分析

【F1メカ解説】レッドブルが使っているのは”フレキシブル”ではなく”羽ばたき"リヤウイング?

レッドブルは、スペインGPで現時点では”合法”なリヤウイングを使っているのではないかと指摘されたが、そのリヤウイングはただ後方に傾くだけではなく、フラップや翼端板が”振動する”モノであるようだ。

Red Bull Racing RB16B rear wing comparison

Red Bull Racing RB16B rear wing comparison

Giorgio Piola

 レッドブルが使っているのではないかと言われているフレキシブルなリヤウイング。このウイングはただ後方に倒れて空気抵抗を減らすだけでなく、フラップの中心部のみが沈み込んだり、あるいはフラップや翼端板が左右に揺れ動いたりと、実に複雑な挙動を見せているようだ。

 メルセデスのルイス・ハミルトンは、スペインGPの際にレッドブルは「動く」リヤウイングを使って走っていたと主張。その後、この話題で持ちきりとなっている。

 FIAはこの状況に対処すべく、検査の強化を決定し全チームに通知した。

 現在のリヤウイングは、静的荷重および変形の検査に合格しなければ、セッションを走ることはできない。しかし実際にコース上を走っているマシンのウイングは、過度にたわんでいるように見えるモノもある。

 このFIAによる新たな検査は、6月15日以降から実施されることになっている。つまりこの検査に合格すべく対処するための時間が、各チームに与えられたということになるのだ。

 実際にはフランスGPが、この検査が適用される最初のグランプリということになるが、最初の月にはたわみについて20%の猶予も与えられることになるようだ。

 各チームは、直線で空気抵抗を受けたことによってリヤウイングが後方に向けて倒れると、抵抗自体が減って直線スピードを伸ばすことができるということをよく理解している。ただそうした手法の使用をなんとか避けたいFIAとチームとの間には、この点に関する長い戦いが繰り広げられている。チームは、FIAの規制をくぐり抜けようと、あの手この手を使って様々なアイデアを立案してくるのだ。

 現在の検査では、リヤウイング全体のたわみがチェックされている。しかし新しい検査では、マシンの中心点を軸にウイングが”回転”することを検知できるようになる。荷重がかかった時に許される”回転”の許容範囲は、1度までだ。

 つまり今のF1マシンでは、フラップが”操舵”するような形で取り付けられているのではないかという”懸念”があるということだ。

 スペインGPの際に撮影されたレッドブルのマシンの後方カメラ映像には、リヤウイングのフラップが横方向に僅かに羽ばたき、さらに翼端板もある速度を超えるとバタつくように振動していることがわかる。これによって発生する空気抵抗を減らし、最高速の向上に繋げているのではないか……と考えられているのだ。

 ポール・リカールで行なわれるフランスGPで、新たなリヤウイングの検査が勢力図にどんな影響を及ぼすのか、非常に興味深い。そしてまた、チームは予算制限内に収めつつ、この検査に対応しなければいけないという点において、頭を悩ますことになるだろう。

Red Bull Racing RB16B rear wing comparison

Red Bull Racing RB16B rear wing comparison

 なおレッドブルは、スペインGPの初日、ハイダウンフォース仕様のリヤウイングを試した。これは、次戦モナコGPで使うのに先立ち、その効果を試す狙いがあったと考えられる。

 この新たなリヤウイングは、フラップの位置こそ若干の調整が加えられているものの、従来使っているミディアムダウンフォース仕様のウイングと、ほとんど同じ構造になっていた。

 フラップの高さと形状、そしてその後端に付けられたガーニーフラップなどは、全て若干の変更が加えられている。しかしそんな中で最も視認しやすい変更は、メインプレーン前端の形状だろう。この新たなウイングは、メインプレーン中央部の前端が、反り上がるような形状になっている。またフラップ上部の切り欠きも大きくなっている。

 一方でミディアムダウンフォース仕様のリヤウイングは、メインプレーンの中央部が下方に向けて緩やかに湾曲し、翼端板付近は薄くなっている。この外側の部分と翼端板の相互作用によって、通常生み出されるドラッグを相殺しているのだろう。

 なお興味深いことに、グリッド上のほとんどのマシンがカウル後端にTウイングを取り付けているのに対し、レッドブルは今季はまだ使っていない。昨年も、レッドブルは限られた数のレースでしかこのTウイングを使わなかった。

 

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