもっと目を向けてもらえるきっかけが出来たと思います」

「そこで自分としては恥ずかしい走りは出来ないですし、あそこでF1を走った奴が国内の選手権でもこれだけ強いんだなというのを見せたいです。そのためにも、またたくさんの方に現地に足を運んで応援してもらえたら嬉しいです」

 今までは国内レースでいくら好成績を収めても、最終的にはヨーロッパでの実績、特にFIA F2や旧GP2での実績がないとF1への道が開けないという流れになっていた。しかし、国内でダブルタイトルを獲得した山本がF1の公式セッションのチャンスを掴み取ったことで、その流れに一石を投じることができた。そう考えると、彼がFP1で走った90分間は非常に意味があったことなのかもしれない。

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