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必要? それとも不必要? F1最後の弱小チーム……奮闘も消滅した、マノーF1

F1の歴史は、華々しい活躍をするトップチームによる、激しいタイトル争いによって彩られている。しかしその裏では、数々の弱小チームも登場。彼らの戦いも、決して無視できないものだ。ここでは最後の弱小チーム、マノーの活躍を振り返る。

Pascal Wehrlein, Manor Racing MRT05

写真:: Glenn Dunbar / Motorsport Images

 2020年のF1は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、開幕が大きく遅れた。しかし7月5日決勝のオーストリアGPからスタートすることが決まり、各チームがそれに向けた準備を本格化させている。

 シーズンがスタートするにあたって最も注目を集めるのは、当然トップ争いだ。今季のメルセデスはどれほど強いのか? DASの効果は? レッドブル・ホンダは何勝できるのだろうか? そしてフェラーリの不振は本当か?……などだ。

 しかしその一方で、グリッド後方の戦いがどうなるのかという点についても目が離せない。ウイリアムズは近年、厳しい数シーズンを過ごしてきた。しかし今年は、比較的スムーズなオフシーズンを過ごしたため、中団グループ争いにしっかりと割って入る可能性がある。彼らにとっては、将来の活動資金を確保するためには、必要不可欠なモノだ。

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 ただウイリアムズが2019年のように悲惨な成績だったとしても、まだ弱小チームだとは言えない。彼らには偉大な歴史があるからだ。

 真の意味で最後の弱小チームと言えたのは、マノーだろう。2010年、ヴァージン・レーシングとしてF1に参戦したチームは、その後名称とオーナーを変え、2016年まで参戦を継続した。

 ただ2016年には希望もあった。メルセデスのパワーユニットを手にし、そしてDTM(ドイツ・ツーリングカー選手権)王者のパスカル・ウェーレインがチームに加入。さらにフェラーリなどで活躍したエンジニアのニコラス・トンバジスやパット・フライらを獲得……技術部門を強化した。

 第2戦バーレーンの予選で、ウェーレインは16位となった。これは予選Q2進出まであと僅かというモノであり、チームの期待を後押しした。その後もザウバーと互角の戦いを披露し、チームメイトのリオ・ハリアントを安定して上回った。

Pascal Wehrlein, Manor Racing MRT05

Pascal Wehrlein, Manor Racing MRT05

 シーズンを通して、マノーはザウバーと激しくポジションを争った。この年の参戦チームは全11チーム。しかし、分配金を受け取れるのは上位10チームのみであり、この2チームによる争いはその分配金をめぐる非常に重要な戦いだった。

 マノーにとってのチャンスは、オーストリアGPだった。全開区間の多いレッドブルリンクのコースは、他のサーキットよりも戦えるチャンスがあったのだ。

 予選から、彼らは速さを見せた。ウェーレインはQ1で10位に入り、Q2では12番手……Q3進出まであと僅かだった。チームメイトのハリアントも、ザウバーの2台ばかりか、トロロッソのダニール・クビアトをも上回り、19番手となった。

 しかしウェーレインは、日曜日の決勝レースに向け、慎重な姿勢を崩していなかった。

「正直に言って、明日は別の話だと言わなければいけない」

 そうウェーレインは語った。

「僕らはレースで、タイヤのデグラデーションに苦しんでいる。現時点では、リヤのダウンフォースが少し足りないんだ。これでは、リヤタイヤが少し難しい状況になる」

「天気予報は、少し分からない部分があるので、うまくいけば状況を揺さぶり、僕らを助けてくれるかもしれない。僕の計画は、すべてのラップでできるだけ速く走って、どこに辿り着けるのかを見るということだ」

 ウェーレインはスタートで12番手をキープ。ウルトラソフトタイヤを履くフェルナンド・アロンソ(マクラーレン・ホンダ)が迫っていたが、なんとかこれを抑えた。

 ウェーレインは結局13周目に1回目、23周目に2度目のピットストップを実施した。しかしフェラーリのセバスチャン・ベッテルにタイヤバーストが発生し、セーフティカーが出動した時、ウェーレインとチームは頭を働かせた。彼はここでタイヤの使用義務を消化し、なんとか隊列の後方にしがみつくことができた。

