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多数の着用が予想されるクールスーツ、まだ完璧ではないが……ないよりはマシ! 酷暑シンガポールに臨むF1ドライバーから好意的な声

F1シンガポールGPは“ヒートハザード”が出されたことで、ドライバーたちは冷却ベストを着用することになる。このデバイスを既に試しているドライバーはどんな評価を下しているのか?

Oscar Piastri, McLaren

写真:: Clive Rose / Formula 1 via Getty Images

 既に走行セッションがスタートしたF1シンガポールGPは、史上初めて“ヒートハザード”が発令されたレースとなった。要するに暑さに対する警告が出されている状態であり、予選・決勝共に気温が30℃を超えると予想されている。

 これにより、すべてのマシンは冷却ベスト(いわゆるクールスーツ)を作動させるための追加コンポーネントを搭載しなければならなくなった。現時点ではベスト着用はドライバーの任意だが、着用しない場合は追加でバラストを積む必要がある。

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 導入のきっかけは2023年のカタールGP。猛暑の中行なわれたレースでは、ローガン・サージェント(当時ウイリアムズ)が熱中症でリタイアし、エステバン・オコン(当時アルピーヌ)がヘルメット内で嘔吐するなど、体調不良者が続出した。

 そのためFIAは、高温多湿の環境下でのレースに対応するべくエアコンシステムなどの冷却システムのテストを進めてきたが、やはり技術面・実用面で課題が多く、いくつもの妥協を重ねた結果、任意の冷却ベスト着用という策に落ち着いている。ただし2026年からは装着が義務化される予定だ。

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 過去の安全・健康関連デバイスの導入時と同じように、当初は抵抗がつきものだ。HANSデバイスや、もっと古くはシートベルトが義務化された時もそうだった。冷却ベストについても、「男らしさを損なう」といった拒否反応が出ているのも確かだ。しかし実際に暑い環境で使用したドライバーはその利点を体感しており、次第に受け入れの流れが広がっている。

 シーズン序盤のバーレーンGPでは、メルセデスのジョージ・ラッセルが初めてレースで着用。快適性が向上しただけでなく、レース終盤に電気系トラブルが発生した時に冷静に対処する一助にもなり、望外の表彰台を手にした。

 その後のサウジアラビアGPでは多くのドライバーがフリー走行で使用。中でもウイリアムズのアレクサンダー・アルボンは実戦投入したが、このレースでは“ヒートハザード”の基準となる気温31℃に達していなかったため、その他のドライバーは重量増による不利益を嫌ってレースでは使用しなかった。

 ザウバーのニコ・ヒュルケンベルグは、今回ヒートハザードが出されたことで、冷却システムを搭載しても重量的に不利にならないことから、着用した方がいいだろうと述べた。

「まだ実際にそれを着けてちゃんと動かしたことがないので、検証とテストを経る必要がある。でも着るつもりだ」

「ジェッダの後は本当にバテバテだったよ。めっちゃ暑かったからね。アレックス(アルボン)が飛行機で隣だったんだけど、(ベストを)使っていたからピンピンしてたよ。だから次は僕も使おうと思っている」

 ただし実用面での課題は依然残る。今回導入されるのは、コックピットに細いチューブが計50mもの長さで収まり、そのチューブを“ピチピチ”のベストに這わせて、そこに冷却水を流すことでドライバーの身体を冷やすというシステム。ドライバーとしてはコックピットでの収まり、フィット感を損なうという面もある。

Lando Norris, McLaren

Lando Norris, McLaren

Photo by: Clive Rose / Formula 1 via Getty Images

 さらに、冷媒によって冷やされた液体がチューブ伝いにドライバーのクールスーツへと渡るわけだが、チューブとスーツの接続部もドライバーの快適性を損なう。当初はそれが腰骨付近に配置されたが「テニスボールみたいだ」とオコンが形容するほど邪魔で、現在は前面に移された。しかしそれでも、シートベルトに干渉することがあるという。

 また柔軟なチューブがコクピット内のどこかで潰れてしまって、液体の循環が妨げられる可能性もある。それに40℃を超える過酷な車内環境下で、冷却システムが常に安定して作動する保証もない。

 クールスーツは日本のスーパーGTなど世界中様々なスポーツカーレースで採用されているが、システムが壊れるシーンも散見される。熱交換器が故障したり適切に機能できなくなると、逆に高温の液体をドライバーの身体にまとわせてしまう可能性もある。ちなみにテストを行なったいくつかのF1チームからは、レースディスタンスを走り切る前に壊れたという話も聞こえてきている。

Oliver Bearman, Haas F1 Team

Oliver Bearman, Haas F1 Team

Photo by: Peter Fox / Getty Images

 こういった懸念材料があるものの、シンガポールGPに臨む多くのドライバーは「試してみる価値がある」と考えている。

 2年前のカタールでは失神寸前だったというランス・ストロール(アストンマーティン)は次のように語る。

「シンガポールはあらゆる方面での準備が考えられるレースのひとつだ」

「トレーニングで1週間ずっとサウナに入っていたんだ。でも何をしたって、このレースは肉体的にも精神的にも過酷。その中で壁が近いからミスも一切許されない」

「コックピットは信じられない温度になる。だからベストを使えるなら使ってみるよ。5周くらいしか使えないかもしれないけど、そうなったらあと50周ひたすら苦しむだけだ」

 またウイリアムズのカルロス・サインツJr.は、シンガポールは湿度の高さが過酷さにつながっていると補足する。

「暑さだけなら問題ない。ハンガリーのように気温が高くても湿度が低ければ大丈夫。でも気温30℃超えで湿度も高いと……シンガポールのように厳しくなる」

「各チーム、走るたびに(冷却システムを)うまく使えるようになっている。最初は30分しかもたなかったけど、今は少なくとも1時間は動作するようになっているはずだ」

「僕もシンガポールは10回走っているから、壊れたって心配はない。いつも通りレースをしてマシンから降りるよ。でもそれ(冷却システム)があるなら、苦痛が軽減される分良いよね」

 次世代マシンが投入される来シーズンからは、車両に冷却ベストを機能させるためのハードウェアの搭載が義務化される。F1では、さらに過酷な環境下でも安定して稼働できるようなシステムの改良が進められているようだ。

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