
ジョルジョ・ピオラ【F1メカ解説】
F1メカ解説|フレキシブルフロア規則変更案……各チームにはどんな影響が?
夏休み明けのベルギーGPから、マシンの上下動の監視が厳格化される。これに伴い、フロアのたわみも規制されることになったが、このことは各チームにどんな影響を及ぼすのだろうか?


今シーズンの各F1チームのマシンで大なり小なり認められる上下動……いわゆるポーパシングやバウンシングと呼ばれる動き。これによりドライバーに身体的な負荷がかかることが明らかになってきたことで、FIAは対策に乗り出した。
FIAはイギリスGPの際、新な技術指令を発令し、マシンの上下動を検証するために、エアロダイナミック・オシレーション・メトリック(空力振動測定法/AOM)を導入することを発表。そしてチーム間で公平な条件を確保するため、フレキシブルフロアやフレキシブルプランクを厳格に監視することも決めた。
なおこの技術指令は、当初はフランスGPから適用される予定だったが、最終的には夏休み明けのベルギーGPから施行されることになった。
各チームとしては、AOMの基準に収まるよう、上下動を抑えるようにしなければいけない。しかしそれ以上に、新しいフレキシブルフロアに関する規定は、頭痛の種になるかもしれない。
このフレキシブルフロアに関する規定の変更は、一部のチームがレギュレーションのグレーゾーンを巧みに利用し、マシンのフロアが変形することを活かして、パフォーマンス向上に繋げようとしていたことが背景となっている。
マシンのフロア下、中央部分にはプランクもしくはスキッドブロックと呼ばれる板が取り付けられている。これには50mmの穴(プランクホール)が6つ開けられていて、その周囲をチェックすることで、たわみが起きていないことを確認している。
FIAの検査では、フロントアクスルから1080mm後方にあるプランクホールでは、1mm以下のたわみしか許されない。また最後尾のプランクホールでは、2mmまでたわみが許される。
しかし一部のチームは、プランクの車体への取り付け方法を工夫することで、検査の際に重りを吊り下げた時には基準以内のたわみになっているものの、実際に走行した際には大きくたわむようにしていることが疑われている。
なおF1チームは、このプランクホールの周辺にチタン製の滑材を取り付けることが許されているが、そのサイズや形状、固定方法については多くの付帯規則がある。車体の底から火花が出るのは、この滑材が路面と擦れるからである。
昨年までのF1マシンは、そのほとんどが大きなレーキ角がつき、前傾姿勢のような格好になっていた。そのため、プランクの前端が摩耗しやすかった。このフロント部の車高についても、FIAは何度かその基準を厳格にしようとしたことがある。今季のアプローチも、それと同等と言えよう。
今季のF1マシンは、レギュレーションの大変更に伴い、レーキ角は小さくなり、地面と水平な状態で走っている。サスペンションも硬い。そのため、昨年までのマシンとは、異なる挙動を示している。

Plank
Photo by: Giorgio Piola
一部のチームは、この滑材を分割していると見られる。それにより柔軟性が高まり、荷重によって上下に動くモノもあるようだ。この部分が路面に接触すると縮まり、硬い部分よりも摩耗量が少なくなるようにしているという。これにより、レース終了時にはこの部分が摩耗しておらず、マシンはレギュレーションに完全に適合する状況になっているわけだ。
FIAの車検場では、マシンが静止している状態でそのたわみを測定するパッドの直径がプランクホールの直径よりも20mm大きいため、チームはこれを活用しているとみられる。
この対策として、FIAの新しい技術指令では、「3つの穴の外周から半径方向に15mm離れた部分の局所的な剛性は均一でなければならず、その差は±10%を超えてはならない」と規定されている。
またプランクの摩耗に関する条項も強化され、プランクホールの周囲75%も含めて基準を満たしていなければならないことになっている。
このふたつの規則変更により、可変スキッドブロックを使うのは事実上不可能になるはずで、このフロアを使っていたチームは、これまでとは異なる形でマシンを走らせなければならなくなるはずだ。
しかしテクニカルレギュレーションでは、走行中に動いているように見える(あるいはその疑いがある)車体の部分については、さらなる荷重/変形検査を導入する権利を有していて、その基準をシーズン中に変更する権利もあると規定されている。
今回の変更が、チームの序列にどんな変更を及ぼすかどうかは分からない。しかしながら、ポジションを維持するために修正することを余儀なくされるチームは間違いなくあるはずで、そのことがこれまでの開発路線を妨げ、新たな方向性を強いられることになるはずだ。
開発方針の変更が必要となれば、予算の面でも各チームに打撃を与えるはずだ。また、開発面でも後戻りを強いられることとなり、チームにとっては大きな負担になる可能性がある。
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