Pascal Wehrlein, Manor Racing MRT05

Pascal Wehrlein, Manor Racing MRT05

Photo by: Mark Sutton / Motorsport Images

 再スタート後の10周は、ウェーレインは最後尾のポジションに留まるしかなかった。しかし、前をいくドライバーたちがタイヤの摩耗に苦労してピットインしていったことで、徐々にポジションを上げていくことができた。そして残り10周という段階で、12番手までにポジションを上げることに成功したのだ。

 アロンソがリタイアしたことで、11番手まで浮上したウェーレイン。10番手をいくウイリアムズのバルテリ・ボッタスはタイヤを労るべく苦労していたため、徐々にその差を縮めていった。一方でボッタスのチームメイトであるフェリペ・マッサがウェーレインの後方から迫ってきていたが、ブレーキトラブルに見舞われてリタイア……ウェーレインを襲うプレッシャーは軽減されていった。

 残り2周というところで、フォースインディアのセルジオ・ペレスがブレーキングのミスにより、ターン3でオーバーラン。そのままリタイアとなった。これでウェーレインは10番手に浮上し、そのままフィニッシュ。貴重な1ポイントを手にすることができた。

「セーフティカーは不運だったから、『レースは終わった』と思ったんだ」

 ウェーレインはレース後にそう語った。

「でも僕はもうピットストップしたくはなかったから、タイヤをプッシュしつつもマネジメントした」

「ニコ・ロズベルグとルイス・ハミルトンがやってきて、青旗が出された時、それによってクレイジーなシナリオになることを期待していた。そうでなければ、(ボッタスを)抜くのは難しかっただろう。彼は10〜15周ほど走ったタイヤを装着していた。しかし僕は、40周以上走ったタイヤを履いていたからね」

「それでもまだ、彼と戦うことができた。今日のマシンのパフォーマンスは素晴らしかった。それがどこから引き出せたのかは分からないよ!」

 マノーがタイヤに苦しまなかったのは、この年これが初めてのことだ。これは、レッドブルリンクが涼しかったことも影響したかもしれない。多くのドライバーがリタイアしたため、たしかにウェーレインにとっては幸運なレースだった。しかしレース中にオーバーテイクを許したのは2回だけであり、この日のマノーには明らかに良いペースがあった。

Pascal Wehrlein, Manor Racing MRT05 celebrates tenth place with the team

Pascal Wehrlein, Manor Racing MRT05 celebrates tenth place with the team

Photo by: Jerry Andre / Motorsport Images

 この入賞は、2014年のモナコGPで、ジュール・ビアンキが9位に入賞して以来初めてのポイント獲得となった。これはチームにとって、将来に向けた大きな後押しとなった。

 シーズンが進むにつれ、ザウバーとの争いは激しくなっていった。しかし第20戦ブラジルGPで、ザウバーのフェリペ・ナッセが9位に入賞。獲得ポイントでマノーを上回った。

 結局マノーはコンストラクターズランキング最下位となり、シーズンを終えることになった。これでマノーは、約3000万ポンド(約40億円)の財政難に陥った。そして翌年1月6日、必要な投資家を見つけることができなかったとして、チームが管財人の管理下に入ったことが発表された。

「2015年にチームを引き継いだ時、課題は明らかだった。2016年は、チームが10位かそれ以上でフィニッシュすることが不可欠だったんだ」

 チームオーナーのスティーブン・フィッツパトリックはそう語った。

「シーズンのほとんどは順調に進んだ。しかし、ブラジルでの劇的なレースは結果を残すことへの期待を消滅させ、最終的には2017年シーズンへ向け、レースをする能力についての疑問を投げかけることになった」

 それから3週間後、チームの買い手が見つからなかったとして、解散することを発表。それは、マノーF1チームの悲しい終わり方だった。特に入賞したオーストリアGP以降は中団グループと十分に戦えるだけのパフォーマンスを示していただけに、残念な結果だった。

 マノーが参戦を取りやめるということは、ある意味F1の金融協定の欠陥を証明することにもなった。当時の分配金は、前述の通りトップ10チームのみ。パフォーマンスに苦しむチームは分配金を一切受けられず、二重苦三重苦に陥ってしまうのだ。2021年からは、分配金の配分はより公平になる予定……マノーのようなチームが生じてしまうのを避けられるような柔軟性があることが期待されている。

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